再会した御曹司は 最愛の秘書を独占溺愛する

猫とろ

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社長は秘書を溺愛したい!

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今日の紗凪も実に可愛かった。

一人、車内で先ほど別れた紗凪のことを思い出すと思わず笑みが溢れてしまう。
家に戻るだけの夜道でも退屈しない。

「本当は家に連れて帰りたいぐらいだったな」

ハンドル片手にふと呟く。
今日はその想いが溢れてしまい、紗凪のマンションの下、車内でキスをしてしまった。

しっかりと紗凪を家まで送り届けて。
『もう着いちゃった』とか、好きな女に残念そうに言われると流石に我慢が出来なかった。

気がつくと紗凪を抱き寄せ、キスをしていたのだ。触れた柔らかな唇に、圧倒的な幸福感を感じた。

刹那にもっと紗凪が欲しいという欲望が顔をもたげる前に、直ぐに唇を離した。
それでも今も俺の唇には紗凪の感触が残っていて。赤信号で車が止まるとつい、自分の唇に触れてみた。

「全くこれじゃ、思春期の子供と変わらないな」

苦笑してぱっと唇から手を離し。赤信号の光を見つめる。

キスをしたせいか、紗凪のことが頭から離れられなくなり。自然と高校生のとき、告白して真っ赤になった紗凪を思い出していた。

あの時の紗凪は今よりもふっくらとしていたが、昔は昔で可愛いと思っている。

もちろん、今の紗凪も可愛いことに変わりない。むしろ昔より過ごす時間が多くなり、愛しさは募るばかり。
そもそも俺は体型のことなど、なんとも思わなかった。当時は触ったら柔らかそう。もちもちしてそう。とか──本人には言えないが、胸の大きさに魅力を感じたこともある。

でもあのとき。実際に俺が触れることが出来たのは手首だけ。その名残り惜しさは苦い思い出に違いない。

しかも他のどうでもいい、外野の言葉に惑わされてしまったこと。

一度は告白を受け入れて貰ったのに次の日には振られてしまったことは、どうしても忘れられなかった。

それでも自分なりに過去を引き摺るのは良くない。他の誰かと付き合ってみたら紗凪のことは忘れるだろうと思って、他の女性と付き合ってみたが、しっくりと来なかった。

それは俺が大人になったから。環境が変わったから。自分の将来は社長だと固定されていて、そのうちお見合い結婚でもするんじゃないのかと。どこか冷めた感情を抱いていて、誰にも本気になれなかった。

などと理由を付けては自分を納得させていた。
けど、あの日。お祖父様が紗凪を社長室に連れて来たとき。一目でそれが青樹紗凪だと分かった。

そして懐かしさや愛しさが一瞬で鮮やかに蘇り。俺はこの人がまだ好きだから、忘れられなかった。だから他の人に本気になれなかったんだと理解した。

「次は二度と離さない。諦めない」

赤信号から青信号に変わり、握ったハンドルに力が入る。

再会し、紗凪が仕事を頑張りたいことや赤井社長の元で理不尽な目に遭ったことも把握した。

紗凪に昔のことを問う前に、当たり前ではあるが社長と言う職務を真面目に取り組むことが、紗凪との距離も詰めれるのではと仕事に励んだ。

その矢先──赤井社長が怪しいサプリで、紗凪を落とし入れようとした。

そして俺は過程や結果はどうあれ、紗凪に触れた。
気持ちは昂ったが、サプリで気持ちを惑わされた彼女を抱く気にはならなかった。

そんなことをすれば、赤井社長だと一緒だと分かっている。

だから紗凪が気を失ったあとは速やかに病院に運んだ。
紗凪の体が心配だった。
その後、経過も良く。俺の心情を紗凪は分かってくれていてホッとした。

「本当に大事に至らずで良かった……」

大通りを抜けると、風景が都会の夜から静かな夜へと変わり。周りを走る車の台数もトラックなどの大型車も減って、走りやすくなってきた。

目にしたコンビニに今日の食事は何しようかと思う。本当は紗凪と一緒に食事がしたかったが明後日、出張に行く先方の資料を家でまとめたかったのだ。

「家にまだ冷凍食品の残りがあったな。それで軽く食べようか」

両親から送られてきたレストランの冷凍食品は、こういうとき重宝する。
多忙な両親を持ち。昔から家庭の味には縁がなくて当時は不満に思ったことがある。
それも今になっては親の気持ちが理解出来るし、何よりも料理上手な紗凪を好きになる切っ掛けにもなったので今は両親に思うことは何もない。

思うことがあるとすれば──俺の関心は紗凪ことだけ。

サプリからの一件以降、俺と紗凪の昔の誤解は解け。互いの気持ちは同じものだと分かった。
しかし紗凪は俺と付き合うにはもう少し時間が欲しいと、悩ましい胸のうちを正直に言ってくれた。

それは紗凪の仕事にかける思い。
社長と付き合う心構えが欲しいと言われた訳である。
もちろん紗凪の意思は尊重したい。
俺も心より先に身体に触れたと言う負い目があったから。今度こそ紗凪の心を大事にしたい。

しかし。
これは紗凪から焦らされているのでは? とかも少し思ってしまう。

「まぁ、どんな事をされても紗凪は本当に可愛い女性ひとだから」

己の惚気に苦笑してしまうが、それも可愛い紗凪の為なら我慢しよう。
焦らされた分だけ紗凪に俺の気持ちを受け止めて貰うだけ。

とは言っても、仕事が終われば俺も自分の気持ちを抑えることなく紗凪に接している。
それは高校時代、何も言えなくて別れてしまったから。好きだと言う気持ちは伝えたいのだ。

この我がままはだけは許して欲しい。

──と、少々考えていたら車は家の近くまで来ていて、あっという間の帰路だった。
この辺りはどこも壁が高い閑静な住宅街。

紗凪のことを考えていると自分の家を通り過ぎてしまいそうだと、また苦笑するのだった。

家に帰ると食事をしてから資料のまとめ。キセイ堂のwebで間も無く公開されるディザーPVをチェック。

キリのいいところで切り上げて、デスクワークで肩が凝ったので軽く筋トレ。
ルーティンワークのようにこなして、風呂に入ろうと思った。

自宅の風呂は一人暮らしにしては広くて大きい。この家はそもそも、両親とお祖父様から社長就任祝いとして貰った家。
ここに未来の俺の家族と住めるようにと作られたらしく、家族が住みやすいように家は設計されていた。
だから風呂やシャワーも最新式のもの。
落ち着いたモスグリーンのバスルームとパウダールームは、ガラスの仕切りで開放感がある。

パウダールームもホテルライクな作りで、横に広く。鏡は大きく、清潔感を引き立てる。

「紗凪とか喜んでくれそうだけどな」

そんな他愛ないことを言いながら、パウダールームで服を脱ぎ風呂に入る。

これもルーティンのようにシャワーでまずは体の汗を流して、体と髪を洗い。湯船に浸かろうとしたとき身体に──下半身に障りがあった。

「……っ」

再びシャワーのコックを捻り。シャワーヘッドの水流モードをミスト状態にして、温度も少し下げた。

サァァと心地よい水流が肌を伝う。
直前、紗凪のことを考えていただろうか。それとも別れ際にキスをして、体がまだ熱を覚えていたと言うのだろうか。

もしくは──最近一人で処理をしていなかったからか。

色々と理由を考えると、触りはどんどん大きくなり。シャワーの水温より熱を持ち始めた。

「これも紗凪のせいだ」

ここに紗凪がいたら、紗凪に鎮めて欲しいが居る訳もなく。

さっさと熱を解放しようと思った。
思うのは紗凪のこと。あのホテルでの続きがあればと、秘めやかな妄想をする。

とろんとした紗凪の色っぽい表情。
俺の首に手を回し『抱いて』と囁く紗凪──。

そう思い描くだけで、急速に熱を持った自身にそっと手を触れたのだった。
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