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ティアラティア獣王国第四王女アマリエーレ
しおりを挟む「……って、ん? 俺だけの声じゃなかったような……?」
そう思って、キョロキョロと辺りを見ると、姉さんが頭を抱えているのを発見した。
「教えられていなかったリクはわかるが、どうしてお前達まで驚いているのだ……気付いていなかったのか?」
「リ、リク様の従者、とご本人から言われておりましたので……まさか、ティアラティア王国の王女殿下が、傭兵であり、従者であるとは露程も思わず……」
「はぁ……まぁ、私も最初は気付かなかったが、なんとなく所作が堂に入るように見えて、そうではないかと徐々に確信を深めたから、なんとも言えんがな」
溜め息混じりにそういう姉さん。
そういえば、アマリーラさん……じゃないアマリエーレさんを王城に連れて来て、姉さんと会った時驚いてはいたけど、礼儀的な事で戸惑っている様子は一切なかったっけ。
あれは姉さんが気にしないし、リラックスモードだったからすぐに慣れてくれたとか、そんな風に考えていたけど、実際に慣れていたからだったのか。
大臣さんはアマリエーレさんと、直接接する機会が少なかったから気付けなかったんだろう。
ちなみに、宰相さんだけは姉さんと同じく驚いていなかったから、鋭い人で気付けていたのか……と思ったけど、閉じている目の瞼や眉がぴくぴくと動いているし、口を強く引き結んでいるから、驚くのを我慢したとかっぽい。
本人と、最初から知っていたであろうリネルトさんを除けば、この場では姉さんしか気づいていなかったって事だろうね
「えぇっと……本当に、アマリーラさん……じゃない、アマリエーレさん? は獣人の国の王女様、なんですか?」
「はい、間違いありません。ですが……国を出てからの偽名とはなりますが、リク様にはこれまで通りアマリーラとお呼び下さい」
大臣さん達が驚き、姉さんが溜め息を吐いているのを見てほんの少しだけ驚きが落ち着いたため、改めてアマリエーレさんに聞いてみると、肯定するように深く頷いた。
嘘や冗談を言っている雰囲気じゃないし、リネルトさんが何も言わないしで、本当なのは間違いないんだろう。
まぁ、この場で嘘や冗談を言うような人じゃないっていうのは、わかっているけど。
「でも……」
「この国では、私は獣人の傭兵であるアマリーラです。そして、リク様の忠実なしもべであろうとしているアマリーラでもあります。ですので、リク様にはそちらで呼んで頂きたく……!」
さすがに、本名がわかったのに一国の王女様を偽名で呼ぶのはどうなんだろう? と思ったけど、ズイと顔を近づけるアマリエーレさんの圧が凄い。
これは、呼ばないと納得してくれなくて駄目なやつらしい。
「じゃあ、はい、わかりました。アマリーラさん」
「はい、リク様!」
改めてアマリーラさんの名を呼ぶと、満面の笑みになり、左右に尻尾を振って嬉しそうにしながら頷いた。
猫っぽい耳と尻尾を持っているのに、まるで犬みたい……なんて考えるのは、王女様に対して失礼だな、うん。
「でも、どうしてアマリーラさんは王女様なのに、この国で傭兵を……?」
「んんっ! リク、すまないがその辺りの話は後にしてくれるか?」
「あ、はい……わかりました。申し訳ありません」
姉さんに言われて気付いた、そういえばここは俺の部屋でもなんでもなく、今はアマリーラさんから事情を聞く場でもなかったね。
後で改めて、アマリーラさん本人から話を聞こう。
けど姉さんも、興味津々という雰囲気をなんとなく滲み出しているし、俺を見る目は先に聞いたら駄目と訴えているようでもあった。
……皆揃ってから、話しを聞いた方が良さそうだね。
「して、アマリエーレ殿下の事情はさておいてだ……獣人の国への協力要請なのだが……」
「はい、女王陛下。リク様がアテトリア王国に味方する以上、協力をお約束いたします」
なんというか、王女様ってわかったからだろうか? 姉さんと話すアマリーラさんの仕草や口調が妙に優雅に見える。
多分、正体が明かされたからアマリーラさん自身も意識してそう振る舞っているのかもしれないけど……半分くらいは俺の先入観みたいなものが混じっていそうだ。
さっきの優雅なカーテシーとかいうのに、引きずられている可能性も高いかな。
「私は獣王陛下の第十子であり、第四王女ですが、陛下には私からも協力とリク様の事を伝えます。必ず、アテトリア王国にとって心強い援軍となる事でしょう」
第十子って事は十人目の子供だから、第四王女ならその上にお兄さんが六人と、お姉さんが三人いるってわけか。
子沢山だなぁ……。
それにしても、一応は国を出ているのにアマリーラさんが、獣人の国……ティアラティア王国だったっけ? その国の協力を簡単に約束してもいいのだろうか?
そう思って少しだけ首を傾げていると……。
「獣王陛下は子煩悩ですからぁ。特に下の方の子であるアマリーラさんが言えば、軍くらい派遣してくれるでしょうねぇ」
なんて、姉さんと話すアマリーラさんを余所に、コッソリとリネルトさんが教えてくれた。
子煩悩で軍を動かすのは……どうなんだろう?
あと、下の方の子と言っていて、一番下とはリネルトさんが言わなかったのは多分、アマリーラさんの下にも弟妹がいる可能性があるのか。
まぁ、今は関係ない事だけど。
「さすがに子煩悩だからって、軍を動かすくらいのお願いを聞いて、戦争に参加させてもいいんだろうか? って思ってしまうんですけど……」
「問題ありませんよぉ。アマリーラさんはぁ、リク様の意思に従いますが帝国のやり方には腹を立てていましたからぁ……」
リネルトさんの話によると、もしアテトリア王国が帝国との戦争で甚大な被害を被った……悪く言えば負けて侵略された場合、いずれ帝国の手は獣人の国にも及ぶだろうと考えていたらしい。
そして、俺が参戦する方向で動いていたのもあって、今のうちに帝国を叩いておくべきとも。
ここからはリネルトさんの推測も混じっているけど、俺がこの場ではっきりと参戦の意思を示し、帝国を叩きのめす決意を語った事で、獣人の国からの援軍という確実に勝利を掴み取るためには必要だと考えた。
さらにそこへ、女王陛下である姉さんからの協力要請で、渡りに船だったってところだろう……との事だ。
それから、アマリーラさんは戦う強さだけではないけど、力が序列を決める獣人の国において、上から数えた方が早い方だとか。
なので、そんなアマリーラさんは国を出ている今でも、ティアラティア王国内での発言力は高いらしい。
要は、国を離れている王女様なのに、その王女様という地位プラス、子煩悩な獣王様と発言力の高さから無視するどころか、獣人の国としても問題なく軍を動かせるだろうとの事だ。
獣人の国、ティアラティア王国……それでいいのだろうか? と少し思ったけど、そういえば以前完全な一枚岩の国だと聞いた。
力も含めて、人間主体の国と違う判断基準などがあるんだろう、と思う事にしよう。
それぞれの国で、国民性とか方針とか色々あるはずだし、ただの冒険者である俺がわからない何かがあるんだろうしね――。
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