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冒険者ギルドの方針
しおりを挟む「とにかく、建物の破壊や冒険者を使っている事。それに、帝国でギルドとしての活動を停止させた。明らかな敵対行動だと本部は判断したの。これにより、少なくともアテトリア王国内の冒険者ギルドは、帝国に対しての報復をする事が決定したわ」
「報復って……具体的には?」
「さすがに、協力していい関係を築いているとはいえ、対外的には国に寄らない組織を標榜しているのから、表立って軍に加入したりする事はないわ。ただおそらくこの先帝国との戦争になるのなら、冒険者ギルドは国に協力するって事よ。そして、直接冒険者が戦う事も承認、推奨されるは。もちろん強制はしないけどね。依頼として出される予定よ」
「成る程」
これまではあくまで、戦争への参加は冒険者各自の自由意思だったけど、これからは冒険者ギルドがアテトリア王国側に付いたとも言えるべき状況になったと。
というか、冒険者ギルドが戦争に参加すると言っているようなものだろう。
しかも、どちらの勢力として参加するのもそれぞれの自由意思だったのが、今回に限ってはアテトリア王国に味方するように……いや、冒険者としては味方するしかできない状況になったと。
冒険者としてではなく、個人としてアテトリア王国に味方している俺としては、心強い状況だけど……。
「それって、俺がクランを作る意味がほとんどなくなるのでは……? 元々、表立って冒険者が戦争に参加するのは、推奨されないからこその隠れ蓑みたいなものだったはずですし」
そもそも、冒険者ギルドが冒険者を戦争に送り出す事ができないからこそ、俺がクランを作って独立に近い形を取り、その俺の判断で冒険者さん達を戦争に協力してもらうって話だったはずだ。
まぁさすがに、表立って帝国軍の兵士とやり合うのではなく、予想される向こう側の冒険者や魔物を相手にするのが大きな目的ではあったけど。
本部の決定で、冒険者ギルドそのものが帝国に武力を向け、依頼も出すと言うのなら隠れ蓑的なクランは必要なかいはず……。
「まぁ、それはそうなんだけどね。でも、リクにはこのままクランを作って、精兵としての冒険者を率いて欲しいの」
「どうしてですか?」
「私達はあくまで、冒険者ギルドとしての意思で参加するわ。でもリクは、その間の存在として参加して欲しいのよ。協力すると言っても、こちらから直接国軍に参加する事はできないし、何かあっても躊躇してしまう事だって予想される。リクの方は、それとは違って自由に参加、協力できる部隊としてほしいの。リク自身も、陛下と近いようだしね」
「まぁ……」
協力し、補助くらいはするんだろうけど直接関わる事に関しては、まだ冒険者ギルド側に問題があるってところかな。
魔物が相手なら別で、センテの時のように一緒に戦うのも問題ないだろうけどね。
ともかく、俺達は遊撃隊……と言う程じゃないけど、冒険者ギルドの意思には縛られず自由に動いていいとお墨付きもらったに近い。
まぁ確かに、実際はどうあれアテトリア王国軍の部隊が、一部でも窮地に陥っていたら躊躇せずすぐに介入して助けられる存在というのも必要かもしれない。
アテトリア王国軍は王国軍として、冒険者さん達は冒険者部隊として別々に行動するから、俺達は自由に行き来してもいいというので納得しておこう。
俺の肩にかかる負担が増えたような気がするけど……まぁ結局帝国に対しては戦うつもりだったんだから、やる事は大きく変わらないしね。
「わかりました。それじゃ、とりあえず俺のやる事は大きく変わらないという事で……クランの準備の方を進めておきます。というより、ほとんどマティルデさんや他の人に任せている事が多いんですけど。よろしくお願いします」
「えぇ、任せて。まぁ仕事が増えるのは歓迎できないけど、リクには私から頼んだ事でもあるし、責任を持ってやり遂げてみせるわ」
「はい」
マティルデさんの頼もしい言葉に頷き、立ち上がって部屋を出る。
計画というほど大袈裟な事じゃないけど、マティルデさんとの話を終えてさらに決意みたいなものが固まった。
なんとなく前から考えて、万全に準備をと整えようとしていたけど……冒険者ギルドも表立って協力してくれるというのは朗報だったね。
「さて、マティルデさんの用も終わったし……これからどうするかな? 特に予定もないし……」
俺の考えは後でまとめる事として、とりあえず気分を変えるように深呼吸しながら、すぐ近くの王城へと歩く。
と、俺の声に反応したのか、頭の方でもぞもぞと動く感触が……。
「だわぁ……? 話しは終わったのだわ?」
「おはようエルサ。もう終わったよ」
寝ているように見えて、周囲の話を聞いていることの多いエルサだけど……今回は完全に寝ていたみたいだ。
頭の上から聞こえる声も、寝起きで少しだけぼんやりしているように聞こえる。
「だったら、お風呂に入るのだわ。リク、ちょっとだけに臭うのだわ?」
「え……スンスン。うーん、自分じゃあんまりわからないけど……」
エルサに指摘されて、王城へと向かいながら自分で嗅いでみるけど……よくわからない。
こういうのって自覚できない事もあるし、エルサは嗅覚も鋭いようだから自分とどちらを信じればいいのかは、悩む事もないか。
「結界を作る時、無理して汗が噴き出したからかな……思い出したら、体がべたべたしている気がしてきたよ……」
あの時、全身の疲労感ですぐには動けなかったけど、噴き出した汗でお風呂で洗い流したいとか考えていたっけ。
練習が終わった後はちゃんとタオルで拭いたし、乾いているから錯覚に近いんだろうけど、考えたらまだ体がべたべたしている気がしてしまう。
「ちょっと早いけど、まだ夕食までには時間があるし……ヒルダさんの言っていた人達とも会う予定だから、お風呂に入って綺麗にしておいた方がいいかな」
人に会うのに、汗臭いままでというのはちょっとね。
この先の予定もなかったし、お風呂に入って体を洗い流していたらちょうどいい頃合いになるだろうし。
「そうなのだわ。お風呂~なのだわ~」
「エルサはすっかりお風呂がお気に入りだなぁ。嫌うよりはいいと思うけど……」
人でもお風呂が苦手というか、あまり好きじゃない、嫌いという人もいるからな。
でも嫌がらず、むしろ率先して入りたがるのはモフモフを維持する使命を背負っている俺にとっては、嬉しい事だ。
勝手に自分で使命としているけど、モフモフが損なわれるのは世界の損失だからね、うん。
「お風呂は心の洗濯なのだわ。身も心も綺麗になるのだわ~」
「まぁ、間違ってはいない、かな?」
お風呂好きでご機嫌なエルサを頭にくっつけたまま、王城へと入り、大浴場へと向かった。
「戻ったわ、リクさん」
「お帰り、モニカさん。ソフィーとフィネさんは?」
エルサとお風呂に入り、汗を流してさっぱりした後、部屋に戻ってまた寝始めたエルサを眺めつつ、ヒルダさんの淹れてくれたお茶を飲みながらまったりしていると、モニカさんが戻って来た。
少し疲れた顔になっているような気がするけど、それはまぁ昼前まで訓練場で訓練をした後、昼過ぎからは実践訓練と称して魔物の集団と戦ってきたのだから、疲れて当然だろうね――。
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