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ミスリルの矢の戦果
しおりを挟む「えっとそれは……」
参ったな、戦果と言われるとどれだけのものだったのか俺にはよくわからない部分が多い。
なんとなく、多くの魔物を倒したくらいにしか聞いていないからね。
俺はそれが使われていた時には、北から南へと走ってヒュドラーやレムレースと戦っていたし……それが終わった後は、意識を乗っ取られたから。
正直なところ、ヒュドラーは倒したけど迫る魔物の集団に関しては、気付いたら戦闘が終わっていたみたいな認識なんだよね。
まぁそれを終わらせたのも、意識を乗っ取られた俺が赤い光を使ったからだったりするんだけど。
赤い光を使う前後は、意識としては半分寝ているような感覚で、あったとも言えるしなかったとも言えるわけで……。
「戦果でしたら、私がまとめております。魔物相手ではあるのでばらつきはあるようですが……数にして数百体はくだらないかと。ただその後がその後でしたので、確実な数が言えるような調査はできませんでした」
「まぁ、センテの周囲一帯が氷で閉ざされたからな。その氷の中から魔物が現れたのもある」
フォローというか、俺が把握していない事をマルクスさんは知っていたようだ。
現場で指揮していたからこそだろうね。
ただその後、俺が凍らせてしまったのもあって確実な数を数えるまではできなかったみたいだ。
戦果としてこの報告でいいのかどうか、ちょっと不安が……。
「数百以上か……確か、冒険者ギルドが制定している脅威度ランクでは、AランクやBランクの魔物が多かったのだな?」
「はい。大型の魔物も少なくありませんでした。ただそのほとんどの魔物が、我々側から見る限り、ほとんど防ぐ事すらできず貫かれていたようです。魔法兵や、弓兵の攻撃ではこうはいかなかったと」
「ヴェンツェル、密集する魔物に対して魔法と弓矢を織り交ぜて攻撃を加えたとして、倒せる数の見込みは?」
「推定ですので、実際とは異なるでしょうが……こちらが万全に構えている状況でCランク、Dランク程度の魔物であれば、同等の数を倒せるかどうかといったところでしょうか。もちろん、センテでの戦いのに参加した兵達の数を考慮すれば、その半分に行かなかったと考えます」
「……Aランク、Bランクの魔物がほとんどだった場合は?」
「……良くて数十、でしょうか。魔物のランクが高くなればなる程、魔法や弓矢は防がれる確率が高くなり、さらに致命傷を与えられなくなります。大型の魔物であればさらに、です」
「それに加えて、ヒュドラーを倒すには至っておりませんが、怯ませる程度はできていました。足止め程度はやってできない事ではないようです」
「ヒュドラーをもですか。陛下、あれ一体で国が一つ傾く可能性を持っている魔物です。Sランク、でしたかな。そのヒュドラーをも怯ませるのなら、相当な威力が見込めます。実際にヒュドラーと相対した記録はありませんが……マルクス殿、もしヒュドラーに対してリク様のミスリルの矢がなかった場合の想定は?」
「あ゙の戦いでは、他にも足止めを使っていましたが、おそらくもっと被害が出る程に街への接近を許していたと思われます。遠目ではありますが、直にあの再生力、そして蹂躙する力を見れば、数百程度の兵士が魔法や弓矢を放っても、そうそう長く足止めはできなかったでしょう」
まぁ足止めの一番の要は魔導鎧を身に着けた、マックスさん達だったりするんだけどね。
でも後から聞いた話、エルサの協力を得て放っていたミスリルの矢は、確実にヒュドラーを足止めに成功するための大きな一助になっていたらしい。
もしそれがなかったら、マックスさん達はもっと苦戦、下手すると大怪我、最悪の場合は俺が到着するまでにやられていた可能性だってある。
俺の方も、ヒュドラーの再生力に手を焼いていた部分もあるし、その後レムレースと戦って遅れたしね。
なんて、マルクスさん、ヴェンツェルさん、姉さんに宰相さんが真剣に話しているのを聞きながら、なんとなくカヤの外になっちゃったなぁ、なんて思いながら考えていた。
軍と魔物の戦闘想定なんて、俺にはわからない部分もあるから、下手に話に参加して邪魔しちゃいけないし。
でも、口元に手を当てて考えている姉さんはともかく、ヴェンツェルさんやマルクスさん、それに宰相さんもミスリルの矢の実用性というか、有効性は理解し始めているようだ。
マルクスさんは、最初から理解していただろうけど。
「わかった。そのミスリルの矢、そしてエルサ殿の誘導魔法……だったか? それが組み合わされば、我々に大きな力になるだろう。だが……できるのか、リク? リクは今……」
エルサの誘導魔法と便宜上そう言っているけど、空中に円を出現させ、その中を通った物体は速度が増して狙いを定め、標的へと向かうようにするものだ。
初めて使ったのは確か、ルジナウムでの戦いの時だったけど……あれの話も、ミスリルの矢の時に姉さんにはしている。
それはともかく、誘導魔法はとりあえずいいとして俺は今魔法が使えないわけで、それを姉さんは心配しているんだろう。
ミスリルの矢は他の誰でもなく、俺が作った物だし、大量の魔力を込めないといけないからね
「それに関しては、エルサが俺の代わりにできます。エルサにも許可というか、話しを付けていますから」
まぁ、それをやる代わりに、俺の魔力をエルサに補給させる事と、キューを要求されたんだけどね。
魔力の方は、魔法が使えないし毎日余らせている状態だから、エルサが代わりに有効に使ってくれるのなら悪くない。
「そうなのか、エルサ殿?」
「だわ。リクがやったのとは違って、ちょっと猶予が欲しいのだわ。一日二日でできる量でもないし、ちょっとだけならあまり意味はないのだわ」
「成る程、そうだな。実際に運用するのであれば、それなりの数を用意して欲しいところだ」
「全く問題がないわけではないけどだわ、やるのならなんとかなるのだわ」
「問題?」
「それに関しては、解決の目途は立っているんですけど……」
エルサが言った問題という言葉に対し、少しだけ眉根を寄せる姉さんに、エルサに代わって説明する。
早い話が、ミスリルの矢を作ってもそもそもが魔力を蓄積し続けられる性質を持った物ではないので、だんだんと魔力が抜けて威力が落ちるし、そのうち単なる土に戻るって事だ。
ただそれは、クォンツァイタを含めて魔力を蓄積させる方法が確立されている事。
そして、結界などを使えば魔力を外に漏れ出さないようにできる、などで解消できる問題だ。
さすがに大きな結界で、内部に空間があると問題だけど、ミスリルの矢を包むように結界を張れば、空気中に魔力が溶けだすのがかなり防げる。
その上、砕いたクォンツァイタを材料として混ぜる事で、多少の魔力蓄積性能を持たせる事ができるらしく、魔力が抜けにくくて日持ちのするミスリルの矢を作れるだろうとの事だ。
日持ちする、なんて言ったら食べ物みたいだけど。
ともかくこれは、さっきモニカさん達を待つ間にエルサに確認して教えられた事でもあり、昼食を頂きながら、ユノやロジーナ、それにレッタさんにも確認した――。
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