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接着剤の耐久不足
しおりを挟む「それは確かにそうですね……うーん」
陣地形成に土の壁はありだと思ったけど、よく考えればその場所で作らないと意味がないからね。
王都周辺ならまだしも、今から帝国との戦場で想定される場所に向かって作るのは、ちょっと難しい。
エルサならひとっ飛びだろうけどやりたがらないだろうし、そもそもどこが戦場になるのか、まだ想定しきれていない部分もある。
帝国の動き次第ではあるけど……最悪、こちらから攻勢に出た場合は帝国領土内になるわけで、土の壁を今から作れる状況じゃない。
さすがに今すぐ帝国にエルサが飛んで行ったら、確実に向こうを刺激するだろうしね。
「陛下、よろしいでしょうか?」
「うむ? どうした?」
土の壁はとりあえず諦めるべきか、と考えている中、宰相さんが姉さんに伺いを立てる。
発言の許可とかそんな感じかな?
「話を聞いておりますと、土の壁、ミスリルの矢という物も、両方土からできているのは間違いないですな?」
俺に向かって質問を投げかける宰相さん。
「はい。センテで作った時は、そこらの地面にある土を固めるだけとして作りました」
他にも、魔力を通すためにヘルサルで長い棒のような物を作ったりはしたけど、ともあれ土があればできる物であるのは間違いない。
「であれば、最初から壁として作るのではなく、持ち運びやすい大きさで作るのはいかがでしょう? それを輸送して、拠点化の際に使用すればと」
「成る程、レンガ積みの要領で使うのだな」
「はい。そうすれば、今のうちに作って備蓄しておき、いざという時に運び出せば利用できます。前もって作っておくのならば、この方法が良いかと」
「レンガ、ですか。成る程……」
さすが宰相さん、というべきか。
実際に作った俺よりも、ちゃんとした利用法を考え出してくれた。
俺が何も考えずにやり過ぎという事もあるだろうけど、それはあまり考えないようにしておこう。
ただ……。
「レンガ積みはいい案だと思いますけど、合わさった部分が弱くなりそうな気がします……」
「通常のレンガと同等の接着法でもいいとは思うが、リクの言う土の壁がそこから破られる可能性があるという事か」
レンガを積んだだけでは、簡単に崩れてしまいそうだ……というか、高く積めば積む程、押せば形が崩れてしまうような物になるわけで。
当然ただ積むだけでなく、接着剤なども使うだろうけど、その場合通常の建築用の物でも駄目ではないんだけど、下手をすると何かしらの攻撃でそこから崩れる可能性はある。
魔法が飛び交う世界だし、炎の魔法の熱にやられるとかね。
建材の接着剤と言えば、モルタルとかセメントとかってのは聞いた事があるけど、作り方はわからないし、魔法で作った土の壁を強固にするように改良なんてのもできそうにないしなぁ。
「レンガの接着というと、陛下が以前新たな建築材を作っておられたが、それでは駄目なのか?」
「ね……陛下が? それはどんな物ですか? いや、詳しいわけではないから、聞いてわかるかは微妙ですけど……」
「む……うむ、なんというか以前聞いた事があって、というか遠くの方の知識としてそういう物がある、と知ってな。それで作ってはみたのだが……」
ヴェンツェルさんに言われて、姉さんを問いかけるように見たけどなんだか歯切れが悪い。
遠くの方の知識……聞いた事がある……? もしかして、日本にいた頃の知識とかだろうか?
俺と違って、姉さんにとっては前世になるわけだけど……。
「……強度としては高いと言えるのだが、リクの心配を解消できる程ではない。既に王都では多く使われて一般的になりつつあるが、住居ならまだしも、戦時下の壁に使うのには不十分だろう。実際に、ここ最近では破壊された建物にも使われているが、結果は耐えられなかったの一言で済まされる。まぁ、あれは接着剤としての弱さだけでなく、建築物全体が耐えられなかったというのもあるが」
「最近破壊された建物……」
建て替えなどで家を崩すとかかな? と一瞬思ったけど、破壊されたと姉さんが言った。
何者かによって意図せず破壊された、とかそんなニュアンスであって、立て替えでは使わない言葉だろう。
ここ最近でそんな事が王都で起こったとすれば、人間が爆発した事件だ。
あの現場には俺も行ったけど、爆心地近くは建物の塀や壁などは破壊されていて、その衝撃プラス広がった爆炎で周囲の多々建物のほとんどが耐えられていなかった。
全てが全部崩れていたわけじゃないから、姉さんが作ったらしい建築材……というか接着剤は優秀なんだろうけど。
簡単い崩れていたら、助ける事のできた人はもっと少なかっただろう。
俺が家を破壊しながら乗り込んで助けた、小さな女の子と赤ん坊とかもだね。
ただ……。
「簡単に、かはともかくとして……破壊されているなら、やっぱりちょっと心配ですね」
「そうだな。戦時下で使われた場合、もっと大きく強い衝撃だけでなく、様々な攻撃にさらされるだろう。さすがにそれには耐える事はできないだろうからな。いや、そもそも全てに耐えられる土の壁と言うのが特殊ではあるのだが」
まぁ、この世界では魔法があるからなぁ。
単純な攻城兵器なんかによる衝撃だけでなく、熱や冷気など色んな攻撃手段にさらされるわけで……それら全てに耐えられる接着剤というのは難しいのかもしれない。
ちなみに、あとで聞いた話だけどやっぱり姉さんの作った接着剤というのは、日本からの知識らしくモルタルの事だったみたいだ。
俺は作り方などを知らなかったけど、材料などちょっとだけ知識のあった姉さん、日本での記憶が復活してからこちらの世界での専門家に命じて研究、作製できるようにしたとか。
多分だけど、日本での知識であり自分が考えて出した発想ではないから、少しだけ後ろめたい気持ちみたいなのがあって、さっきは歯切れが悪くなったんだろう。
こちらでは初めての試みかもしれないけど、日本では既に開発されて使われている物だからね。
既にあった技術や知識であって、姉さんが何もない状態から考え付いた物じゃない。
それでも、実際に国民のためを思って作った物だろうし、この世界にはなかった技術や知識なんだから、姉さんは胸を張っていいと思うんだけどなぁ……。
と思って、話しを聞いた時に姉さんに言ったら、その頃はまだ日本での記憶が蘇ったばかりで色々と混乱していて、知識を試すためでもあったとか。
実際に蘇った記憶や知識が正しく、それが作れるかどうか半信半疑だったって事だろう。
結果的に国民のためにはなったけど、実際は自分のためだったと吐露していた……まぁ、そういう事もあるよね、うん。
「陛下、でしたらあれはいかがでしょうか?」
「あれ? あぁ、今研究を進めているあれか」
「はい。あらゆる攻撃に耐えられる……とまでは申せませんが」
「そうだな……」
「えっと、あれってなんでしょうか?」
宰相さんと姉さんの間で、共通認識としてあるあれという物。
なんの事だかわからず首を傾げる……俺だけでなく、ヴェンツェルさんやマルクスさんも同じだね。
ヴェンツェルさん達は軍関係者だから、あまりそう言う事には詳しくないのかもしれない。
ただ、建築に関係する事もあるみたいだから、姉さんが作った接着剤については一応知っていたんだろうけど――。
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