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ワイバーン活用は色々とありそう
しおりを挟むリーバーに乗っていた兵士さんは、ワイバーンに乗って戦う事の有用さを称賛しているけど、それは訓練された兵士さん達であり、油断はしないように注意を払って戦っているからというのもあるんだろう。
話を聞いてみると、ワイバーンが魔法を使えない代わりに多少地上から魔法などで魔物に攻撃されても、再生能力があるため簡単には落ちない事。
さらにワイバーンに乗りながらワイバーンの鎧を着た兵士さん達で構成されているため、多少の攻撃は通らず怪我がしにくい事……これは、空を飛ぶ事とは直接関係ないけどね。
その他、地上から空への攻撃手段がない魔物に対しては、時間をかけて空から魔法を放つだけでいい事なども挙げられた。
まぁ、条件が合えば一方的に攻撃ができるというのは大きな利点だよね。
「ただ……やはり空を飛ぶのは目立ちますので、見つからずに近付くというのは難しく……」
「それは確かにそうですね。空は、身を隠す物なんてありませんから」
雲の上まで高度を上げればまた別だろうけど、明るい昼間に空を飛んだら目立つのは当然で、開けた場所なら人や魔物が見逃す事はないだろうからね。
他に空を飛ぶのは、同じワイバーンを含む魔物くらいしかいないし、そういった魔物はあまり多くないし。
空からというだけで十分奇襲になるけど、気付かれないように近付くのは難しい。
「ですが、その難しさを補って余りある有用さです。ワイバーンに乗る者に専用の訓練を施せば、一軍として運用できるように思いました」
「数はそこまで多くないのにですか?」
「空にいる、状況によっては一方的に攻撃できる、そして移動の早さなどを加味すると、数百から千を超える軍に匹敵するかと……あくまで、私個人の評価ではありますが」
過大評価、とまでは思わないし兵士さんが言う事もわかるから、本当に一軍に匹敵する可能性はあるのか。
もちろん、弓や魔法などの対空攻撃をする手段があるから、数十体そこらのワイバーンで千の軍に匹敵するかどうかはやり方次第だろうけど。
俺は輸送の役割ばかり考えていたけど、もしかすると他の運用法を考えれば、もっとワイバーン達を活用できるかもしれないな……。
「俺が考えていたよりも、ワイバーンにはもっと活用法があるみたいですね。ありがとうございます、参考になりました」
ワイバーン空挺部隊とか、輸送もするけど局地的な戦場での戦闘に参加したり、奇襲をかけたりなんかもできるかもしれない。
もちろん、ワイバーンの数からちょっとした魔物の集団ならともかく、軍隊とかセンテを取り囲んだ大量の魔物を全て相手にする事はできないから、なんでもできるというわけではないだろうけど。
ただそれも、一撃離脱にするとかで使い方次第な気もするね。
空を飛んでいるのは兵士さんの言う通り目立つけど、それもワイバーンは夜目も利くから夜襲をかけるとかで解決するかもしれないし。
当然ながら、リーバーを始めとするワイバーン達がそうする事をよしとするならだけど。
最初はそこまででもなかったけど、協力してもらっているうちに情って湧くもんで、一方的に利用するだけの関係にはなりたくないと思っている。
「いえ、感謝をしたいのはこちらの方ですリク様。ワイバーンのおかげで、これまでになかった数の魔物討伐でも我々兵士の被害はないに等しいのですから、しかし、ワイバーンがこれほどまでに協力的だとは……魔物の活用、ただ倒す敵としか認識していませんでしたが、改める必要があるのかもしれませんね」
「まぁ、あくまでリーバー達が特殊なだけで、他の魔物が協力してくれるとは限りませんから、そこは注意しないといけませんけど」
魔物と協力できる、と考えて他の魔物やそれこそ復元されたわけじゃないワイバーンにも、友好的に接しようと思ったら攻撃されて被害が出た、なんて事になっちゃいけないからね。
復元されたワイバーンも、リーバーという群れのリーダーがいるおかげもあるような気もするから、これから先新しく協力してくれるワイバーンがいるとは限らないわけで。
リーバー達も最初はこちらを襲ってきていたくらいだし……まぁエルサが空中機動戦闘を楽しむために、攻撃を仕掛けたからと言うのはあるけど。
あの時リーバーが他のワイバーン達を従えて、俺と言うかエルサに付く選択をしなければ、ただあのまま全滅させていただけだしね。
そうなれば、センテでの魔物との戦いで協力してくれる事は当然なかっただろう。
あくまでいろんな偶然が重なっただけえあって、変に魔物に対する興味が湧いて、おかしな考えになったらいけないからそこは注意だ。
アテトリア王国では、生態研究とかならまだしも命を弄ぶに近い研究とかは禁止されているからね。
「承知いたしました。リク様のお言葉しかと部下達にも通達し、徹底します」
俺の意図が伝わったのか、深く頷いて礼をする兵士さん……ただちょっと大袈裟に伝わっているような?。
そこまで大袈裟な話じゃないんだけど、兵士さん達なら変な事を考えないだろうし、俺よりもしっかりしていると思うから。
……まぁ油断などをしないため、と考えればいいのかもしれないけど。
「今回の魔物を討伐するためもそうですけど、ワイバーンの活用で何か思いついたら教えて下さい。俺はエルサに乗る事が多いので……」
「だわ。当然なのだわ」
「ガァゥ……」
頭にくっ付いているエルサのモフモフを撫でながら兵士さんにそう言うと、エルサからは満足気な声、リーバーからは不満気な声が漏れた。
エルサはともかくとして、リーバーは俺を背中に乗せたいとかあるのかな? まぁ、余裕がある時はリーバーに乗る事も考えよう。
とりあえず今は、撫でるだけで我慢していて欲しい。
……モフモフは全然ないけど、ツルツルでひんやりしているリーバーの皮膚はこれはこれで悪くないなぁ。
「畏まりました。今回の成果も、これからの成果も上には報告いたしますので、その際にでも。私ごときがリク様のお考えを越える事はないとは思いますが、何かあればご提案させて頂きます」
「ごときなんて事はないですし、俺よりもしっかり考えてくれそうなくらいですけど……よろしくお願いします」
むしろ今は自分の事で精一杯で、あまりリーバー達の事を考えられていなかったからね。
って、そういえばマティルデさん達冒険者ギルドの準備待ちではあるけど、クランの事も考えなくちゃだった……訓練にばかりかまけていられないなぁ。
とりあえずワイバーンに関しては他人任せになってしまうかもだけど、兵士さん達が考えてくれるのならありがたい。
実際にワイバーン達に乗る機会が多いのは兵士さん達だし、そういう経験が多い方がいい方策を思いつく可能性は高いと思うから。
もちろん、何かあった時の責任は俺がとるという覚悟はしているけど。
「さて、それじゃ俺達もお風呂に行って綺麗にならないとね」
「お風呂なのだわ~。しっかり私を洗うのだわ~」
「はいはい」
兵士さんやリーバーとある程度話して終わり、モニカさん達を追いかけるように俺達も大浴場へと向かった。
当然ながら、お風呂は男女別だけどね――。
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