1,735 / 1,955
王都でのリリーフラワー
しおりを挟む「そう言えばりっくん、りっくんを訪ねて冒険者が来たみたいだけど……?」
「あぁうん。リリーフラワーってパーティの四人組だね。モニカさん達とお風呂に入って、そのまま帰ったらしいけど……」
緩い空気の中、ふと思い出したように話題を出す姉さん。
王城の大浴場を使ったんだから、姉さんに報告が行ってもおかしくないし、知っていて当然かな。
「お風呂に入るだけ入って帰るって、何しに来たのかしら?」
「……お風呂に入るのだけが目的ってわけじゃないとは思うけど……少なくとも、最初は」
お湯に浸かって、疲れや汚れと一緒に用事も流したわけじゃないとは思う。
けど、お風呂に入るだけ入ってすぐ帰るのは、目的を忘れたんじゃないかと心配してしまうのも無理はないだろう。
「それに関しては、私達が聞いているわリクさん。ルギネさん達が王城を訪ねて来た理由ね。まぁ、ほぼ報告みたいなものだったから、私達が聞いてリクさんに伝えるって請け負ったわ。部屋にも誘ったんだけど……」
と、俺と姉さんの話を聞いていたモニカさんが反応。
なんの報告かはわからないけど、モニカさん達に言伝として頼めるのならそこまで重要だったり、緊急性のある事ではないんだろう、多分。
「ルギネが恥ずかしそうにしていてな。あと、グリンデのやつが妙にルギネにまとわりついていて……さっさと帰りたそうにしていた。アンリなどは乗り気だったのだがな」
「グリンデさんでしたか……あの方からは、何やら妙に絡みつく視線を感じましたね。悪い事を考えている風ではないようなのですが、なんというかこう品定めするような感じと言いますか……」
「……本人は隠そうとしていたが、涎を垂らしている事もあったな。さすがに、お湯に浸かっている時はそんな事はなかったが」
グリンデさん……ルギネさんだけかと思ったらそうでもないようだ。
まぁ、そういう趣味嗜好というか、好みの人にとってはバリエーション豊か、綺麗どころが揃った女性用の大浴場なんて、垂涎ものだというのもわからなくはない。
視点が完全に、女性ではなく男の物だけど……。
「何その娘、結構ガチな娘なの?」
「この場だからいいけど、ガチなんて言葉遣いはさすがに女王様としてどうかと思うよ?」
「まぁまぁ、この場だけだからいいのよりっくん。――で、モニカちゃん達と一緒にお風呂に入ったって事は、女の子でいいのよね?」
一応注意するように言ったんだけど、姉さんはどこ吹く風で特に気にしていない様子。
忙しくて、気を抜けるここでは言葉遣いとか細かい事を気にしたくないんだろうと察するし、リラックスできるならして欲しいとは思うんだけど……俺よりよっぽど怖い人、ヒルダさんの眉が片方が少しだけ吊り上がった気がする。
「はい、陛下。リリーフラワーは女性四人の冒険者パーティで、今後リクさんが作るクランに参加する予定になっています」
「へぇ~。リリーフラワー……百合の花……成る程ね。りっくんがまた女の子を誑(たら)し込んだのかとおもったけど、違うみたいね」
さすが姉さん、パーティ名とグリンデさんの様子を聞いただけで、なんとなくリリーフラワーのメンバーの好みみたいな部分を察したみたいだ。
ミームさんは何を考えているのかよくわからないけど、アンリさんはまぁ男女と言う垣根があまりなさそうな人で、パーティ名の持つ意味を体現していると思われるのは、ルギネさんとグリンデさんの二人だとは思うけど。
それはともかく、姉さんは今聞き捨てならない事を言ったよね。
「誑し込んだんだとか、変な事言わないでよ。単純にクランに参加してもらう戦力で、センテで戦い抜いた仲間なんだから」
「……少なくとも、ルギネはそれだけではないようだが。まぁ私が言う事でもないな。真っ当な道に正してくれたと考えておくだけしよう。それは、マリーさん達のおかげでもありそうだが」
人聞きの悪いことをいう姉さんに言い返していると、ソフィーが何やら小さく呟いていた。
よく聞こえなかったけど、呆れ混じりのようでもあったからあまり気にする必要はないのかもしれない。
俺自身が、呆れながら何かを言われる事に慣れ過ぎている気がしなくもないけど。
「それで、ルギネさん達の報告って?」
注意は聞いてくれそうにないし、このまま姉さんと話していても埒が明かないしと、モニカさんに話を振る。
姉さんが、もっと相手をして欲しそうに口を尖らせているのは気にしない。
「城下町での拠点というか、宿の場所とかそういう話よリクさん。用がある場合はそっちにってね。あとは、マティルデさんというか冒険者ギルドに用があったついでみたいよ。一応、王都での様々な事は聞いているけど、クランの話なんかもね」
「成る程ね」
クラン作成は、現状だと予想以上に遅れそうだから、その間リリーフラワーの皆には冒険者として活動してもらう。
それはこちらに来る前から了承済みだし、それに関して冒険者ギルドに確認などをしに来ていたんだろう。
今王都にある冒険者ギルドの一部は、王城の庭の一角に移されているから……簡易的な物だけど。
それと報告とは別に、グリンデさんが帰りたかったというか、ルギネさんを見て妙にソワソワしていたらしい。
その意味はわからないけど、ルギネさんはモニカさん達と一緒に俺の部屋まで来たら、姉さん……つまり女王陛下と対面する事になる、聞いて辞退した模様。
直接女王様に会うのは畏れ多いとか、そういう事なんだろう。
目の前では、だらけた姿勢でソファーでくつろいでいる、ちょっとだらしない女性がいるだけなんだけどなぁ……この世界に転生して、見た目とかはまったく変わったし、ものすごい美人で風格もあるんだけど、今の姿は残念美人と言えるだろう。
「ん、りっくん。今何か失礼な事を考えていなかった?」
「い、いや何も……?」
片目を見開いてこちらを見る姉さん。
なんでこう、俺の考えは誰かに読まれかけるんだろうか? げに恐ろしきは女性の勘と言うやつか……いや、違うかもしれないけど。
とりあえず、ヒルダさんの眉がピクピクし始めているので、後で色々と注意されても知らないとだけは心の中で呟いておく。
「それよりもさ、ロジーナ」
このままだと、姉さんに考えている事を見透かされてしまいそう、という危機感を感じたため、話しを変えようとロジーナに呼び掛ける。
姉さんの方は、小さく舌打ちをしていた……近くにいる俺くらいしか聞こえないくらいのはずなんだけど、さらにヒルダさんの眉が吊り上がったようなので、姉さんが後で注意されるのはほぼ確定といったところだろう。
「……何?」
相変わらずレッタさんに構われているロジーナは、少し憮然としながらこちらを見た。
レッタさんに構われている姿を、あまり見られたくないとかだろうか?
「魔物と戦う時にだけどさ、魔力を特別意識しろって言っていたのは、結局なんだったんだ? 一応、生かみたいなのはあったけど、二度目からは禁止されたし。あと、空から降りる時に空中で蹴るのはもうやめて欲しい。ビックリするから」
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる