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人数が多い程女性のお風呂は長いのかも
しおりを挟む「ふい~、なのだわ」
「はふ~。お風呂に浸かると、ついつい大きく息が漏れるよね~」
エルサを洗い終わって湯船にプカプカ浮かんでご満悦な様子を眺めながら、俺自身も浸かって大きく息を吐く。
今回、エルサは直接魔物と戦わず空を飛んでいるだけだったから、特に汚れている程ではないんだけど、お風呂はお気に入りの一つみたいだからね。
毎日しっかり洗っても大丈夫なのかと、少し心配になった事もあったけど……問題ないどころからむしろモフモフ度が増している気もするので、今日も最高で至高のモフモフを維持するために頑張ろう。
エルサを洗うのは苦労と言う程ではなく、頑張らないといけない事でもないけど。
しばらくお風呂に浸かっていると、遅れてワイバーンに乗って魔物と戦った兵士さん達も入って来た。
さっき話した兵士さんもだ。
そりゃ、戦闘を終えた後だし体が汚れちゃっててもおかしくないよね。
返り血とかは鎧がカバーしてくれるとしても、中は汗をかくだろうし……パレードの時全身鎧を着させてもらったけど、動くとかなり暑いんだよね。
兵士さんも大浴場に来るのは、王城にいる人なら誰でも使えるから不思議じゃないけど、俺よりかなり後だったのは、ワイバーン達を労ったりお世話したり……あとは、戦闘の報告などをしていたためらしい。
報告とかは当然として、ワイバーンとも仲良くやれているようで良かった。
「はぁ、いいお湯でした……ってところかな」
「気持ち良かったのだわー」
「おかえりなさいませ、リク様」
大浴場を出て、満足そうなエルサと一緒に部屋に戻る。
先に大浴場に行ったモニカさん達がいる……と思ったけど、迎えてくれたのはヒルダさんとくつろぎながらお茶をズズズ……と音を立てて飲んでいるエアラハールさんだけだった。
皆はまだお風呂から出てきていないのか。
兵士さんと話したり、エルサを洗ったりもして結構時間が経っていたし、俺自身カラスの行水みたいに入浴時間が短いわけでもないはずなんだけど……女性のお風呂は長いものだから、仕方ないのかな。
長い髪とか、洗うの大変そうだし。
「モニカ様方は、一度この部屋に戻って来られましたが、その際ちょうどリリーフラワーでしたか。リク様が連れて来られた冒険者の方々が訪ねて来られまして。ついでにと大浴場へ行かれました」
「あぁ、ルギネさん達も」
大人数になったから、さらに時間がかかっているのかもしれないね。
ちなみにルギネさん達は俺が連れてきたとはいえ、一応部外者となっているから王城までは来れてもこの部屋までは来れなかったらしい。
まぁ俺の知り合いだからと、誰でも通していたらお城としてのセキュリティーが心配になるから仕方ない。
訪ねてきているという話を聞いて、モニカさん達が迎えに行ったついでに許可を取って大浴場へ、という事らしい。
「リリフラワーの皆は、城下町で宿を取っているんでしたよね?」
「はい、そのように聞いております。モニカ様方と同じ宿をマティルデ様が紹介したようですが、別の宿を選んだと。なんでも、自分達には合わないからとか」
「急に豪奢な宿を用意されたら、躊躇する気持ちもわかるのう。ワシも同じじゃて」
「……エアラハールさんは、気にせず王城に泊っているみたいですけど」
モニカさん達がこれまで泊っていた宿は、城下町の中でも王城近くで貴族御用達の高級宿……センテで俺達に用意されたような宿だから、なれないルギネさん達は遠慮したんだろう。
王城の部屋を宛がわれた俺や、同じ高級宿を用意されたモニカさん達も、最初は遠慮していたけどあの時は断ろうなんて余裕はなかったからなぁ。
俺の場合は特に、姉さんと再会して気付いたら今の部屋を使わせてもらう事になっていたし……。
それに対して、エアラハールさんはヴェンツェルさんに呼ばれて王城に来た時から、特に躊躇したり遠慮したりするような様子はなかった。
「ワシだって図太く、当然とばかりに王城の部屋を使っているわけではないぞ? ただ伊達に年は食っておらんというだけの事じゃ。Aランクの冒険者としても長かったからの、それなりの経験もあったのもある」
Aランクとなると、貴族からの指名依頼もあったりして、それなりにいい宿を使う機会とかもあったんだろう。
危険は当然高まるけど、報酬も高い依頼も受けられるようになるしね。
ヴェンツェルさんとの関係があるかはわからないけど、王城に入る事ももしかしたら過去にあったのかも。
「リク様、エルサ様をお預かりします」
「あぁ、はい。よろしくお願いします」
「良きにはからえなのだわー」
「こらこら、お世話してくれるんだからそんなに偉そうにするんじゃないぞエルサ」
お風呂上りでまだ完全に毛が乾いていないエルサに気付いたのか、抱いていた俺からヒルダさんが率先して引き受けてくれる。
どこのお貴族様だよと思いながら、一応エルサに注意……気分良さそうだから、冗談を言っているだけだろう。
水気はしっかり拭き取っているけど、やっぱりそれだけでは完全に乾かせないからね。
ドライヤーもどきの魔法が使えないから、今はなんらかの方法で風を送るもしくは、風がない状態で乾くまで櫛などで毛が乾くまで梳かすんだけど、それをヒルダさんがやってくれるってわけだ。
ヒルダさんも、俺と同じくエルサのモフモフが損なわれないように……というわけではなく、お世話してくれるってだけだと思う。
とりあえずエルサの方はいいとして、俺の方も風邪を引かないように気を付けながらヒルダさんが淹れてくれていた、温かいお茶を飲んでくつろぐ。
エアラハールさんとも、ちょっとした話をしながら過ごしていると、エルサがヒルダさんのテクニックでモッフモフの毛になってテーブルの上で「そろそろお腹が空いたのだわ……」なんて言いながらゴロゴロしていたくらいに、モニカさん達がお風呂から上がったようだった。
ルギネさん達は宿に戻ったらしく、モニカさん達だけだったけど……お風呂に入りに王城に来たわけじゃないと思うけど、ルギネさん達はどんな用があったんだろう?
それはともかく、お風呂上りで上気した頬や少しだけ湿っている髪など、妙な色気を感じて視線が自然とモニカさんにばかり向かってしまう。
センテでは食堂で食事しながら話す事が多かったし、お風呂はその後で別々の部屋で就寝だったため、久々にお風呂上がりのモニカさんを見たけど……。
意識するようになったのもあってか、視線を無理矢理外しても気付いたら追いかけるようにモニカさんを見ていたり……本人や皆に気付かれてしまうんじゃないかとドキドキした。
……ドキドキしたのは、それだけじゃないかもしれないけど――。
「はぁ~、満足満足なのだわ~。このまま寝たいのだわ~」
「食べてすぐゴロゴロ……というか寝ると、牛になるぞエルサ」
「牛は美味しいのだわー」
満足するくらい食べたのに、牛と聞いてすぐ食べる発想が出て来るとは……。
それはともかく、皆がお風呂から上がった後は夕食の時間。
会議やら何やらで、日中は忙しい姉さんも加わっての夕食を終えてのひと時、満腹感からかテーブルの上でゴロゴロしているエルサだけでなく、なんとなく部屋の皆が緩んだ空気を醸し出していた――。
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