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十
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そして、コンスタンスは、やはり自分の気持ちを認めないわけにはいかない。
女工やお針子になるのは、嫌だった。
(わたしには、そんな生き方はできない……)
貧しいアパートに住んで針仕事をしている自分など想像したくない。女中や、どこかの店の売り子もご免だ。もし、かつての級友が店に来たらどんな顔をすればいいのだ。
コンスタンスはどこまでいっても、そういう娘だったのだ。選べというなら、貧苦と苦労の果てに幸福になったペリーヌやシャーロットになるよりも、いっときの華やかな虚飾につつまれ最後は血にまみれ血を吐き死んだマルグリットやカルメンとなるだろう。
「あら、来たわ」
ブリジットの黒目がドアのところに向けられる。
「シャルモリュさん、あたしの一番のお客さんよ」
小声でコンスタンスの耳にささやく。ドアの向こうでマダムと話している客人は、小太りのいかにも冴えない雰囲気の中年男だった。
「あの人、新しいもの好きだから、なんなら、ゆずってあげようか?」
「え……?」
「ああ見えて、けっこうお金は持っているわよ。常連客になってくれると、あとあと楽かもよ」
コンスタンスは苦いものを飲み込んだような顔になっていたろう。内心、ひそかに芽生えたブリジットへの憎悪を必死にかくした。
(だめよ、コンスタンス、ここではだめ)
内心、コンスタンスは自分にそう叫んでいた。
娼婦でも社交界のトップクラスの男たちと浮き名をながし湯水のごとく男たちに金を使わせる女も、この世にはいる。
そういった高級娼婦となるリアンヌ・ド・プージィーやクレオ・ド・メロド、エミリエンヌ・グラタン、ラ・ベル・オテロなどの美貌を誇った女たちの写真やゴシップは華やかに新聞紙面をかざっており、コンスタンスも別世界のこととは思いつつ、それらを眺めて――いけないことだろうが、あこがれの溜息をついたことがある。
そんな高級娼婦と呼ばれる女たちのなかには王族や貴族の相手をしたり、ときには正妻の地位を得るような幸運にめぐまれた者もいる。彼女たちはいわば娼婦の女王だろう。その一方で、こそこそとみじめに日影で春をひさぎ、世間に向けられなくなった顔を伏せて生きる女たちもいる。結局ここは、そういう影の女の場所なのだ。
女工やお針子になるのは、嫌だった。
(わたしには、そんな生き方はできない……)
貧しいアパートに住んで針仕事をしている自分など想像したくない。女中や、どこかの店の売り子もご免だ。もし、かつての級友が店に来たらどんな顔をすればいいのだ。
コンスタンスはどこまでいっても、そういう娘だったのだ。選べというなら、貧苦と苦労の果てに幸福になったペリーヌやシャーロットになるよりも、いっときの華やかな虚飾につつまれ最後は血にまみれ血を吐き死んだマルグリットやカルメンとなるだろう。
「あら、来たわ」
ブリジットの黒目がドアのところに向けられる。
「シャルモリュさん、あたしの一番のお客さんよ」
小声でコンスタンスの耳にささやく。ドアの向こうでマダムと話している客人は、小太りのいかにも冴えない雰囲気の中年男だった。
「あの人、新しいもの好きだから、なんなら、ゆずってあげようか?」
「え……?」
「ああ見えて、けっこうお金は持っているわよ。常連客になってくれると、あとあと楽かもよ」
コンスタンスは苦いものを飲み込んだような顔になっていたろう。内心、ひそかに芽生えたブリジットへの憎悪を必死にかくした。
(だめよ、コンスタンス、ここではだめ)
内心、コンスタンスは自分にそう叫んでいた。
娼婦でも社交界のトップクラスの男たちと浮き名をながし湯水のごとく男たちに金を使わせる女も、この世にはいる。
そういった高級娼婦となるリアンヌ・ド・プージィーやクレオ・ド・メロド、エミリエンヌ・グラタン、ラ・ベル・オテロなどの美貌を誇った女たちの写真やゴシップは華やかに新聞紙面をかざっており、コンスタンスも別世界のこととは思いつつ、それらを眺めて――いけないことだろうが、あこがれの溜息をついたことがある。
そんな高級娼婦と呼ばれる女たちのなかには王族や貴族の相手をしたり、ときには正妻の地位を得るような幸運にめぐまれた者もいる。彼女たちはいわば娼婦の女王だろう。その一方で、こそこそとみじめに日影で春をひさぎ、世間に向けられなくなった顔を伏せて生きる女たちもいる。結局ここは、そういう影の女の場所なのだ。
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