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俺たちの幸せ
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「きょおくん、このうどん味がしない」
陽向を連れて家に帰ってから数日。
怪我は大したことなかったものの陽向は翌日から熱を出し学校を休むことになった。
料理なんてしたことがなかったが、食欲がないという陽向のために俺は冷蔵庫にあったうどんを茹でてみた。
「え、まじで?」
「何入れたの?」
「冷蔵庫に入ってた出汁の粉みたいなやつと醤油」
「砂糖とか・・・・」
「うどんて砂糖入れるの?甘くなっちゃうじゃん」
「・・・・も、いいや、俺がやる」
陽向はとことことキッチンへ向かうと、冷蔵庫から調味料を取り出し鍋に残っていたうどんに入れ始めた。
「・・・・こんなもんかな。きょおくんて頭いいくせに料理とか全然だめだよね」
「う・・・・陽向は、何でもできるんだな」
「・・・・ずっとお父さんと2人だったからね。お父さんも仕事以外何もできなくて・・・・。よくまずいカレーとか焼きそばとか食べさせられたな。あんまりまずいから自分で作ろうと思ったの」
そう言って陽向はふふ、と笑った。
その笑い方はいつもと同じようで少し違って見えた。
あれ以来、陽向は無口だ。
体調が悪いせいもあるだろうが、どこか俺との会話を避けているような気がしていた。
「・・・・なあ、陽向・・・・話したくないかもしれないけど、お前の‥‥お父さんのこと」
本当のことを知ってしまった以上、陽向と今までのような関係は続けられない。
それはいつか陽向が自分の父親がどうして死んだかを知った時、そして自分と父親の関係が間違っていたと知った時、間違いなく自分を責めるだろうと思ったから。
それでも、俺は陽向が好きだけれど。
その俺との関係まで間違いだったと自分を責めないように。
違う形で俺の愛情を伝えておきたかった。
「・・・・・思い出したよ、俺」
陽向が静かに言った。
「え?」
「あの日・・・・お父さんはドライブに行こうって言ったんだ。夜、2人で車に乗って・・・・海を見に行こうって。海に向かって走ってる時、お父さんはお母さんの話をしてくれた。きれいで明るくて、自由が好きで・・・・。お母さんが出て行ったのは、自由でいたいからだって。だから・・・お母さんを自由にしてあげようって言ったんだ。恨んじゃダメだって。でもお父さんはお母さんがいないと生きていけないから・・・・だから、陽向はずっとお父さんと一緒にいてくれって」
陽向は淡々と語った。
まるで他人事のように・・・・
「俺、いいよって言ったよ。お父さんが大好きだから、ずっと一緒にいるよって。お父さん、ありがとうって。お前を愛してるって。それから―――ごめんって」
「ごめん・・・・?」
「今までごめんって。お父さんのしたことは間違ってたって。俺はお母さんじゃないのに・・・・お母さんはもうお父さんのそばにいないのに、それを認めたくなかったって。本当にごめんって言ってた」
「それで・・・・」
陽向はおかしそうに、でも悲しそうに笑った。
「なんで謝ってるのかわからなかった。お父さんは何も悪くない。ずっと俺のそばにいて、俺を幸せにしてくれてたんだから。なんで謝るんだろうって思ったよ。そう思った瞬間―――車が海に突っ込んだんだ」
「・・・・陽向・・・・」
「次に気づいたときは病院にいて・・・・きょおくんのお父さんが俺を見てた。何も覚えてない俺に、俺のお父さんは車の事故で亡くなったって。それで・・・・良ければ自分の子供にならないかって。自分にも息子がいるけど、母親が亡くなって寂しい思いをしてるからその息子の弟になってほしいって言われたんだ」
「父さんが、そんなこと・・・・」
「俺、訳が分からなくて。お父さんが死んじゃったこともまだ信じられなくてどうしたらいいかわからなかったんだけど、児童保護局の人が来てきょおくんのお父さんの子供にならなければ施設に行くことになるって言われて、それは嫌だなって思って・・・・それで、ここに来ることにしたの」
そこまで話すと、陽向は俺を見てにっこりと笑った。
「来て、良かった。俺、きょおくんの弟になれて・・・・幸せだよ」
「陽向・・・・俺も・・・俺も、陽向が弟になってくれて幸せだよ。だから―――」
「俺が・・・・俺とお父さんがしてたことは・・・・間違ってたってわかってる。でも・・・・認めたくなかったんだ。お父さんは俺を愛してくれた。誰が何と言おうと、俺とお父さんは・・・・・愛し合ってたんだ」
「・・・・・そうだな」
形はどうあれ、陽向の父親が陽向を愛していたのは間違いなかった。
陽向を連れて家に帰ってから数日。
怪我は大したことなかったものの陽向は翌日から熱を出し学校を休むことになった。
料理なんてしたことがなかったが、食欲がないという陽向のために俺は冷蔵庫にあったうどんを茹でてみた。
「え、まじで?」
「何入れたの?」
「冷蔵庫に入ってた出汁の粉みたいなやつと醤油」
「砂糖とか・・・・」
「うどんて砂糖入れるの?甘くなっちゃうじゃん」
「・・・・も、いいや、俺がやる」
陽向はとことことキッチンへ向かうと、冷蔵庫から調味料を取り出し鍋に残っていたうどんに入れ始めた。
「・・・・こんなもんかな。きょおくんて頭いいくせに料理とか全然だめだよね」
「う・・・・陽向は、何でもできるんだな」
「・・・・ずっとお父さんと2人だったからね。お父さんも仕事以外何もできなくて・・・・。よくまずいカレーとか焼きそばとか食べさせられたな。あんまりまずいから自分で作ろうと思ったの」
そう言って陽向はふふ、と笑った。
その笑い方はいつもと同じようで少し違って見えた。
あれ以来、陽向は無口だ。
体調が悪いせいもあるだろうが、どこか俺との会話を避けているような気がしていた。
「・・・・なあ、陽向・・・・話したくないかもしれないけど、お前の‥‥お父さんのこと」
本当のことを知ってしまった以上、陽向と今までのような関係は続けられない。
それはいつか陽向が自分の父親がどうして死んだかを知った時、そして自分と父親の関係が間違っていたと知った時、間違いなく自分を責めるだろうと思ったから。
それでも、俺は陽向が好きだけれど。
その俺との関係まで間違いだったと自分を責めないように。
違う形で俺の愛情を伝えておきたかった。
「・・・・・思い出したよ、俺」
陽向が静かに言った。
「え?」
「あの日・・・・お父さんはドライブに行こうって言ったんだ。夜、2人で車に乗って・・・・海を見に行こうって。海に向かって走ってる時、お父さんはお母さんの話をしてくれた。きれいで明るくて、自由が好きで・・・・。お母さんが出て行ったのは、自由でいたいからだって。だから・・・お母さんを自由にしてあげようって言ったんだ。恨んじゃダメだって。でもお父さんはお母さんがいないと生きていけないから・・・・だから、陽向はずっとお父さんと一緒にいてくれって」
陽向は淡々と語った。
まるで他人事のように・・・・
「俺、いいよって言ったよ。お父さんが大好きだから、ずっと一緒にいるよって。お父さん、ありがとうって。お前を愛してるって。それから―――ごめんって」
「ごめん・・・・?」
「今までごめんって。お父さんのしたことは間違ってたって。俺はお母さんじゃないのに・・・・お母さんはもうお父さんのそばにいないのに、それを認めたくなかったって。本当にごめんって言ってた」
「それで・・・・」
陽向はおかしそうに、でも悲しそうに笑った。
「なんで謝ってるのかわからなかった。お父さんは何も悪くない。ずっと俺のそばにいて、俺を幸せにしてくれてたんだから。なんで謝るんだろうって思ったよ。そう思った瞬間―――車が海に突っ込んだんだ」
「・・・・陽向・・・・」
「次に気づいたときは病院にいて・・・・きょおくんのお父さんが俺を見てた。何も覚えてない俺に、俺のお父さんは車の事故で亡くなったって。それで・・・・良ければ自分の子供にならないかって。自分にも息子がいるけど、母親が亡くなって寂しい思いをしてるからその息子の弟になってほしいって言われたんだ」
「父さんが、そんなこと・・・・」
「俺、訳が分からなくて。お父さんが死んじゃったこともまだ信じられなくてどうしたらいいかわからなかったんだけど、児童保護局の人が来てきょおくんのお父さんの子供にならなければ施設に行くことになるって言われて、それは嫌だなって思って・・・・それで、ここに来ることにしたの」
そこまで話すと、陽向は俺を見てにっこりと笑った。
「来て、良かった。俺、きょおくんの弟になれて・・・・幸せだよ」
「陽向・・・・俺も・・・俺も、陽向が弟になってくれて幸せだよ。だから―――」
「俺が・・・・俺とお父さんがしてたことは・・・・間違ってたってわかってる。でも・・・・認めたくなかったんだ。お父さんは俺を愛してくれた。誰が何と言おうと、俺とお父さんは・・・・・愛し合ってたんだ」
「・・・・・そうだな」
形はどうあれ、陽向の父親が陽向を愛していたのは間違いなかった。
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