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そのころ王都では3
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「……こうするしかないと言うのか?」
「申し訳ございません。結局、金庫を開ける手順を思い出せる者はおりませんでした」
「どこかに手順を書いておらぬのか? 本当に!?」
「陛下が禁じられましたので……」
おろおろしながらも、はっきりと私にも非があると伝えた執事を睨みつけるが、執事は深々と頭を下げたまま私の視線には気付かなかった。
罰してやりたいが、この執事がいなければ仕事が進まぬ。寛大な心で許してやったというのに礼すら述べず、執事は続けた。
「南領の魔物被害、西領の干ばつ、東領の水害の対策については、各領主様から何度も催促が届いております。領主様に事実を伝えなければ、支持を失います」
「事実を知れば、どちらにせよ失う!」
「非を認めて、謝罪なさるのがよろしいと存じます。陛下が頭を下げるのです、許さない貴族はおりません」
「私が頭を下げるだと……!?」
強烈な怒りが体中を駆け巡る。激情のまま立ち上がって机をたたくと、手がじんと痛んだ。
「私が! この国を統べるこの私が! 頭を下げるなど許されない!」
「有り得ない行いをするからこそ、陛下の器の広さが知れ渡るのです。陛下の素晴らしさが民にまで伝わるでしょう。聡明な陛下ならば、どうなさるのが一番かおわかりかと」
イライラと椅子に座る。
領主からの催促がこれ以上くるのはまずい。だが、担当していたのがエルンストなので、詳細がわからない。エルンストの補佐をしていた者達は次々と辞職し、残ったのは無能だけだった。そやつらは遊び惚けて仕事をしていなかったから城から追い出したが、そうすると誰も残らなかった。
私は、エルンストから詳しい報告は聞いていなかった。もう少し進めば私が取り仕切る予定だったので、その時に詳しいことを知る予定だったのだ。
「金庫さえ開けられれば……!」
そこにあるものさえ見れば、私もすぐ取りかかれる。この政策に失敗は許されないのに。
私は王だ。王とは、何でもする下働きのような存在ではない。人に仕事を割りふるのが仕事なのだ。
私を探るエルンストが目ざわりだからといって、ほかの貴族の言うことを鵜呑みにするのではなかった。エルンストはスキル貴族のくせに仕事を選り好みし、私に言われるまでスキルを使わない無能だったはずなのに……!
「ご決断を、陛下」
急かす執事を睨みつけると、ドアが激しくノックされた。王がいる執務室だというのに、許されない行動だ。
執事がドアを開けると、使用人が転がり込んできた。
「たっ、大変です陛下! 癒しの聖女様が、スキルで令息を傷つけております!」
「……は?」
聞こえてきた言葉が信じられず、使用人を見る。使用人の服はよれており、顔から汚らしく涙を流している。咳き込みながら、私の許しも得ずに話し出した。
「癒しの聖女様は、我が国にいる聖女は今回召喚された4人だけだと思っていたようです! ほかにも聖女様がいると知った途端に暴れだし、ごっ、ご令息の体が……!」
「なっ、なんだ!? 何があった!」
青ざめた使用人は、ぶるぶると震えながら口を開いた。
「癒しの聖女様がご令息の体にふれた途端、くっ、苦しみだし、体が風船のように膨らんで……! 膨らんだ体には血管が浮き出て……目は奇妙に飛び出し、とても人間には見えない有様に……」
「……生きているか?」
「はい。息はありますが、聖女様が暴れて近付けません」
言葉もなく、体が椅子に崩れ落ちた。足が震えている。
癒しの聖女が持つスキルは、癒しではなかった? いや、きちんと確認した。スキルは一人につき一つ、聖女でも例外はない。
「癒しのスキルで、どうやって人の形を変えたのだ……?」
呆然とつぶやくと、またドアが激しくノックされた。執事が素早くドアを開ける。
「癒しの聖女様がお倒れに! スキルを使いすぎたためかと! 医者や治療できるスキルの持ち主が向かっております」
「っならぬ! 癒しの聖女を回復させてはならぬ! 醜くなった令息の詳細がわかるまで放置しておけ!」
「……かしこまりました」
……なぜ。なぜこうなった……?
召喚することで命を救ってやったというのに、今回の聖女は誰も私に感謝しない。誰も役に立たない。
どうすればいいのだ! これで令息の親から私に苦情が来る。私を支持しなくなったらどうするのだ! 反乱でも起こされたら!
「どうすればいい……」
思わず頭を抱えるが、答えてくれる者は誰もいなかった。
「申し訳ございません。結局、金庫を開ける手順を思い出せる者はおりませんでした」
「どこかに手順を書いておらぬのか? 本当に!?」
「陛下が禁じられましたので……」
おろおろしながらも、はっきりと私にも非があると伝えた執事を睨みつけるが、執事は深々と頭を下げたまま私の視線には気付かなかった。
罰してやりたいが、この執事がいなければ仕事が進まぬ。寛大な心で許してやったというのに礼すら述べず、執事は続けた。
「南領の魔物被害、西領の干ばつ、東領の水害の対策については、各領主様から何度も催促が届いております。領主様に事実を伝えなければ、支持を失います」
「事実を知れば、どちらにせよ失う!」
「非を認めて、謝罪なさるのがよろしいと存じます。陛下が頭を下げるのです、許さない貴族はおりません」
「私が頭を下げるだと……!?」
強烈な怒りが体中を駆け巡る。激情のまま立ち上がって机をたたくと、手がじんと痛んだ。
「私が! この国を統べるこの私が! 頭を下げるなど許されない!」
「有り得ない行いをするからこそ、陛下の器の広さが知れ渡るのです。陛下の素晴らしさが民にまで伝わるでしょう。聡明な陛下ならば、どうなさるのが一番かおわかりかと」
イライラと椅子に座る。
領主からの催促がこれ以上くるのはまずい。だが、担当していたのがエルンストなので、詳細がわからない。エルンストの補佐をしていた者達は次々と辞職し、残ったのは無能だけだった。そやつらは遊び惚けて仕事をしていなかったから城から追い出したが、そうすると誰も残らなかった。
私は、エルンストから詳しい報告は聞いていなかった。もう少し進めば私が取り仕切る予定だったので、その時に詳しいことを知る予定だったのだ。
「金庫さえ開けられれば……!」
そこにあるものさえ見れば、私もすぐ取りかかれる。この政策に失敗は許されないのに。
私は王だ。王とは、何でもする下働きのような存在ではない。人に仕事を割りふるのが仕事なのだ。
私を探るエルンストが目ざわりだからといって、ほかの貴族の言うことを鵜呑みにするのではなかった。エルンストはスキル貴族のくせに仕事を選り好みし、私に言われるまでスキルを使わない無能だったはずなのに……!
「ご決断を、陛下」
急かす執事を睨みつけると、ドアが激しくノックされた。王がいる執務室だというのに、許されない行動だ。
執事がドアを開けると、使用人が転がり込んできた。
「たっ、大変です陛下! 癒しの聖女様が、スキルで令息を傷つけております!」
「……は?」
聞こえてきた言葉が信じられず、使用人を見る。使用人の服はよれており、顔から汚らしく涙を流している。咳き込みながら、私の許しも得ずに話し出した。
「癒しの聖女様は、我が国にいる聖女は今回召喚された4人だけだと思っていたようです! ほかにも聖女様がいると知った途端に暴れだし、ごっ、ご令息の体が……!」
「なっ、なんだ!? 何があった!」
青ざめた使用人は、ぶるぶると震えながら口を開いた。
「癒しの聖女様がご令息の体にふれた途端、くっ、苦しみだし、体が風船のように膨らんで……! 膨らんだ体には血管が浮き出て……目は奇妙に飛び出し、とても人間には見えない有様に……」
「……生きているか?」
「はい。息はありますが、聖女様が暴れて近付けません」
言葉もなく、体が椅子に崩れ落ちた。足が震えている。
癒しの聖女が持つスキルは、癒しではなかった? いや、きちんと確認した。スキルは一人につき一つ、聖女でも例外はない。
「癒しのスキルで、どうやって人の形を変えたのだ……?」
呆然とつぶやくと、またドアが激しくノックされた。執事が素早くドアを開ける。
「癒しの聖女様がお倒れに! スキルを使いすぎたためかと! 医者や治療できるスキルの持ち主が向かっております」
「っならぬ! 癒しの聖女を回復させてはならぬ! 醜くなった令息の詳細がわかるまで放置しておけ!」
「……かしこまりました」
……なぜ。なぜこうなった……?
召喚することで命を救ってやったというのに、今回の聖女は誰も私に感謝しない。誰も役に立たない。
どうすればいいのだ! これで令息の親から私に苦情が来る。私を支持しなくなったらどうするのだ! 反乱でも起こされたら!
「どうすればいい……」
思わず頭を抱えるが、答えてくれる者は誰もいなかった。
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