1,781 / 1,955
なんだかんだあってようやく本題
しおりを挟む「要は、ハッタリって事ですか?」
「そうそう、それよ。だから実際に私が戦ったら、絶対に勝てなかったわ。冒険者だった頃にはわからなかったけど、鍛冶師で色んな男達を診ているうちに、相手の力量は大体わかるようになっただけだしね」
うん? 今なんか、見ていると言うニュアンスがおかしかったような?
なんだろう、見るではなく診ると言ったように聞こえた……? 鍛冶で武具を作るのに、一体男達の何を診たのか……これもまた、深く追求しない方がいい気がした。
「なんなら、リク君も診てあげましょうか? むくつけき男達と違って、可愛いリク君を診るのは私ドキドキしちゃうけど」
「……え、遠慮しておきます」
こちらにウィンクを飛ばすララさんに、若干引き気味になりながらも断る。
さっきの殺気と一喝よりも、俺を引かせるにはこちらの方が効果的だなぁと自分で思う。
俺の後ろに隠れていたアマリーラさんが、また威嚇するような唸り声を上げているようだ。
結局のところ、アマリーラさんはララさんの見た目と口調や甘い匂いなどの差異に混乱しつつも、俺を守ろうとして威嚇していたんだろうなぁと思う。
さっきも、魅力的……かどうかは人によるだろうけど、男女の女性側に睨まれる事が多かったと言っていたとおりなんだろうね。
「まぁ、とりあえず話が進まないので……アマリーラさん達の事はいいとして……」
リネルトさんはなんとか表面上平静を取り戻しているようだし、アマリーラさんの方はアメリさんとカーリンさんが撫でて慰めているから、いずれ怯えや混乱から脱出できると思う。
アメリさんは、どさくさに紛れてアマリーラさんのモフモフな耳を堪能しているようではあるけど……もしかすると、慰めるよりもそちらの方が重要なのかもしれない。
アマリーラさんが嫌がっていないんだったら、いいんだけどね。
同じ女性だし、俺みたいに起こられることはないと思うし……ちょっと羨ましいので、頭にくっついているエルサを撫でておこう。
「本題に入りますけど……今大丈夫ですか? 他に仕事があったり……」
「見てのとおりよ。ここ最近お客さんはさっぱりね……だからこうして、私が外に出て客引きをしていたんだけど……私の魅力でも、外に出ている人が少なければ効果も薄いわ。ここ最近、鞄の制作依頼とかも少ないし。ルドルの方は、忙しくしているみたいだけど」
「そ、そうですか……」
ララさんが外に出て客引きとか、どこぞの二丁目のイメージしか頭に思い浮かばない……実際は行った事ないから、あくまでイメージだけど。
あと、ララさんが外に出るのは逆効果な気がしたり、元々お客さんはそんなに多くなかったなどということは口に出さないよう気を付ける。
ちなみにルドルさんというのは、ララさんが鍛冶師をしていた時に親しくなった人で、鍛冶工房を持っている人だ……鍛冶工房の親方さんの息子とかだったかも?
時折、手が足りないとかなんだかの理由で、ララさんに手伝ってもらうようお願いに来たりしているらしい。
「えーっと、それならちょっと頼みたい事があるんです」
「何々、新しい鞄? リク君の頼みなら私張り切っちゃうわよぉ! 他の制作依頼なんてそっちのけでね!」
いや、それは単にさっきも言っていたように他の制作依頼がないだけなのでは……。
「鞄の制作じゃなくて申し訳ないんですけど……こちらの素材を加工してもらえないかなって。ララさんじゃなくても、加工してもらえる人を紹介してくれればと……」
持ってきていた荷物の内、アルケニーの足が入っている袋を広げて中身をララさんに見せる。
元鍛冶師で、今は鞄専門だからそれ以外の物を作るのは抵抗があるかもしれないし……実際、ルドルさんが手伝いをお願いしに来た時、少し嫌そうな雰囲気を出していた。
だから、断られるのなら別の誰かを紹介してもらえないか、というお願いでもある。
まぁそれこそ、ルドルさんとかね。
俺から直接ルドルさんに……という手もなくはないだろうけど、そのルドルさんがどこにいるのかとか知らないし、俺が城下町で頼りにできて当てにできるのはララさんくらいだからね。
「ん~? ふぅん……成る程ね」
「……どう、ですか」
俺の開いた袋の中を覗くララさんだけど、なんだか少しだけテンションが下がったような、さっきまでの雰囲気とは変わった気がする。
どうしたんだろう、アルケニーの素材に何か思うところがあったのか……と思いつつ、窺う。
「リク君の頼みだから聞いてあげたいけど、ちょっと難しいわね」
「それは、加工が難しいって事ですか? だったら、できれば加工できる人を紹介してもらえれば……」
なんとなく、ララさんには失礼だろうなと思いつつそう言う。
「そうじゃないわ。アルケニーよねこれ? アラクネじゃなくてそのさらに上位のアルケニーなんて、簡単にはお目にかかれないけれど……加工するだけなら簡単よ。アラクネよりも素直な性質で、難しい事じゃないわ。それだけに、ちゃんと特性を引き出して室を良くするのは難しくはあるんだけどね。そうね……いっぱしの鍛冶師なら大体は加工できると思うわ。ワイバーンとかよりよっぽど、扱いやすいわね」
「そうなんですか? なら、どうして……」
素材によって、加工のしやすさとかがあるのか……考えてみれば当然かもしれない。
けど、難しい物じゃないのにどうして断られたのか気になる。
ララさんも、今はアルケニーの足が入った袋から体を背けていて、それが断る意思表示のようにも感じられた。
さっきまでの雰囲気は全くなく、少しだけピリッとした空気をまとっている気がする。
「……最近、王都全体がピリピリしている雰囲気を感じるわ。それだけでなく、ルドルのいる鍛冶工房……他の所もそうみたいね。多くの依頼が舞い込んできて忙しくしているわ。そしてその依頼は、大体がこの国からよ」
「……」
ピリピリした雰囲気、というのは多分戦争の準備を進めているからだろうと思う。
城下町は爆発に対しての反応がみられるようだったけど、王城内は全体的にのんびりしていた以前と違って慌ただしい部分もある。
そしてさらに多くの鍛冶工房に制作依頼を出している。
作っているのは兵士さん達用の武具だろう。
それだけでなく馬具とか馬車とか……鍛冶工房が関わっている物は多岐にわたるし、消耗品だったりするから。
「そのうえ少し前の爆発騒ぎ。何が起ころうとしているのかまではわからないけど、なんとなく察している人も多いわけなのよ。近々、国全体を巻き込んだ大きな戦いでもあるのか……と」
まだ帝国との戦争に関しては、はっきりと発表はされていない。
王城の人達や各領主貴族などには伝わっているだろうし、王軍の兵士さん達から少しくらいは広がって噂程度にはなっているらしいけど。
帝国と、という事まではわからなくとも戦争の準備を進めているというのは、ある程度察していたり雰囲気で感じている人が多いようだ。
それは、ララさんも例に漏れずってわけだ――。
0
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる