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三
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「あ、あら……」
「き、君、もしかしてコンスタンス・デュホールじゃないかい?」
相手はスッテキを落とさんばかりに驚愕している。やっとコンスタンスは思い出した。二度ほど顔を見たことのある級友の父親だ。
「あ、あの、たしか……ロベールさん?」
彼の娘とは同じクラスだったが、特に仲は良くも悪くもない。ロベールの娘は気の弱い真面目な少女で、よもやその父親とこんなところで会うとは……。コンスタンスは動揺を隠せないでいた。しかし向こうはコンスタンス以上に困惑しているようだ。
「き、君、ここで何しているんだい? こんな時間に」
赤面しながらロベール氏は焦って早口になる。その様子に逆にコンスタンスは肚がすわった。
「あの、わたし、ここでメイドの仕事をしているんです」
コンスタンスは背をそらしていた。娼婦でないことだけは主張したい。
「メイド? 君が?」
「ええ。父の商売が危なくなりまして、わたしも働かないといけないので。ですから、学院も辞めたんです」
「そ、それは気の毒に」
ロベール氏の動揺ぶりはいっそ滑稽で、内心コンスタンスは笑ってしまう。
コンスタンスには家が破産して労働せねばならない理由があるが、ロベール氏にはここへ来る正当な理由はないはずだ。
(さあ、どう出るかしら?)
コンスタンスは心の内でほくそ笑んですらいた。
「……大変だったんだね。……あ、よければ、これ取っておくがいい」
ロベール氏は幾枚かの札をコンスタンスの片手に押し付けてきた。
「まぁ、こんなに」
口止め料も入っているのだろうが、どのみちもうコンスタンスはかつての同級生たちと交わることはないのだ。ここまできたら恥も見栄もない。さも恐縮した顔をしながら、差し出された紙幣を受けとった。
チップを受けとる立場になったコンスタンスは、もはやそんな身の上になった自分を悲しむほどの純情さもなかった。
「き、君、もしかしてコンスタンス・デュホールじゃないかい?」
相手はスッテキを落とさんばかりに驚愕している。やっとコンスタンスは思い出した。二度ほど顔を見たことのある級友の父親だ。
「あ、あの、たしか……ロベールさん?」
彼の娘とは同じクラスだったが、特に仲は良くも悪くもない。ロベールの娘は気の弱い真面目な少女で、よもやその父親とこんなところで会うとは……。コンスタンスは動揺を隠せないでいた。しかし向こうはコンスタンス以上に困惑しているようだ。
「き、君、ここで何しているんだい? こんな時間に」
赤面しながらロベール氏は焦って早口になる。その様子に逆にコンスタンスは肚がすわった。
「あの、わたし、ここでメイドの仕事をしているんです」
コンスタンスは背をそらしていた。娼婦でないことだけは主張したい。
「メイド? 君が?」
「ええ。父の商売が危なくなりまして、わたしも働かないといけないので。ですから、学院も辞めたんです」
「そ、それは気の毒に」
ロベール氏の動揺ぶりはいっそ滑稽で、内心コンスタンスは笑ってしまう。
コンスタンスには家が破産して労働せねばならない理由があるが、ロベール氏にはここへ来る正当な理由はないはずだ。
(さあ、どう出るかしら?)
コンスタンスは心の内でほくそ笑んですらいた。
「……大変だったんだね。……あ、よければ、これ取っておくがいい」
ロベール氏は幾枚かの札をコンスタンスの片手に押し付けてきた。
「まぁ、こんなに」
口止め料も入っているのだろうが、どのみちもうコンスタンスはかつての同級生たちと交わることはないのだ。ここまできたら恥も見栄もない。さも恐縮した顔をしながら、差し出された紙幣を受けとった。
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