転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
864 / 1,190
第三十一章 五歳の祝い

千六十話 年の瀬の炊き出し

しおりを挟む
 いよいよ、年の瀬になりました。
 今日は、この後辺境伯領恒例の年末の炊き出しを行います。
 朝から準備を整えて、みんなで教会に向かいます。

「じゃあ、僕は炊き出しの仕込みをやるから、リズも治療を頑張ってね」
「治療なら、リズにお任せだよ!」

 リズは、スラちゃんとともに元気よく手を上げていました。
 ミカエルとブリット、それにレイカちゃんの従魔の雲さんもいるから治療の手は十分に足ります。
 他の面々で、炊き出しの配膳を行う予定です。
 ちなみに、ブライトさんたちは年末年始は実家に戻っていて、エレノアたち王族も王都での年末の行事があります。
 なので、今日は僕たちで頑張ります。

「お子様も五歳になられて、ホーエンハイム辺境伯家も益々安泰ですね」
「いえいえ、まだまだ幼いのでこれからですわ」

 イザベラ様は町のご婦人とにこやかに話をしていたけど、この世界は危険なことや病気とかもあるから大人になる前に死んじゃうことも多いそうです。
 なので、こうして未来の当主が五歳になったことは、町の人にとっても喜ばしいことらしいです。

「「はい、どーぞー」」

 当の五歳になった双子ちゃんは、スラちゃんと抱いて治療を張り切っていました。
 町の人と積極的に交流するホーエンハイム辺境伯家の方針らしく、二人も頑張って治療していますね。
 治療をして褒められるのが嬉しいってのもありそうです。
 さてさて、炊き出しの準備もいい感じにできました。

「ソフィアさん、サンディ、イヨ、炊き出しの準備ができました」
「アレク君、ありがとうね」
「「配ります」」

 三人だけでなく、他の人も早速配膳を始めました。
 因みに年少のちびっ子たちは、アレクサさんとドラちゃんが面倒を見ています。
 もはや、ドラちゃんは奉仕活動時のベビーシッターですね。
 因みに、年末なのでちょっと豪勢な炊き出しになっています。

「ブルル!」
「あが?! な、何をする!」

 もちろんポニさんたちも周囲の警戒をしていて、犯罪者の襟首を噛んで兵のところに引きずっていきます。
 臨時で冒険者も警備員として雇っているけど、やっぱり年末は大忙しですね。
 もちろん寡婦や孤児なども保護していき、孤児院などで保護していきます。
 この辺の手順も確立されているので、順に対応していくだけですね。

 ボゥ!

「うお、フライパンから火が出たぞ!」
「いったい、どんな料理を作っているのだろうか?」

 因みに、僕は昨年に引き続き、あえて派手に見えるように料理を作っていきます。
 といっても、フランベをして肉の臭みを取るだけなんですけどね。
 いくら辺境伯領が暖かい地域とはいえ、風邪引きも多いので治療班も大忙しです。
 そんな中、こんな依頼が治療班に舞い込んできました。

「どうやら、寝込んでいて治療に来ることができない人がいるそうです。兵が対象者を確認しております」
「あら、それは大変。直ぐに対応しないといけませんわ」

 町を巡回していた守備隊員がイザベラ様に報告していたけど、急遽巡回治療班が結成されて動くことになった。
 といっても寝込んでいる人を治療できるレベルの治癒士の腕が必要なので、必然的に人選は決まっていった。

「じゃあ、行ってくるね」
「ヒヒーン」

 リズがブッチーに跨って騎馬隊と共に出発したけど、念のためプリンがリズの護衛として一緒についていきました。
 まあ兵も一緒に行くし、その兵が先行して確認するから大丈夫でしょうね。
 僕はというと、どんどんとお肉を焼いていきました。

「うーん、たまには料理しないと勘が鈍るわね」
「ええ、そうね。たまにはやらないとね」
「お願いだから、大惨事を引き起こすのはやめてくれ……」

 破壊王のお二人が何やら不穏なことを言っていたけど、ジンさんが全力で引き留めていた。
 なんとか二人を治療班の護衛に戻したけど、デス料理を住民に振る舞うのだけはやめて欲しいです。
 こうして、なんだかんだあったけど、無事に年末の奉仕活動も終了しました。
 巡回治療に行っていたリズも夕方には帰ってきたし、無事に治療を終えて何よりです。
 後片付けをして、解散となりました。

「今日は、焼肉ですよ!」
「「「わーい」」」

 頑張ったみんなには、ご褒美で美味しい焼肉が振る舞われました。
 やっぱり、美味しいご飯は嬉しいよね。
 こうして、色々あった一年も終わりを迎えます。
 来年はいよいよ学園に通うから、今までとは違った生活になりそうですね。
しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。