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アルケニーの情報

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「成る程ぉ、了解しました~」

 アルケニーの情報を、と聞く俺に頷くリネルトさん
 魔物を創ったらしいロジーナに聞く方が確実かもしれないけど、対処法なども含めると戦った事のある人に聞いた方が手っ取り早そうだ。
 あと、ロジーナは今レッタさんに抱えられて、昼食後のお昼寝タイムに突入しかけているようで、邪魔するのも悪いし。
 ……子供の体だから、実際の中身はともかくそれに引きずられているんだろう……エルサに乗って出発する時は、寝たままでレッタさんが抱えて乗るつもりだったんだろうなぁ。

「それじゃ、アルケニーについて知っている事をお話ししますねー」
「お願いします」
「えっとぉ……」

 リネルトさんから聞くアルケニーの情報、アマリーラさんからも聞いた通りアラクネよりも強い上位種族みたいな魔物で、突然変異などでアラクネの中から時折出て来るのだとか。
 両方蜘蛛の魔物で間違いないようで、見分け方は単純に人のような上半身が体の前面に生えているのがアラクネで、その上半身の大半が埋没して顔だけになり、全体を大きくしたのがアルケニーらしい。
 基本的には暗い場所に棲息する魔物で、弱点というわけでもないみたいだけど明りが苦手なため、今俺達がいるような開けた場所には出て来ないとか。
 実際に出て来ているから、何かあったか何かされたかとかだろうけど……ともかく、暗い場所というのは多くは洞窟の奥などで、俺が意識を乗っ取られた時にやっちゃった光の影響で多くの木々が生えて密度が濃くなった森にいる事もあるみたいだね。

 人や他の魔物を捕まえて捕食する魔物で、危険度も高いため発見したら即討伐対象だけど、外には出ないという事から討伐依頼になる事はあまり多くないらしい。
 洞窟の奥などで、近付く敵に対しては罠を仕掛ける事が大半で、自ら姿を現し近付く事は捉えた獲物以外に対してはほぼないため、臆病な魔物とも言われているとか。
 まぁ、本当に憶病かどうかは推測みたいだけども。
 アラクネは六本の足で壁を伝うように移動し、人の上半身にある手の二本と噛み付きなどで攻撃してくるが、糸を口から吐き絡めとるのが厄介な魔物。

 対して上位のアラクネは人の上半身がなくなり足が八本になる代わりに、動きが速く足全てが鋭利な刃物のようなのだとか。
 糸を使う事と、背中複数の目があるため全方位を見渡しているというのは、アラクネとも共通しているらしい。
 ちなみに糸は、一度絡め取られると抜け出すのが難しいくらいの柔軟性と硬度を持っているようで、剣などでも切りにくいと言われた。
 仲間がいればアルケニー本体を先に倒して、落ち着いてゆっくり糸をほどけばいいけど、一人の時に遭遇して絡め取られたらほぼ脱出の可能性はなくなって絶望的という危険度みたいだね。

 その糸は、火に弱く簡単に焼けるらしいけど……まぁ、全身を糸に絡め取られた人を助けるために火を放つと、その中にいる人も燃やす事になりかねないからね。
 本当に最終手段とか、すぐに消火する事ができるなら使えるかも、といったくらいの手段だ。
 それと、アラクネやアルケニー自体は火に強く外皮も硬いらしく、糸がなくても単純に厄介な魔物でもあるとか。

「……アルケニーの詳細はある程度わかりました。対処法などは?」
「そうですねぇ。硬い外皮、刃になった足を斬り裂くような鋭い一撃を与えるのが一番でしょうか。あとは、お腹あたりは柔らかいので、そこを狙うというのもあります。まぁお腹と言うのは位置的にそうかもというだけで、便宜上そう呼んでいるだけですけど」

 アルケニーが蜘蛛という事は、お腹は裏側ってところか……。

「複数の足で動き、人みたいに二足歩行でお腹が見える位置にあるわけじゃないから……」
「狙いにくいんですよねぇ。向こうも弱点とか狙われるとわかっているのか、まず自分から晒すような事はしませんし。どうしても狙う場合は、魔法なりなんなりでひっくり返してから、とかですねぇ」
「中々面倒ですね……」

 土の魔法を使って、地面を隆起させたり弾き飛ばすなりしてひっくり返せばってところかな。
 アマリーラさんのくらいの膂力があれば、持ち上げてとかもできそうだけど……その場合近付かないといけないから、足の刃に晒される事になる。

「まぁ大抵は、チクチクと外皮を削っていって徐々に内部に届かせる。それか、同じように少しずつ攻撃して体力が尽きるのを待つ……という戦い方が多いですねぇ」
「成る程……」
「少数で挑んだら、アルケニーより先に挑んだ側の体力が先に尽きるかもしれませんけどねぇ」

 魔物の体力だからな……体は小さくとも二メートル、三メートル近くあるのもいて大きいようだし、体力が少ないなんて事はないだろうしなぁ。

「冒険者ギルドが示している討伐難度のランクはBランクです。アラクネも同じですが、アルケニーはAに近いBと言ったところでしょうかぁ」
「Aに近いBランク。それが二十体もいれば、確かにアマリーラさんが災害に近いっていうのもわかる気がしますね」

 Bランクだけで、小さな村くらいは簡単に壊滅する。
 街とかだと人も多く、冒険者さんや衛兵さんなどそれなりに戦える人もいるので、何とかならない事もないけど……被害はもちろんですわけで。
 それが二十体もいれば、大きめの街一つくらいは壊滅させられる可能性はある。
 高ランクの冒険者が多くいれば別だけどね。

 そして、今ここには高ランクの冒険者がいる。
 俺はともかく、モニカさん達はもうBランク相当らしいし、ルギネさん達もそれに近いようだ。
 アマリーラさんとリネルトさんはAランク相当の実力で、さらに実力のある兵士さん達が多くいる……と。

「なんでアルケニーが大量にいるのかはともかくとして、ここで対処しないといけないし、できないわけじゃなさそうですね」
「そうですねぇ。ワイバーン達もいますし、協力してくればなんとでもなると思いますよぉ」

 ワイバーンは空を飛ぶという事以外は、ランクでCランク相当ではあるみたいだけど、それでも力は強いし体も大きいからもしかしたらアルケニーを抑え込めるかもしれない。
 数もこちらの方が多いし。
 もし足の刃で斬られてもすぐ再生するし、糸で絡めとろうとしても体が大きい分、人よりも難しいはずだ。
 うん、負ける要素が一つもないね……油断とかしなければだけど。

「あと、リク様にもう一ついい情報を」
「え?」

 大きくなっているエルサは、荷物を背中に載せているうえにアルケニーを気持ち悪がって、戦いたくないようだから、他の皆で対処し他方が良さそうだけど、でもなんとかなりそう……と考えている俺に、リネルトさんがほんわかした笑みを浮かべて言った。
 一体なんだろう?
 あ、ちなみに最終手段というか、こちらに大きく被害が出そうになったらさすがに、嫌がってもエルサに魔法なりでなんとかしてもらうつもりだけどね。

「アルケニーやアラクネが、Bランク以上と言われている理由はその動きにあります。素早く動き、壁に張り付き天井すら移動します」
「まぁ、蜘蛛ですからそれくらいはしそうですね」

 俺の知っている虫の蜘蛛ならともかく、数メートルある巨体でどうやって張り付いているのか、足が粘着質なのか? とか余計な考えは浮かんで来るけども――。


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