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センターズギルドの確信
しおりを挟む「今のところは、こんなものね。また何かあれば、伝えるわね。またここに呼びつける事になるかもしれないけど……」
「問題ありません。王城の中のようなものですし、すぐに来れますから」
「そうね。相互に情報を共有して協力を強めるという意味では、建物が破壊されて良かったのかもしれないわ」
まぁ不幸中の幸い、といったところかな?
王都内だから遠いとかではないけど、連携はしやすくなったのかもしれない。
俺だけでなく、姉さんなどの国の中枢と。
「だからって、喜ぶ気にはあまりなりませんけどね……」
「まぁね。そのせいで、今こうして私があくせく働かなきゃいけないし、目が回るような忙しさなんだけど」
破壊工作をした、というか爆発した人物など犠牲者も出ているわけだし、悪い面の方が大きいはずだからね。
肩を竦めるマティルデさんは、状況が状況だけに暗くなってしまいかねないと考えてか、あえて明るく振る舞ってくれているんだろう。
「ほんと、そろそろ引退して誰かに私を引き取ってもらいたいわ……」
そう言って、何故か俺をちらちらと見て来るマティルデさん。
……あえて明るくというのは、俺の考え違いでほとんど素だったのかもしれないなぁ。
「引退は早すぎると思いますし、マティルデさんだから状況が回っているんだと思いますよ」
統括ギルドマスターとしての仕事を詳しく知らない俺にとっては、本当にそうなのかわからないから半分近くはお世辞だ。
けど、マティルデさんがちゃんと仕事をしているのは、この部屋の惨状を見るに間違いないだろうから、本心からそう思っているのももちろんある。
「ふふふー、そう言ってくれると元気が出るわね」
年齢不肖ながら、おそらく姉さんとかよりも一回りくらいは年上のマティルデさんが、少女のように笑う。
なんとなく、色気みたいなものを意識的に振る舞っているんだろうなぁ、とかそれが原因で女狐と言われているんだと思われる、いつものギルドマスターとしての態度よりも、親しみが持てる笑みだ。
多分、本当に心から笑ってくれているんだろう……お世辞混じりとはいえ、俺の言葉でそこまで喜んでくれたのなら、言った甲斐があったと思う。
「さて、他のやらなきゃいけない事も片付けないとね。あ、そうだ。これは本部の決定でもあるのだけど……」
「本部、というと冒険者ギルドの?」
笑っていた表情を引き締めたマティルデさんが、再び何かを思い出した様子。
俺達冒険者からすると、王都にある中央冒険者ギルドが本部のような感覚だけど、複数の国にまたがる組織であり、この国にあるのはあくまで支部だ。
つまり、マティルデさんが言う本部というのは、国でいうところの首都とか中枢機関みたいな感じだろう。
以前から、どこにあるかなどは明かされていないけど、本部などが別にあるというのは聞いていたしね。
「えぇ。全ての冒険者ギルドを統括している……いわば中核ね。ギルドの中では、センターズギルドや本部ギルドと呼ばれていたりするわ」
「成る程。その本部の決定っていうのは?」
「今回の、帝国が企んでいる事に対する報復ね。帝国の冒険者ギルド支部とは、ほとんど連絡が取れない状況で、おそらく取り込まれているのでしょう。それが、納得ずくだったのか強制されたのかはともかくね」
「はい」
報復、というと物騒に聞こえるけど、帝国にある冒険者ギルドも抱き込んでやっている事は、組織としてはそうするだけの理由になると思う。
冒険者ギルドの名を騙って……というかまんま冒険者ギルドの支部を使ってだけど、悪事を働いているのと同義なんだからね。
「本来なら、帝国にある冒険者ギルド全てを除名処分。つまり、冒険者ギルドとして認めないというだけで終わる可能性もあったのだけど……今回、こちらの冒険者ギルドの建物が破壊されたからね。帝国の関与までは、まだ証明されていないけど……本部の者達は、これが帝国による企みだと確信しているようね」
「確信……こちらでも、まだレッタさんの証言とかからそうだろう、という事しか考えていないくらいなのに」
まぁ帝国以外でそんな事をやる意味も、やれたりもしないとは思うから、こちらも確信しているようなものだけど。
でも、マティルデさんからの言い方から察するに、本部とやらはこちら以上に絶対的な確信を持っているように思えた。
「まぁこちら……というか冒険者ギルドにも色々とね。情報収集能力ならどこにも負けないでしょうから」
複数の国に支部を置いているんだから、人数も多く各冒険者が活動する中で様々な情報を得ているという事だろう。
場合によっては冒険者に調査依頼を出す事もあるし……大半は、魔物に対する調査だろうけど。
ともかく、そんな冒険者ギルド全体の情報収集能力は、かなり高いのだと簡単に想像できる。
「それで、爆発する人間……各地で破壊工作をしている人物の幾人かが、帝国の冒険者ギルドに所属している冒険者だったことが判明したのよ」
「冒険者が……ですか」
「えぇ。そして、その冒険者もだし他の冒険者も、帝国の支部に所属していると記録されている者達が、各地で人を強引に連れてきているという話もあったわ」
「……強引に。つまり攫って来たと」
「場合によって様々らしくて、一概に攫ったとは言えないのもあるようだけどね。でも、他国から人を集めていたのは間違いないようよ」
マティルデさんの言葉から想像するに、帝国はもしかすると実験台にする人間を各地から集めていたという事かもしれない。
訓練場でヒルダさんと話た内容にもあった、野盗が人を攫って帝国に売るみたいな事もあったわけだし……って、待てよ。
「マティルデさん、その……以前捕まえた野盗の話なんですけど……」
ヒルダさんと話ていた事を、マティルデさんにも伝える。
それを聞いて、マティルデさんはなんとなく納得したような、腑に落ちたような表情をしていたのが印象的だ。
「成る程ね……そのリクが捕まえた野盗達だけど、一部は帝国の冒険者が混じっていたという報告を受けているわ。全てが、純粋に荒くれ達が野盗に身を落としていたってわけではないみたいなの。やっぱり、この国でも人を無理やり連れて行く工作をしていたのね……」
それを聞いて、俺も少し腑に落ちた点がある。
ヒルダさんから聞いた、俺が助けた人達の事だ。
攫って来たにしては、最低限ではあっても傷つけたり痛めつけたりはされていなかったらしい。
それはもしかしたら、純粋……野盗に対して純粋というのは微妙な気がするけど、とにかく純粋に悪い事がしたいだけの野盗ばかりではなかったからという事なのかも。
冒険者が混じっていたから、扱いに関しては最低限でも保たれていたと考えると、少しは納得できる。
野盗に紛れて、偽装して活動していたのだろう。
まぁ、クレメン子爵領でエフライム達を攫って、子爵を脅して幅を利かせていた冒険者達は、見るからに荒くれ者のようだったし、野盗と大きく差があるように見えなかったから、偽装と言う程ではないのかもしれないけど――。
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