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許可と段取り
しおりを挟むミスリルの矢の問題解消に付いて、エルサに聞いていたのにわざわざユノ達にも二重に確認した事で、少しだけエルサが拗ねた場面もあったりはしたとかはあったけど……。
あと、レッタさんにも聞いたのは、魔力誘導の能力を持っていて、そういった話に強いからだね。
実際に魔法具を作るとか、改良するなどの事はフィリーナ達エルフのようにはできないけど、魔力の動きに関しては理論よりも感覚で理解している部分が多いらしいから。
それはともかくだ。
「そういうわけで、まぁちょっと手間がかかりますけどエルサの言っていた問題っていうのは、解決できます」
「クォンツァイタか。一応あれは、魔法隊に常備する物として考えているのだが……魔力蓄積させていない、産出されたばかりの物ならというところか。それでいいんだな?」
「はい。魔力に関しては、むしろ蓄積が少ない方がいいみたいです。結局、土に混ぜて形成する時に魔力を込めるので。雑多な魔力がない方が、思った通りの物ができるみたいですから。――だったよな、エルサ?」
「そうなのだわ。私とリクの魔力が混ざっているものを使うのだからだわ、質の異なる別の魔力が混ざるのはできるだけ避けた方がいいのだわ」
ちなみに雑多な魔力に関してだけど、要は色んな人の魔力が混ざっている状態って事だ。
自然の魔力を取り込んで蓄積している事のあるクォンツァイタだけど、そこに人……人間でもエルフでも獣人でも、魔力を込めると中で混ざるわけで。
複数の人物による魔力が蓄積されると、上手く混ざらずボンッ! となる可能性があるとかなんとか……。
それを聞いた時、人間を爆発させるなどの事が頭に浮かんで、魔力って火薬なのかな? と一瞬思ったけど、どれくらいの魔力、何人の魔力でそうなるかはクォンツァイタの質や周囲の状況などにもよるらしく、安定しないので何かに利用するのは難しいらしい。
威力次第で爆弾的な利用ができるかも? なんて考えたけど、安定しないのなら危険だからとすぐに脳内で却下した。
まぁ、複数の人物の魔力とはいっても三、四人程度ではそんな事は起こらないというのと、自然の魔力は他の魔力との融和性が高いため、その自然の魔力を蓄積している量が多い程に危険性が下がるらしいので、アルネやフィリーナがやっている魔力タンクのような役割程度であれば、大きな問題には発展しないだろう。
一応、大量の魔力を蓄積させるのに、あまり多くの人が一つのクォンツァイタに魔力を注がない、という事くらいは注意しておかないといけないだろうけども。
「蓄積されてからのクォンツァイタの使用でないのなら、問題ないか。クォンツァイタの利用法は確立されつつあるが、まだまだ魔力を蓄積させている数が足りない。まったく、とんでもない魔力容器だなあれは」
「まぁ、人だと数人分……一人で満タンまで充填するには数日かかりますからね」
魔力は個人差があるけど、平均的に見て大体一人でやるなら五日程度だろうか。
元々どれだけの魔力を蓄積しているかにもよるけど……自然の鉱物なので、採取した時にどれだけ自然の魔力などを蓄積させているかによってもっと早くなる可能性はあるけども。
「今は、余裕のある兵士、王城にいる者達で魔力を持て余している者に、蓄積を頼んでいるところだ。リクも、余裕があれば参加して欲しい」
「それは、はい。フィリーナとも約束していますから」
というより、毎日少しずつだけど魔力を蓄積させているんだよね。
俺が王城にいる時だけだけど、フィリーナなり他の誰かなりが持って来る。
まぁ魔力は有り余っているし、数個程度なら数分もかからないからサクッとやって終わらせているんだけども。
エルサがミスリルの矢などを作るため、俺から魔力を補充するにしても、毎日の作業を少し増やしたとしても多分問題なさそうだ。
……人が五人、または一人で五日程度、エルフだと二日だったかな? 一つを満充填させるのにそれくらいかかるクォンツァイタを、片手間に数個まとめて満充填させられる俺って、今更だけどどんだけの魔力量だよって感じだなぁ。
「それで、エルサ殿が代わりにミスリルの矢を作るとして……日数がかかるのだったな。あればあるほどいいが、ともあれクォンツァイタはこちらで用意させよう」
「ありがとうございます」
「リクに頼まれたから、やるのだわー」
なんとか、無事にミスリルの矢を作る許可は出たようだ。
座っている執務机に視線を落とし、何かを書いて宰相さんに渡す姉さん。
許可証というか、通達みたいなものだろうか?
「クォンツァイタは至急用意する。それと……土が必要だったな。どんな土でもいいのか?」
「んーと……どうなんだエルサ?」
「リクなら、どんなのでも作れるけどだわ、早く作るのならできるだけ固まっていない土がいいのだわ。砕いたクォンツァイタも混ぜやすいのだわ」
「了解した。そうだな……ヴェンツェル、マルクス」
「「はっ!」」
「王城北側はどうだ? あそこの土ならば、石なども少なく整備されているはずだ」
「問題ございません。訓練をしている兵士はいるでしょうが、話しを聞く限り邪魔にはならないでしょう」
「なんなら、兵士にも作業を手伝わせます。できた物を運ぶくらいはできるでしょう」
「うむ、ではそのように」
王城は南側を向いて作られていて、その正面には大きな庭園がある。
庭園から東に行くと城下町に向かう門や、堀を越える橋などがかかっていて、基本的に出入りはそこから。
正面に門がないのは、南から真っ直ぐ庭園を突っ切って王城へと攻め込まれないためとかそういう事らしい。
さらに王城の東側、門などから北に位置する場所には広いグラウンドのような運動場があり、今はそこにワイバーン達がいる。
その途中に、破壊された冒険者ギルド中央支部の簡易的な建物があり、そこではマティルデさん達が忙しく仕事をしているわけだ。
まぁ誰でも王城の敷地内の深い場所へ気軽に入れるわけにもいかないらしいので、冒険者ギルドは門に近く、運動場との距離は結構離れているけども。
そして、王城西側は倉庫などが立ち並んでいて、北側はまた別の用途に使われている。
その中で、東の運動場に近い物もあり、主にそちらでは兵士さん達が走り込みなどの訓練をしているとか。
……なんとなくワイバーン達がいる方を先に見て、運動場っぽかったからそう呼んでいるけど、実際には北側の方が使われ方としても運動場に近いみたいだね。
ともあれそこなら、大まかな石などは取り除くよう整備されているため、エルサの言う条件にちょうどいいって事みたいだ。
エルサが隅の方でせっせとミスリルの矢を作る中、兵士さん達がマラソンしているなんていう、シュールな光景が思い浮かんだ……実際にそうなのかはともかくとして。
「攻撃用のミスリスの矢はいいとして……防御用の土の壁とやらの方は、さすがに今のうちに作っておくことはできんな。戦場での陣地や拠点化の際には欲しいとは思うが……それは王城の近くではないしな。もしもに備えて、王都周辺で作るのも悪くはないが……」
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