転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第三十二章 新入生

千百七十四話 王城見学と怒られていた人

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 早速僕たちは、王城の玄関から一階に入った。
 意外と多くの市民が行き交っていて、クラスメイトは少し驚いていた。

「一階には、各種申請の受付があります。ですので、市民の方も多く利用されています。その他、税金の振込などにも対応しています」
「「「へえー」」」

 グロスター侯爵のおじいさまの部下が一階について説明しているけど、リズとエレノアも感心した声を上げていた。
 あなたたち、教室で張り切って説明すると言っていなかったっけ。
 市民といってもお店などをやっている人たちの申請が多いので、普通に暮らしている人はあまり来ることがないかもしれません。
 では、二階に上がってみましょう。
 僕たちは、階段を使って上がっていきます。

「二階には、主に貴族や官僚からの手続きや税金関連の受付があります。貴族は様々な申告が行われますので、こうして市民と申請窓口を分離しております」

 クラスメイトは頭が良い人が多いので、市民と貴族の受付窓口を分けた別の理由も理解していました。
 貴族の中には未だに市民のことを下に見ている人もいるので、受付が一緒だとトラブルを起こす可能性も出てきます。
 昔に比べると、貴族主義勢力はだいぶ大人しくなったんだけどね。

「お兄ちゃん、リズはこういう申請しなくていいの?」
「僕の屋敷は、チセさんたちが纏めて辺境伯様に報告しているから大丈夫だよ。税金も、辺境伯様にキチンと納めているよ」
「おお、そーなんだ!」

 仮に僕たちが王都に住んでいたら王城に色々な報告しないといけないけど、辺境伯領に住んでいるから報告は辺境伯様に行います。
 エレノアは、王家専属の官僚が報告しているけど。

「では、今度は三階に上がりましょう。三階からは、各部署の執務室が置かれております」

 三階から上の階は似たような構成になっていて、農務や商務などの各部署が置かれています。
 軍も出張所があるので、軍人のいるフロアもあります。

「ここは、リズもよく来たよ!」
「エレノアもなの」

 リズとエレノアは、ようやく元気を取り戻していた。
 毎年職員の中に悪い人がいないかと、特別調査班活動をしていたもんね。
 リズとエレノアは、特別調査班の活動の際に知り合った職員や貴族などと仲良くお喋りしていた。

「そっか、学園の一年生が見学に来ると聞いていたけど、リズちゃんたちだったのね。あの小さくて元気いっぱいだったリズちゃんも、もう学園に通う歳になった訳ね」
「えへへ!」

 受付のお姉さんに感慨深そうに言われて、リズも思わずニッコリです。
 特別調査班は、僕たちが小さい頃から活動していたもんね。
 クラスメイトは、そんな前から僕たちが王城の職員と知り合いだと知ってビックリしていました。
 今日は各部署の簡単な説明だけ行い、これで終了かと思いました。
 そうしたら、グロスター侯爵のおじいさまが、こんな事を言ってきました。

「さて、本来なら見学はここまでだが今日は特別にこの先にある宰相執務室を見学できる事になっておるぞ」
「「「おおー!」」」

 クラスメイトも思わずビックリしているけど、僕も初めて聞いたよ。
 とはいえ、機密書類とかの管理はしっかりしているし、普通に見学するだけなら大丈夫です。
 ということで、みんなで宰相執務室に向かいました。

 ガチャ。

「宰相、経費書類は直ぐに出すようにといつも言っているでしょう!」
「す、すまん!」

 ガチャ。

 僕が宰相執務室のドアを開けると、この部屋の主である宰相がシーラさんに滅茶苦茶怒られていました。
 いま宰相執務室に入るととても危険だと思い、僕は静かにドアを閉めました。

 ガチャ。

「あっ、アレク様、それに皆さんもせっかく来てくれたのに申し訳ありません」

 すると、ローリーさんが宰相執務室から出てきて僕たちに謝ってきました。
 ローリーさんは妊娠中で、少しお腹が目立つようになってきました。
 ローリーさんのこの言い方だと、シーラさんの宰相への説教はもう少し続きそうですね。

「おじいさま、日を改めた方が良さそうですね」
「うむ、儂もそう思う。いま、宰相執務室に入るのはとても危険じゃ」

 僕とおじいさまだけでなく、他の人の意見も一致しました。
 ということで、宰相執務室の見学は後日になりました。
 その代わりに、王城にある魔導エレベーターの体験をして僕たちは学園に帰りました。
 因みに、その後宰相は別の経費申請の提出が遅れていて更にシーラさんに怒られていたそうです。
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