平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ

文字の大きさ
29 / 190
1-5 交流

第26話 臨時パーティー 1

しおりを挟む

「ラークピラニー退治、あたしと一緒に行かないかい?」

 彼女の名は"ビビット"。

 女性ながら、装備している大盾に相応しい筋肉質なたくましい体つきで、姉御と呼ばれるのが似合いそうな、ベテランソロ冒険者。

 俺やロングのソロ活動と違い、自分をするという立ち回りを見せる人物だ。

 盾役は、大盾を維持し続ける筋力や攻撃を耐え凌ぐ体幹等、身体に恵まれないと役割として満足に動けない為、就ける人間が限られる。 

 そんな少数派の中の一人で、特定のパーティーに席を置くことなくソロ活動をしているのがビビットだ。

 彼女のようなベテランに多く──盾役タンクは特に──見られる働き方で、新人の面倒を見る為の者、欠員の出たパーティーに助太刀する者、あるいは人間関係に煩わしさを感じる性分の者が選択するやり方がレンタルと言われる。

 タンクと言えば"ロット"を連想するが、『少数派のタンクを独占するな』とやっかみも多い中で、パーティーを組んでいる彼は稀な存在だ。

 常にパーティーで行動する分、メンバーとの連携の練度が他のタンクと段違いなので、未知の緑翼が一目置かれる理由の一つに彼の存在が大きいだろう。

「ビビットさん、おはようございます。お騒がせしてすみませんでした」 「ホホーホ(ナカマ)」

「気にすんなよヤマト!──お、リーフルちゃんは今日も愛らしいねぇ!……それに、あいつらにはあたしもみんなも辟易してたんだ。いやぁ~スカッとしたよ!」

 ギルド内でしか会った事は無いが、毎朝顔を合わすのでそこそこ親交がある。

 特にリーフルの存在が大きく、ビビットはリーフルにご執心のようだ。
 
「はじめましてっす! 自分ロングって言います、ヤマトさんに面倒見てもらってるっす!」

「大袈裟だよ。少しアドバイスしただけだよね」

「そんなことないっす! 今回も命拾いしましたし、感謝感激っす!」
 
「あたしはビビット。普段は助っ人として色んな奴の手伝いをしているよ」

「その大盾すごいっす──かっこいいっす!」

「ありがとね、があたしの役割さ」

 親指を立て背負った大盾を指差すその様は、とても頼りになりそうな堂々たる態度だ。

「話はなんとなく聞いていたよ、折角だしどうだい? あたしら三人でラークピラニーのクエストに行ってみないかい?」

「俺達三人ですか? 確かにビビットさんが居れば滅多なことは無いと思いますけど、今日は他の助っ人のご予定は?」

「今んとこ声はかかってないね。それにロング、経験を積みたいんだろ? ベテランタンクのあたしに、慎重派のヤマト、二人があんたをサポートするんだ、これ以上のびのびと出来るパーティーは他に無いと思うよ?」

 確かにビビットの言う通り、色々と経験を積んで、ロングには生存率を高めてほしい。

 何より俺も学ぶことが多そうだ。

「間違いないっす、ヤマトさんが居れば安全っす! ビビットも超頼りになりそうっす!」

「だろう? だから三人で行こうよ──おっと、リーフルちゃんもね」

 ビビットがリーフルにウインクをする。

「そうですね。俺もまだ一回しかラークピラニーと戦ったこと無いですし、三人で行きましょうか!」

「行くっす!」 「ホ(イク)」

 こうしてラークピラニー討伐の仕事クエストを受けた俺達三人と一匹は、臨時のパーティーを組み、街の南東方面にある小さな湖へと向かった。



「自分、ヤマトさんに案内してもらった時以来二回目っす!」

「なんだ、一度来てるのかい」

 湖としては小さいながらとても麗しい景色で、対岸まで100メートルあるかないか程度でそれほど大きくは無く、澄んだ水と気化熱でひんやりとした空気が辺りを包む、サウド周辺に広がる草原において随一の絶景ポイントだ。

 木こり達が水分補給に立ち寄ったり、水位を確認し川の氾濫の兆候を調べたりと、意外と人が訪れる事の多い場所なので、魔物の存在は脅威となる。

 この湖は森を越えた先にある山岳地帯から続く川の終着点となっており、ラークピラニーは上流から下ってくる。

 なんでも川を遡上し産卵、数を増やし再びこの湖に戻ってくるそうだ。

 普通の魚と違い、ラークピラニーはである為、出来るだけ数を増やさないよう、治安維持の為定期的に討伐依頼が出されている。
 
「早速だけど。大きめの影が見えるよね? あれがラークピラニーだよ。既にこちらに気付いて俺達を狙ってるみたいだね」

「流石ヤマト、噂通りの慎重さだね。安心しなロング、あいつの射程圏内に入りさえしなければ、飛び上がって来る事はないさ」

「ここに来る途中ラークピラニーについて教えて貰ったっすけど、影しか見えてないのに、思ってたより大きくて怖いっすね……」

 ロングが驚くのも無理はない。

 ラークピラニーは名前から連想されるように、ピラニアに似た魔物で、大きく鋭く尖った歯を持ち体は縦に平たく、全長1~2メートル、体高1~1.5メートル程に成長する、何人もの犠牲者を出したこの湖きっての暗殺者だ。

「事前知識が無い人は水辺に近付いたが最後、不意を突かれ襲われる。でも俺達には知識とビビットさんが居るから大丈夫だよ」

「おや? 随分あたしの事を買ってくれてるみたいだね」

「冒険者としてな時点で優秀なのは明らかです。それにビビットさんの役回りを考えれば、レンタルなのに今迄生き残ってきているのが証明で、連携が上手く行かない場合でも何とか出来る実力があるって事は、実際に戦闘を目にしなくてもわかりますよ」

「なるほどっす」 「ホホーホ(ナカマ)」

「リーフルちゃ~ん! あんたもあたしを褒めてくれるのかい? 街に帰ったら高級肉を買ってあげようね~!」

「はは……」 「おぉ……っす」

 リーフルが可愛がられるのは嬉しいが、ビビットの見た目と様子とのギャップにはまだ慣れないな……。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜

自来也
ファンタジー
人間が好きすぎて魔界を追放された元・魔王。 世界を救って燃え尽き気味の元・勇者。 派手に振られて落ち込んでいる精霊王。 逆セクハラが過ぎて追放された千年狐。 可愛すぎて人間が苦手になった真竜。 戦場のトラウマで休養中の傭兵――。 そんな“最強だけどちょっとズレてる”面々が集まる、 異世界のちょっと変わった施設《弱者の庭》。 異世界転生してきた平凡な青年・アルキは、 このゆる〜い最強たちの管理人に任命されてしまった。 日常はバタバタだけど、どこかあたたかい。 そして――住人が一人、また一人と“卒業”を迎えていく。 傷ついた彼らと過ごすのんびりスローライフ。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった中学生、朝霧詠無。 彼の魂はそのまま天国へ……行くことはなく、異世界の住人に転生。 ゲームや漫画といった娯楽はないが、それでも男であれば心が躍るファンタジーな世界。 転生した世界の詳細を知った詠無改め、バドムス・ディアラも例に漏れず、心が躍った。 しかし……彼が生まれた家系は、代々ある貴族に仕える歴史を持つ。 男であれば執事、女であればメイド。 「いや……ふざけんな!!! やってられるか!!!!!」 如何にして異世界を楽しむか。 バドムスは執事という敷かれた将来へのレールを蹴り飛ばし、生きたいように生きると決めた。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

処理中です...