10 / 10
10(完)
しおりを挟む
▽10
囁くような声を合図に、顔が近寄った。受け入れるように顔の位置を合わせ、瞳を閉じる。唇が触れた。なんどか繰り返すと、ぬるりとしたものが表面を舐める。
掻き分けるような動きに、ゆるりと口を開く。歯の間から、別の舌が滑り込んできた。ぬめった生き物のようなそれが舌を絡め取る。
「…………ン、……ぁ、ふ、…………ん、ッ……」
動けずに強張った舌が捏ね回され、悪戯を繰り返す生き物は舌裏を舐め上げた。柔らかい部分が押され、ずぐずぐとした気持ちよさの炎が灯される。
口内を全て嘗め回すように辿り、相手の唾液を含まされる。こくん、と飲み込むと魔力の波に痺れた。ぼうっと唇を押さえていると、いちどソファに降ろされ、リカルドは床に足を着けた。
伸びた腕が、また僕の身体を抱え上げる。傾きつつ重心を移動させて、彼の肩に掴まった。
「誘うのがうまいな」
「そう……?」
首を傾げていると、そのまま寝室まで運ばれた。階段を上る時に体重の負荷を軽くする魔術を使うと、楽しそうに一段一段を踏みしめる。軽快な音は、彼の心音に似ていた。
寝室は別棟の最も高い位置にある。大きな扉を開けた先は、リカルドの自室に比べて倍くらいの広さがあった。新品らしき大きな寝台がある以外は、家具も多くない。清潔感のある室内とは対照的に、窓の外には闇が忍び寄っていた。
真っ白なシーツの掛けられた寝台に降ろされ、きょろきょろと周囲を見渡す。
「ここ来た時に案内されたけど、いま見ても広いね?」
覆い被さってきた唇が、触れて離れる。照れから染まってしまった目元を隠すように指で撫でた。
「…………余裕だな?」
首元に近寄った口が開き、首筋に歯の先が当たって過ぎた。ぶわ、と周囲をアルファの匂いが取り囲む。
オメガが作る巣ではなく、首輪を掛けられた感覚だった。彼の手の内に踏み入っていく。強く当たられることがなくて気付かなかったが、相手はアルファだ。
持ち上がった顔、琥珀色の瞳は影のうちにあって昏い。普段は隠しきっているどす黒いものが、じわりと滲み出ているようだった。
「…………あ」
一段と体温が上がった。フェロモンを使って誘われているらしい。周囲に立ちこめる圧が、一斉に身体にのし掛かった。
口火を切ったのは、間違いなく僕だ。互いが互いを誘って、罠を絡め合っている。リカルドが寝台に乗り上がった。沈み込んだ部分が僅かに音を立てる。
大きな掌が胸元に指を入れ、く、と下に引いた。
「いっぺん抱いたら止まらないから。止めたきゃぶん殴って」
僅かに指が胸のあたりに当たっている。普段は見せない場所を、他人のゆびが這っている。どくどくと鳴る場所。通気性のある薄い服の下には、何も身につけてはいなかった。
無言で腕を伸ばし、高い場所にある首筋に縋り付く。すり、と相手の首筋に頬を寄せると、ごくん、と隣で喉が鳴った。
「いま。身体が熱いんだ。……肌が、ぞくぞくして。こんなの────よくない、って。分かってるのに……」
他人の唇が首筋を辿る。唇が開いて舌が覗くと、ぬめるような感触が皮膚の上を滑る。くすぐったさの奥に、ちらつく炎があった。
服越しに掌が胸に当たる。撫でさする動きはゆったりとしていて、ねちっこい。
「俺は嬉しい。発情期にかこつけて、ずっとロシュと過ごせて。こうやって、身体を任せる対象にしてくれる」
器用な指先が釦を外す。
自らも、と指を持ち上げるのだが、それよりも早く彼の指が服の前を開ききってしまった。日に当たらない場所の肌が、自分以外の人の視線に晒される。目の下が熱く、赤く染まってしまっているだろう事も分かってしまう。
黙り込んでしまった番候補に、顔を上げて口を開く。
「な、なに……!? 身体、へん……?」
「いや。綺麗だ。……感動と興奮が一気に押し寄せてる」
「…………?」
首を傾げると共に、服が落ちて腕のあたりに溜まる。導かれ、彼の脚の間に身体を入れると、ちゅ、ちゅ、と首筋にキスが落とされた。匂いを擦りつけるように強く吸われ、赤く鬱血する。
すう、と息を吸う度に、濃い匂いにくらくらした。度数の高い酒でも煽ったみたいだ。
「かーわいい」
彼がどこを見てそう言ったのか、視線の先を追って分かった。止める間もなく、指先が突起を捕らえる。指の腹でくるりと円を描かれると、むず痒いものが生まれる。
ふ、と細切れの息を吐き出す。何度潰されても跳ね上がる様を楽しむように、彼は色づいたそこを指先で弄った。
「…………ゃ、わッ……!」
おもむろに開いた唇が、先端を食む。唇に挟まれたそれをちろりと舌が舐めた。じわ、と唾液に濡れた場所に、更にぬめった感触が押し当てられる。
「……ン、っう。……ぁ、は…………あ」
ちゅう、と吸うように力が加えられ、べろり、と分厚い舌で押し潰す。慎ましくしていたものが淫らに色を濃くし、形まで変わっていく。胸元に埋まる頭を抱き、その髪に指を埋めた。
口が窄められ、強く吸われた。
「…………ッ!」
引いた波が押し寄せるように、じんじんとした痺れが追ってくる。宥めるように舌の腹で転がし、また味わうように絡み付く。ちゅくちゅくと響く水音は、目を閉じても止まない。
感覚が変わる度に指先をびくつかせ、ひくん、と喉を鳴らした。
「リカルド……。それ、もう……っ」
「…………。もう片方?」
「ちが……!」
指で弄っていた方へ唇が移ると、空いた方は指先で捏ねられた。逃れられていた方まで唾液に塗れ、形を変えられてしまった。
胸を弄っていた唇がそのまま、胸の中央から腹へと下りる。
肉の溜まった柔らかい部分に舌が這った。腹から腰を撫でる手は、皮膚の下を探るように丁寧に触れられていく。そこまで丹念にしなくても、と思いながら、途切れる息をこぼし続けた。
服の下で、持ち上がっている熱がある。寄せられている顔の近く、どうしたら避けて貰えるのかと悩んでいると、リカルドが顔を上げた。
「…………あのさ」
「……ン、うん」
「この発情期のために買ったもので、断じて、他の相手がいるわけじゃないから」
「…………?」
首を傾げると、身を起こしたリカルドが僕の腕を放させた。
部屋の端にある棚から、小さな瓶を持ってくる。寝台で蓋を取り、ひくつかせる僕の鼻先に瓶の口を寄せてくれる。中身から匂いはしなかった。
瓶の縁をなぞって付着した液体に、言葉の意図をようやく悟る。
「変なものは入ってない。滑りを良くするだけ」
キュ、と蓋が閉じられた。
「……そか。食べ物とか、日用品とか、も。色々、ありがと」
腕のあたりに溜まった裾を摘まみながら、二人して視線がすれ違う。寝台の上にいて尚、学生時代の恋愛のようなことをやっているのが気恥ずかしかった。
顔を上げられずにいると、前髪を持ち上げられ、額にキスが落ちる。顔を持ち上げると、唇が塞がれた。見開いた瞳をとろりと溶かす。
流し込まれている魔力が同調して、ぞくぞくと感度を上げていく。
「下、触っていい?」
「あ……ぬ、脱ごっか……?」
下の服に手を掛けると、リカルドは迷うように視線を巡らせる。なぜ迷うのか理由が分からず、目を白黒させた。
「リカルド……?」
「悪い。……どっちがいいか迷った。脱いでくれるんだよな?」
念押しされてしまえば、頷く他ない。脱ぎ始めて気付いたのだが、視線がじっとりと動きを追いかけている。熱く、粘つくような眼差しにびくびくと身体を震わせながら、下の服を脱ぎ落とす。
上の服も腕に引っかかった程度で、前は隠れていない。裾を引っ張って隠しても、前の毛は覗き見えてしまっていた。
ぺたん、と座り込むと、リカルドは僕の脚を持ち上げた。じわじわと外に向けて広げると、股の辺りが露わになった。
彼は瓶の中身を掌に広げ、指先を茂みへと潜らせる。指が動く度、赤毛が指の先に絡み付いた。温度を変えつつある芯を、指先が捕らえる。
「ひぁ……!? あッ……や…………!」
つい、と挟み込んだ指が根元から先端までを辿り、大きな手で握り込まれる。ぬめりを帯びた手は、音を立てながら全体を包み込んだ。
ずっ、ずっ、と上下に擦られる。
「……ン、く……ぅ。ぁ、あン…………ふ、くァ……」
感触による快楽を与えられているのもそうだが、粘膜を擦る指が内部と近い。唇を重ねたときに覚えたあの快楽の兆しが、更に高まったまま刺激された。
ぐちゅぐちゅと耳を犯され、指の丸い部分が先端を擦っては過ぎる。いつの間にか、潤滑のために足された液体以外の物が混ざり、中央から快楽を零していた。
「あ、ひぃ……。……イ、……ちゃ……ッ!」
こぷり、こぷりと雫を垂らしては悲鳴を漏らす。さっきまで大人しくしていたものをぐちゃぐちゃにされながら、掻き乱すように唇を奪われた。引こうとした身を追い、舌が唇を舐める。
「ぁ……ふ、……く、ン…………!」
べ、と伸びた舌が唇の膨れた部分を押した。登り詰めるはずだった熱は離れた指によって叶えられず、こぽこぽと煮立つ灼熱が岩の下に閉ざされた。
物欲しげな表情をしていたのか、リカルドは唇で弧を描く。
「……すぐやるよ。待ってな」
「な……ッ!」
含みを察してしまい、ぱくぱくと口を開いては閉じる。脚を引かれ、うつ伏せに寝台へと倒される。
尻の上にはなんの遮るものもない。まだ引っかかっている上着の裾を伸ばそうとしたが、背後からぺろりと捲られてしまった。
わああ、と声を上げるのだが、面白そうな笑い声が響くだけだ。
「ここ触らないと、怪我するからな」
尻たぶを撫で、揉むように指を食い込ませる。他の部位に比べて肉付きのいいそこは、押されるがまま、むっちりと指全体を受け止めた。
無言で尻を触り続ける指を、羞恥心に塗れ、声を漏らしながら耐える。
「…………しつこ、い……! ぁ……やだ……ッ!」
ずり、と前へ移動するが、距離を詰められた。
シーツの上に放り出されていた小瓶が持ち上げられ、尻の谷間の上で傾けられる。とろりとした液体が皮膚の上を滑っていった。液体は綺麗に滑り落ち、下の毛まで絡み付く。
指先が狭間へと宛がわれた。つ、と滑って、窪みを探り当てる。
「ヒ…………ッ、ぁ!」
ぬめりを帯びた指は容易く奥へと潜り込んでしまう。きゅう、と締め付けた動きにたたらを踏むが、拘束が解けるとまた内壁を探り始めた。
ひたひたと内側を探るように触れていく。表面を触られていた時と違ったぞわぞわが背筋を伝った。シーツを握りしめ、さりさりと膝で布を掻く。
身体の内側を明け渡す怖さと共に、未知の悦さへの期待がある。
「…………ン。……ふ……っく」
ぐぷぷ、と勝手を掴んだ指が侵入りこみ、圧迫感が増す。ふ、と熱くなった息を漏らし、指先が奥を探ることを許した。
背後で、リカルドの声が漏れる。指が曲がり、彼の指の丸いところが、捕らえた部分を押し込んだ。
「────ッ、ぁ!」
知らずに蓋をしていた快楽が、腹の奥からぞくぞくと鎌首をもたげる。ずぐん、ずぐん、と響くような刺激にしびれて、反響が続いた。喉を絞って呼吸を繰り返していると、場所を覚えた指はまた同じところを擦った。
「……ぁ、ひ……ン! ……ぁあ、あ……っ、ん…………うぅ……」
白い波の中で藻掻き、身体を串刺しにする指から逃れようと動く。空いていたはずの腕が、足首を掴んだ。引き抜かれかけていたはずの指がずぶずぶと潜り込み、窘めるように同じ場所を抉る。
「ぁあ、ああ……ッ! ……くう、……ん……ぁあ、あっ、ひ!」
脚を持ち上げられ、身体が傾ぐ。
潜り込んだ指先は更に滅茶苦茶に押し込み、足掻くほどに刺激は強くなる。ひくん、と喉が短く痙攣した。指がぱかりと開き、肉輪がぽっかりと開く。すう、と空気が通った。
具合を確かめられている。高まった羞恥に涙が浮き、崩れ落ちた布の上に擦りつけると染みができた。
「…………ひ、っく。……ぁ、……うあ……」
液体が足され、こぷ、と粟立つまで指が抉る。奥に突き入って、肉縁が捲れ上がって泡立つほど掻きだして、そしてまた潜り込む。
水音が響き、掻き消すように嬌声が鳴る。制止の声は届かず、宥められながらも指は抜かれない。やがて、指の節くれ立ったところが内側を押し上げることすら、刺激に捉えられるようになる。
「気持ちいい……? よなぁ……、どろっどろだもんな……」
持ち上がった前を撫でられ、それでも、絶頂までには届かない。解放させてくれるつもりはないようだ。もし、解放があるとするなら。
腹の奥にこのアルファの雄を迎え入れて、滾るような子種を吐き出された、その時だ。
「……ぁ、は……。あぁ……ッ!」
きゅう、と奥を引き絞る。この男の股間で膨れているものを想像して、腹に突き込まれることを妄想して、この身体はただ歓喜した。布地に涎を垂らし、頭をいっぱいにしていた恥ずかしささえも忘れた。
指が後腔から引き抜かれる。空虚になったそこが、ぽっかりと空いてひくついた。
布地が擦れる音がする。背後にいる雄を、露わにしている音だ。
身体を丸めて、後ろを見た。下の服を引き下ろすと、そこから猛りきった男根がまろび出る。受け止められるのかと思えるほど長大で、湯気が立つほど熱い子種を溜めているもの。
リカルドが、はあ、と息を吐いた。
僕の視線に気付くと、見せつけるように雄を持ち上げる。先端を尻の間に擦り付けた。膨れた縁へと擦りつけると、ちゅぷちゅぷと濡れたもの同士が音を立てる。
お預けを食らわせるように、何度も押し付けては引く。すん、と啜り泣いた。
「……リカルド」
「うん?」
「…………いれて、くれないの……?」
掠れるほどの声は、彼にも届いたらしい。にい、と唇を持ち上げると、ぐぶ、と亀頭が輪を潜った。
「待たせてごめんな。やる、よッ……!」
「────!」
びくん、と背を撓らせる。きゅう、と後ろを引き絞った所為か、挿入はいちど止まる。ふ、と息が抜けた瞬間、ずぼ、と押し込まれた。
性急な動きに、内壁もみちみちと熱棒へと絡み付く。
「……ぁ、あッ……あ────! や、おもた……!」
「──っても、ロシュが絞って、ッ……から……!」
腰が掴まれ、逃げを打つ動作は押さえつけられる。上から体重を使って突き入られると、アルファの質量を知らない躰にも、肉杭は次第に埋まっていく。
そろそろ指先で探り当てられた場所に届く。その時、腰に強く指が食い込んだ。
「ここか」
「────ぁ、え?」
丸くぼっこりと膨らんだ場所が、ぐぷん、と狙った膨らみを押し上げる。目を見開いて、肩から寝台に崩れ落ちた。
「…………あ──ァ、ぁあああッ!」
「────は、ぁ」
獲物の動きが止まったのを良いことに、二度、三度と突き入る。がくがくと脚を震わせ、揺らされるがまま、過度な快楽を享受させられた。前はだらだらと涎を垂らしたまま、絶頂できずに悲鳴を零し続ける。
ふ──ッ、と獣の息づかいが聞こえる。牙を突き立てたまま、咀嚼はされない。
「リカルド……、も……う……?」
「……、ん。まだ」
身体の中の雄がまた内側を探り始める。指で辿り着いた場所よりも更に奥。ずりずりと太いものを滑り込ませ、内側の感触を探っている。腹の質量は増している。繋がった場所から重たい物が打ち込まれ、腹を押し上げている。
生ぬるい温度が腹の中にある。尻に当たる袋には子種が蓄えられ、放出を待ちわびていた。
「……ふ、く……。ぁ、あ…………」
長いこと、息と嬌声を漏らしながら身体を拓いていた気がする。先端が、こつん、と何かを探り当てた。軽く潜ろうと力が掛けられた瞬間、駄目なものだと理解する。
腹の奥の快楽は重くて長い。その場所を抉られる快楽を知りたくない。本能が警鐘を鳴らした。
「や……! やだ、そこ、は────! …………ァ」
ぼこり、と腹が膨らんでしまうかと思った。入らない筈の場所まで、届いてしまった。ぎちぎちと剛直を喰い締める。粘膜越しの接触は近すぎた。感触だけでなく、繋がった場所から魔力が雪崩れ込む。
体重が掛かって、尻の肉が潰れた。
「ちから、抜け、って……!」
「……ぁああッ、うあ、あ……。ぁあ、っく……」
小刻みに揺らされる度に、ずくんずくんと物慣れない快楽が襲ってくる。声を上げても、のし掛かられている身体は動けない。体重を掛けて奥の奥まで押し付けられ、膨らんだ半身から、だらだらと体液が零れる。
いやだ、そう言っても声は媚びるような響きを纏っている。薄い子種を胎ではしたなく啜って、質量のあるものを暴力的に押し付けられることに悦ぶ。
悲鳴と嬌声が混ざったような濁った声。僕もまた獣でしかなかった。
「あ、ひァ、あン……! ぁ、ふ、っく、うあぁ、あ、あ、あ」
「……っく、う……、ふ。は、ぁ……」
ずっ、ずっ、と引き抜いてはまた突き上げる。皮膚がぶつかる音が繰り返し聞こえる度、波のように悦びを引き出されては飲み込まれた。
抽送の度に奥をぐりり、と抉られ、その度に悶える。腰から下の感覚が薄くなり始めた頃、身体が倒れ込み、首筋に歯が当たった。
刃物でも押し当てられている心地だった。他人に弱点を委ねる恐怖と、造りかえられる期待に戦慄く。
「俺、は……間違いでも、お前以外を、……ッ、選びたくない……」
「ん。……うん……ッ! も、はなれる、の、やだ……!」
綺麗なままの首筋に、彼は最期にキスをした。
柔らかい部分を確認すると、ぐぐ、と皮膚に牙の先が食い込む。大量の魔力が流し込まれて、同調しているような心地だった。その場に固定されたまま、大振りに引かれた腰が叩きつけられる。
「ぁ────! ぁああッ、……ぁああああああぁぁぁン!」
奥へと固定して、鈴口から白濁が雪崩れ込む。魔力を含んだそれは、身体の中を塗り変えんと奥へこびり付く。腹の奥は燃えるようで、この一瞬で、番としての身体へ造りかわった事が分かってしまった。
圧迫する雄はじわじわと快楽を呼び起こし、絶頂の余韻を長引かせる。奥を押された刺激のままに、僕は前からぼたぼたと液体を垂らしていた。啜り泣くように悦さに震えながら、上からも下からも液体を撒き散らす。
首から牙が離れたのは、どれくらい経ってからだろう。まだ波が引かない躰から、ずる、と雄が抜け出る。
「ロシュ…………?」
心配そうな声に、寝台に倒れ込んだまま顔を向ける。掌が伸ばされ、頬へと添えられた。
「……たぶん。へいき」
へへ、と笑ってみせるが、声はがらがらだった。身体に触れられる度に、びくん、と跳ねる。繋がっていた後ろも、熱を吐き出した前も、他人が触れていた感覚がまだ残っている。
ぱく、と閉じない後腔がひくついていた。
休憩、と思いたかったのに、周囲にはアルファの匂いが満ちている。始めよりもずっと濃いにおいは、彼の気分が盛り上がったまま、という事を示していた。ちら、と視線を向けた彼の中心は、また形を変え始めている。
ぬるり、と濡れたままの肉棒が尻の間に挟み込まれた。背に掛かる息は熱い。なのに、まだ発情期は始まり、だ。
「手加減、してね……?」
「…………努力、は、する」
本当に努力をしたのか疑問に思いたくなるような所業を繰り返したリカルドだったが、発情期の後は落ち着きを取り戻し、僕の面倒を見てくれた。
結局、発情期前よりもふっくらとして仕事に戻った僕に、番は嬉しそうに引き続き世話を焼くのだった。
僕の引っ越しと同時期。母はジール家に関わりのある病院へと転院することになり、新しい治癒魔術を使った治療が受けられることになった。
二人で挨拶に行った時には、いつも以上にきちんとした身なりの母が、広くなった病室で出迎えてくれた。服装をきちんとしたリカルドは本当にどこぞの王子のようで、母の方が緊張しきっていた。ただ、喋り始めるといつものリカルドなので、母も会話が回り始める。
お父さんが生きていたらどんなに、という母の言葉には、リカルドの方が先に涙ぐんでいた。
その後の報告も受けるが、母は順調に回復しているようだ。
貸し出していたはずの実家は、いつの間にかジール家が借主になっていた。
物を置くところが欲しかった、と彼は言うのだが、その割には僕や母の承諾を細かく取っては、家の改修までしてくれている。
段差を減らし、手摺りを取り付け、生活の助けになる魔術装置が増えた家。母が戻った後のことを考えられているような気がするのは、果たして気のせいなんだろうか。
僕に関係して仕事も増えている筈なのに、リカルドは元々の仕事にも精力的に飛び回っている。ただ、綺麗な石を見つけた時には、時おり手元に残すようになった。いずれ、展示する場所を持ちたいのだそうだ。
『宝石の展示なんて、儲からないんじゃないの?』
そう言うと、リカルドは僕の頭をくしゃくしゃにする。
『俺がやりたいことだから、いいんだよ』
リカルドの番でありながらジール家に仕える魔術師、という微妙な立場になった僕だが、旦那様やオースティン様から頼まれる仕事が増えたものの、概ね変わりなく仕事を続けている。
その日も結界の補修に敷地内を回り、改修した術式を埋め込んだ。玄関先での作業を終えたあたりで、見慣れた姿が駆け寄ってくる。
以前と違って、よく皆から声を掛けられるようになった気がする。
「ロシュ」
「オースティン様、おかえりなさい。リカルドも一緒でしたよね」
「うん。リカルドもすぐ来るよ。…………まだ敬語なんだね」
オースティン様からは弟の番なのだから、と敬語を外すよう言われるのだが、雇用主であることには変わりなく、慣れないことを理由に延期させてもらっている。
「でも、あの。リカルドと番じゃなかった時の感覚が強くて……」
僕が少し引いた態度を取ると、このひとは決まってこう言う。
「じゃあ、もっと仲良くなろうね。ロシュも弟なんだから」
ふふ、と笑う姿は心の底から楽しそうで、兄弟仲が良くなり、会う度に戯れている様が微笑ましい。彼も番が欲しい、とは思っているようだが、今は弟と弟の番を構うので精一杯なのだそうだ。
背後から、兄を追うように番が駆け込んでくる。
「なーにやってんだよ兄貴。ロシュにばっか嬉々として絡みにいって……」
「…………? 私はリカルドにも嬉々として絡みにいっているよ?」
「それは知ってるから!」
やいやい言い合っている姿も、子どもの頃を取り戻しているみたいだ。以前よりもお互いに対話を臆さなくなった。
二人の会話が仕事の話に移行してしまい、僕は置いてけぼりになる。何だか寂しくて、リカルドの隣に寄った。こっそり手を伸ばし、腕を絡める。
びく、と腕を跳ねさせたリカルドは、僕を見下ろして眉を下げる。
「悪い。つい仕事の話まで……」
「ふぅん。そんなにオースティン様の方がいいんだ……?」
僕のゆるゆるになった口元を見て何かを察したらしいオースティン様は、僕と反対側の腕を抱き込んだ。
ふふ、と艶やかな笑みをわざとらしく浮かべてみせる。
「リカルドはお兄ちゃんだって大事だもんね……?」
「えー! どっちを選ぶの? リカルド」
明らかに態とらしさ全開なのだが、挟まれた本人は二人をうろうろと見る。恐らく、僕とオースティン様の双方を傷つけない言葉を必死で考えているらしい。
こういうとこ真面目なんだよなあ、とこっそり腕に顔を押し付けながら笑う。目の前の兄もまた、肩を震わせている。
二人の笑い方があまりにも分かりやす過ぎたのか、はっ、とリカルドが眉を跳ね上げた。
「…………俺、からかわれてるんだな?」
呆然とした言葉に、二人して堰を切ったように笑い出した。リカルドはオースティン様に文句を言うと、僕の肩を抱く。
頭をくしゃくしゃに撫でながら、お前なあ、と文句を言われた。
「番が一番大事! ……けど、兄貴だって大事に思ってるよ!」
くく、と口元を隠して笑い続けているオースティン様は、リカルドに引っぱたかれている。手を振って仕事に戻っていく兄は、最後までご機嫌だった。
リカルドは僕の手を引いたまま、別棟へと向かう。
僕の趣味で物が揃えられ始めた家は、リカルドの趣味ともまた違う色味を持ち始めている。彼は二人の家、だと言う。僕の家でもあるその場所を見回す度に、眩しくて思えて仕方がない。
玄関先で埃を落としていると、その最中にぎゅっと抱き込まれた。埋まった胸元から、番の匂いがする。いつも近くにある、安堵する匂いだ。
「ほんとに、ロシュが一番大事だから」
「うん。……ちゃんと、分かってるよ」
腕を伸ばして、首筋へとしがみつく。口づけをねだったのが分かったのだろう、傾いだ顔が近づいてくる。
以前よりも身体に馴染むようになった魔力を受け入れるべく、光に向かってつま先を伸ばした。
囁くような声を合図に、顔が近寄った。受け入れるように顔の位置を合わせ、瞳を閉じる。唇が触れた。なんどか繰り返すと、ぬるりとしたものが表面を舐める。
掻き分けるような動きに、ゆるりと口を開く。歯の間から、別の舌が滑り込んできた。ぬめった生き物のようなそれが舌を絡め取る。
「…………ン、……ぁ、ふ、…………ん、ッ……」
動けずに強張った舌が捏ね回され、悪戯を繰り返す生き物は舌裏を舐め上げた。柔らかい部分が押され、ずぐずぐとした気持ちよさの炎が灯される。
口内を全て嘗め回すように辿り、相手の唾液を含まされる。こくん、と飲み込むと魔力の波に痺れた。ぼうっと唇を押さえていると、いちどソファに降ろされ、リカルドは床に足を着けた。
伸びた腕が、また僕の身体を抱え上げる。傾きつつ重心を移動させて、彼の肩に掴まった。
「誘うのがうまいな」
「そう……?」
首を傾げていると、そのまま寝室まで運ばれた。階段を上る時に体重の負荷を軽くする魔術を使うと、楽しそうに一段一段を踏みしめる。軽快な音は、彼の心音に似ていた。
寝室は別棟の最も高い位置にある。大きな扉を開けた先は、リカルドの自室に比べて倍くらいの広さがあった。新品らしき大きな寝台がある以外は、家具も多くない。清潔感のある室内とは対照的に、窓の外には闇が忍び寄っていた。
真っ白なシーツの掛けられた寝台に降ろされ、きょろきょろと周囲を見渡す。
「ここ来た時に案内されたけど、いま見ても広いね?」
覆い被さってきた唇が、触れて離れる。照れから染まってしまった目元を隠すように指で撫でた。
「…………余裕だな?」
首元に近寄った口が開き、首筋に歯の先が当たって過ぎた。ぶわ、と周囲をアルファの匂いが取り囲む。
オメガが作る巣ではなく、首輪を掛けられた感覚だった。彼の手の内に踏み入っていく。強く当たられることがなくて気付かなかったが、相手はアルファだ。
持ち上がった顔、琥珀色の瞳は影のうちにあって昏い。普段は隠しきっているどす黒いものが、じわりと滲み出ているようだった。
「…………あ」
一段と体温が上がった。フェロモンを使って誘われているらしい。周囲に立ちこめる圧が、一斉に身体にのし掛かった。
口火を切ったのは、間違いなく僕だ。互いが互いを誘って、罠を絡め合っている。リカルドが寝台に乗り上がった。沈み込んだ部分が僅かに音を立てる。
大きな掌が胸元に指を入れ、く、と下に引いた。
「いっぺん抱いたら止まらないから。止めたきゃぶん殴って」
僅かに指が胸のあたりに当たっている。普段は見せない場所を、他人のゆびが這っている。どくどくと鳴る場所。通気性のある薄い服の下には、何も身につけてはいなかった。
無言で腕を伸ばし、高い場所にある首筋に縋り付く。すり、と相手の首筋に頬を寄せると、ごくん、と隣で喉が鳴った。
「いま。身体が熱いんだ。……肌が、ぞくぞくして。こんなの────よくない、って。分かってるのに……」
他人の唇が首筋を辿る。唇が開いて舌が覗くと、ぬめるような感触が皮膚の上を滑る。くすぐったさの奥に、ちらつく炎があった。
服越しに掌が胸に当たる。撫でさする動きはゆったりとしていて、ねちっこい。
「俺は嬉しい。発情期にかこつけて、ずっとロシュと過ごせて。こうやって、身体を任せる対象にしてくれる」
器用な指先が釦を外す。
自らも、と指を持ち上げるのだが、それよりも早く彼の指が服の前を開ききってしまった。日に当たらない場所の肌が、自分以外の人の視線に晒される。目の下が熱く、赤く染まってしまっているだろう事も分かってしまう。
黙り込んでしまった番候補に、顔を上げて口を開く。
「な、なに……!? 身体、へん……?」
「いや。綺麗だ。……感動と興奮が一気に押し寄せてる」
「…………?」
首を傾げると共に、服が落ちて腕のあたりに溜まる。導かれ、彼の脚の間に身体を入れると、ちゅ、ちゅ、と首筋にキスが落とされた。匂いを擦りつけるように強く吸われ、赤く鬱血する。
すう、と息を吸う度に、濃い匂いにくらくらした。度数の高い酒でも煽ったみたいだ。
「かーわいい」
彼がどこを見てそう言ったのか、視線の先を追って分かった。止める間もなく、指先が突起を捕らえる。指の腹でくるりと円を描かれると、むず痒いものが生まれる。
ふ、と細切れの息を吐き出す。何度潰されても跳ね上がる様を楽しむように、彼は色づいたそこを指先で弄った。
「…………ゃ、わッ……!」
おもむろに開いた唇が、先端を食む。唇に挟まれたそれをちろりと舌が舐めた。じわ、と唾液に濡れた場所に、更にぬめった感触が押し当てられる。
「……ン、っう。……ぁ、は…………あ」
ちゅう、と吸うように力が加えられ、べろり、と分厚い舌で押し潰す。慎ましくしていたものが淫らに色を濃くし、形まで変わっていく。胸元に埋まる頭を抱き、その髪に指を埋めた。
口が窄められ、強く吸われた。
「…………ッ!」
引いた波が押し寄せるように、じんじんとした痺れが追ってくる。宥めるように舌の腹で転がし、また味わうように絡み付く。ちゅくちゅくと響く水音は、目を閉じても止まない。
感覚が変わる度に指先をびくつかせ、ひくん、と喉を鳴らした。
「リカルド……。それ、もう……っ」
「…………。もう片方?」
「ちが……!」
指で弄っていた方へ唇が移ると、空いた方は指先で捏ねられた。逃れられていた方まで唾液に塗れ、形を変えられてしまった。
胸を弄っていた唇がそのまま、胸の中央から腹へと下りる。
肉の溜まった柔らかい部分に舌が這った。腹から腰を撫でる手は、皮膚の下を探るように丁寧に触れられていく。そこまで丹念にしなくても、と思いながら、途切れる息をこぼし続けた。
服の下で、持ち上がっている熱がある。寄せられている顔の近く、どうしたら避けて貰えるのかと悩んでいると、リカルドが顔を上げた。
「…………あのさ」
「……ン、うん」
「この発情期のために買ったもので、断じて、他の相手がいるわけじゃないから」
「…………?」
首を傾げると、身を起こしたリカルドが僕の腕を放させた。
部屋の端にある棚から、小さな瓶を持ってくる。寝台で蓋を取り、ひくつかせる僕の鼻先に瓶の口を寄せてくれる。中身から匂いはしなかった。
瓶の縁をなぞって付着した液体に、言葉の意図をようやく悟る。
「変なものは入ってない。滑りを良くするだけ」
キュ、と蓋が閉じられた。
「……そか。食べ物とか、日用品とか、も。色々、ありがと」
腕のあたりに溜まった裾を摘まみながら、二人して視線がすれ違う。寝台の上にいて尚、学生時代の恋愛のようなことをやっているのが気恥ずかしかった。
顔を上げられずにいると、前髪を持ち上げられ、額にキスが落ちる。顔を持ち上げると、唇が塞がれた。見開いた瞳をとろりと溶かす。
流し込まれている魔力が同調して、ぞくぞくと感度を上げていく。
「下、触っていい?」
「あ……ぬ、脱ごっか……?」
下の服に手を掛けると、リカルドは迷うように視線を巡らせる。なぜ迷うのか理由が分からず、目を白黒させた。
「リカルド……?」
「悪い。……どっちがいいか迷った。脱いでくれるんだよな?」
念押しされてしまえば、頷く他ない。脱ぎ始めて気付いたのだが、視線がじっとりと動きを追いかけている。熱く、粘つくような眼差しにびくびくと身体を震わせながら、下の服を脱ぎ落とす。
上の服も腕に引っかかった程度で、前は隠れていない。裾を引っ張って隠しても、前の毛は覗き見えてしまっていた。
ぺたん、と座り込むと、リカルドは僕の脚を持ち上げた。じわじわと外に向けて広げると、股の辺りが露わになった。
彼は瓶の中身を掌に広げ、指先を茂みへと潜らせる。指が動く度、赤毛が指の先に絡み付いた。温度を変えつつある芯を、指先が捕らえる。
「ひぁ……!? あッ……や…………!」
つい、と挟み込んだ指が根元から先端までを辿り、大きな手で握り込まれる。ぬめりを帯びた手は、音を立てながら全体を包み込んだ。
ずっ、ずっ、と上下に擦られる。
「……ン、く……ぅ。ぁ、あン…………ふ、くァ……」
感触による快楽を与えられているのもそうだが、粘膜を擦る指が内部と近い。唇を重ねたときに覚えたあの快楽の兆しが、更に高まったまま刺激された。
ぐちゅぐちゅと耳を犯され、指の丸い部分が先端を擦っては過ぎる。いつの間にか、潤滑のために足された液体以外の物が混ざり、中央から快楽を零していた。
「あ、ひぃ……。……イ、……ちゃ……ッ!」
こぷり、こぷりと雫を垂らしては悲鳴を漏らす。さっきまで大人しくしていたものをぐちゃぐちゃにされながら、掻き乱すように唇を奪われた。引こうとした身を追い、舌が唇を舐める。
「ぁ……ふ、……く、ン…………!」
べ、と伸びた舌が唇の膨れた部分を押した。登り詰めるはずだった熱は離れた指によって叶えられず、こぽこぽと煮立つ灼熱が岩の下に閉ざされた。
物欲しげな表情をしていたのか、リカルドは唇で弧を描く。
「……すぐやるよ。待ってな」
「な……ッ!」
含みを察してしまい、ぱくぱくと口を開いては閉じる。脚を引かれ、うつ伏せに寝台へと倒される。
尻の上にはなんの遮るものもない。まだ引っかかっている上着の裾を伸ばそうとしたが、背後からぺろりと捲られてしまった。
わああ、と声を上げるのだが、面白そうな笑い声が響くだけだ。
「ここ触らないと、怪我するからな」
尻たぶを撫で、揉むように指を食い込ませる。他の部位に比べて肉付きのいいそこは、押されるがまま、むっちりと指全体を受け止めた。
無言で尻を触り続ける指を、羞恥心に塗れ、声を漏らしながら耐える。
「…………しつこ、い……! ぁ……やだ……ッ!」
ずり、と前へ移動するが、距離を詰められた。
シーツの上に放り出されていた小瓶が持ち上げられ、尻の谷間の上で傾けられる。とろりとした液体が皮膚の上を滑っていった。液体は綺麗に滑り落ち、下の毛まで絡み付く。
指先が狭間へと宛がわれた。つ、と滑って、窪みを探り当てる。
「ヒ…………ッ、ぁ!」
ぬめりを帯びた指は容易く奥へと潜り込んでしまう。きゅう、と締め付けた動きにたたらを踏むが、拘束が解けるとまた内壁を探り始めた。
ひたひたと内側を探るように触れていく。表面を触られていた時と違ったぞわぞわが背筋を伝った。シーツを握りしめ、さりさりと膝で布を掻く。
身体の内側を明け渡す怖さと共に、未知の悦さへの期待がある。
「…………ン。……ふ……っく」
ぐぷぷ、と勝手を掴んだ指が侵入りこみ、圧迫感が増す。ふ、と熱くなった息を漏らし、指先が奥を探ることを許した。
背後で、リカルドの声が漏れる。指が曲がり、彼の指の丸いところが、捕らえた部分を押し込んだ。
「────ッ、ぁ!」
知らずに蓋をしていた快楽が、腹の奥からぞくぞくと鎌首をもたげる。ずぐん、ずぐん、と響くような刺激にしびれて、反響が続いた。喉を絞って呼吸を繰り返していると、場所を覚えた指はまた同じところを擦った。
「……ぁ、ひ……ン! ……ぁあ、あ……っ、ん…………うぅ……」
白い波の中で藻掻き、身体を串刺しにする指から逃れようと動く。空いていたはずの腕が、足首を掴んだ。引き抜かれかけていたはずの指がずぶずぶと潜り込み、窘めるように同じ場所を抉る。
「ぁあ、ああ……ッ! ……くう、……ん……ぁあ、あっ、ひ!」
脚を持ち上げられ、身体が傾ぐ。
潜り込んだ指先は更に滅茶苦茶に押し込み、足掻くほどに刺激は強くなる。ひくん、と喉が短く痙攣した。指がぱかりと開き、肉輪がぽっかりと開く。すう、と空気が通った。
具合を確かめられている。高まった羞恥に涙が浮き、崩れ落ちた布の上に擦りつけると染みができた。
「…………ひ、っく。……ぁ、……うあ……」
液体が足され、こぷ、と粟立つまで指が抉る。奥に突き入って、肉縁が捲れ上がって泡立つほど掻きだして、そしてまた潜り込む。
水音が響き、掻き消すように嬌声が鳴る。制止の声は届かず、宥められながらも指は抜かれない。やがて、指の節くれ立ったところが内側を押し上げることすら、刺激に捉えられるようになる。
「気持ちいい……? よなぁ……、どろっどろだもんな……」
持ち上がった前を撫でられ、それでも、絶頂までには届かない。解放させてくれるつもりはないようだ。もし、解放があるとするなら。
腹の奥にこのアルファの雄を迎え入れて、滾るような子種を吐き出された、その時だ。
「……ぁ、は……。あぁ……ッ!」
きゅう、と奥を引き絞る。この男の股間で膨れているものを想像して、腹に突き込まれることを妄想して、この身体はただ歓喜した。布地に涎を垂らし、頭をいっぱいにしていた恥ずかしささえも忘れた。
指が後腔から引き抜かれる。空虚になったそこが、ぽっかりと空いてひくついた。
布地が擦れる音がする。背後にいる雄を、露わにしている音だ。
身体を丸めて、後ろを見た。下の服を引き下ろすと、そこから猛りきった男根がまろび出る。受け止められるのかと思えるほど長大で、湯気が立つほど熱い子種を溜めているもの。
リカルドが、はあ、と息を吐いた。
僕の視線に気付くと、見せつけるように雄を持ち上げる。先端を尻の間に擦り付けた。膨れた縁へと擦りつけると、ちゅぷちゅぷと濡れたもの同士が音を立てる。
お預けを食らわせるように、何度も押し付けては引く。すん、と啜り泣いた。
「……リカルド」
「うん?」
「…………いれて、くれないの……?」
掠れるほどの声は、彼にも届いたらしい。にい、と唇を持ち上げると、ぐぶ、と亀頭が輪を潜った。
「待たせてごめんな。やる、よッ……!」
「────!」
びくん、と背を撓らせる。きゅう、と後ろを引き絞った所為か、挿入はいちど止まる。ふ、と息が抜けた瞬間、ずぼ、と押し込まれた。
性急な動きに、内壁もみちみちと熱棒へと絡み付く。
「……ぁ、あッ……あ────! や、おもた……!」
「──っても、ロシュが絞って、ッ……から……!」
腰が掴まれ、逃げを打つ動作は押さえつけられる。上から体重を使って突き入られると、アルファの質量を知らない躰にも、肉杭は次第に埋まっていく。
そろそろ指先で探り当てられた場所に届く。その時、腰に強く指が食い込んだ。
「ここか」
「────ぁ、え?」
丸くぼっこりと膨らんだ場所が、ぐぷん、と狙った膨らみを押し上げる。目を見開いて、肩から寝台に崩れ落ちた。
「…………あ──ァ、ぁあああッ!」
「────は、ぁ」
獲物の動きが止まったのを良いことに、二度、三度と突き入る。がくがくと脚を震わせ、揺らされるがまま、過度な快楽を享受させられた。前はだらだらと涎を垂らしたまま、絶頂できずに悲鳴を零し続ける。
ふ──ッ、と獣の息づかいが聞こえる。牙を突き立てたまま、咀嚼はされない。
「リカルド……、も……う……?」
「……、ん。まだ」
身体の中の雄がまた内側を探り始める。指で辿り着いた場所よりも更に奥。ずりずりと太いものを滑り込ませ、内側の感触を探っている。腹の質量は増している。繋がった場所から重たい物が打ち込まれ、腹を押し上げている。
生ぬるい温度が腹の中にある。尻に当たる袋には子種が蓄えられ、放出を待ちわびていた。
「……ふ、く……。ぁ、あ…………」
長いこと、息と嬌声を漏らしながら身体を拓いていた気がする。先端が、こつん、と何かを探り当てた。軽く潜ろうと力が掛けられた瞬間、駄目なものだと理解する。
腹の奥の快楽は重くて長い。その場所を抉られる快楽を知りたくない。本能が警鐘を鳴らした。
「や……! やだ、そこ、は────! …………ァ」
ぼこり、と腹が膨らんでしまうかと思った。入らない筈の場所まで、届いてしまった。ぎちぎちと剛直を喰い締める。粘膜越しの接触は近すぎた。感触だけでなく、繋がった場所から魔力が雪崩れ込む。
体重が掛かって、尻の肉が潰れた。
「ちから、抜け、って……!」
「……ぁああッ、うあ、あ……。ぁあ、っく……」
小刻みに揺らされる度に、ずくんずくんと物慣れない快楽が襲ってくる。声を上げても、のし掛かられている身体は動けない。体重を掛けて奥の奥まで押し付けられ、膨らんだ半身から、だらだらと体液が零れる。
いやだ、そう言っても声は媚びるような響きを纏っている。薄い子種を胎ではしたなく啜って、質量のあるものを暴力的に押し付けられることに悦ぶ。
悲鳴と嬌声が混ざったような濁った声。僕もまた獣でしかなかった。
「あ、ひァ、あン……! ぁ、ふ、っく、うあぁ、あ、あ、あ」
「……っく、う……、ふ。は、ぁ……」
ずっ、ずっ、と引き抜いてはまた突き上げる。皮膚がぶつかる音が繰り返し聞こえる度、波のように悦びを引き出されては飲み込まれた。
抽送の度に奥をぐりり、と抉られ、その度に悶える。腰から下の感覚が薄くなり始めた頃、身体が倒れ込み、首筋に歯が当たった。
刃物でも押し当てられている心地だった。他人に弱点を委ねる恐怖と、造りかえられる期待に戦慄く。
「俺、は……間違いでも、お前以外を、……ッ、選びたくない……」
「ん。……うん……ッ! も、はなれる、の、やだ……!」
綺麗なままの首筋に、彼は最期にキスをした。
柔らかい部分を確認すると、ぐぐ、と皮膚に牙の先が食い込む。大量の魔力が流し込まれて、同調しているような心地だった。その場に固定されたまま、大振りに引かれた腰が叩きつけられる。
「ぁ────! ぁああッ、……ぁああああああぁぁぁン!」
奥へと固定して、鈴口から白濁が雪崩れ込む。魔力を含んだそれは、身体の中を塗り変えんと奥へこびり付く。腹の奥は燃えるようで、この一瞬で、番としての身体へ造りかわった事が分かってしまった。
圧迫する雄はじわじわと快楽を呼び起こし、絶頂の余韻を長引かせる。奥を押された刺激のままに、僕は前からぼたぼたと液体を垂らしていた。啜り泣くように悦さに震えながら、上からも下からも液体を撒き散らす。
首から牙が離れたのは、どれくらい経ってからだろう。まだ波が引かない躰から、ずる、と雄が抜け出る。
「ロシュ…………?」
心配そうな声に、寝台に倒れ込んだまま顔を向ける。掌が伸ばされ、頬へと添えられた。
「……たぶん。へいき」
へへ、と笑ってみせるが、声はがらがらだった。身体に触れられる度に、びくん、と跳ねる。繋がっていた後ろも、熱を吐き出した前も、他人が触れていた感覚がまだ残っている。
ぱく、と閉じない後腔がひくついていた。
休憩、と思いたかったのに、周囲にはアルファの匂いが満ちている。始めよりもずっと濃いにおいは、彼の気分が盛り上がったまま、という事を示していた。ちら、と視線を向けた彼の中心は、また形を変え始めている。
ぬるり、と濡れたままの肉棒が尻の間に挟み込まれた。背に掛かる息は熱い。なのに、まだ発情期は始まり、だ。
「手加減、してね……?」
「…………努力、は、する」
本当に努力をしたのか疑問に思いたくなるような所業を繰り返したリカルドだったが、発情期の後は落ち着きを取り戻し、僕の面倒を見てくれた。
結局、発情期前よりもふっくらとして仕事に戻った僕に、番は嬉しそうに引き続き世話を焼くのだった。
僕の引っ越しと同時期。母はジール家に関わりのある病院へと転院することになり、新しい治癒魔術を使った治療が受けられることになった。
二人で挨拶に行った時には、いつも以上にきちんとした身なりの母が、広くなった病室で出迎えてくれた。服装をきちんとしたリカルドは本当にどこぞの王子のようで、母の方が緊張しきっていた。ただ、喋り始めるといつものリカルドなので、母も会話が回り始める。
お父さんが生きていたらどんなに、という母の言葉には、リカルドの方が先に涙ぐんでいた。
その後の報告も受けるが、母は順調に回復しているようだ。
貸し出していたはずの実家は、いつの間にかジール家が借主になっていた。
物を置くところが欲しかった、と彼は言うのだが、その割には僕や母の承諾を細かく取っては、家の改修までしてくれている。
段差を減らし、手摺りを取り付け、生活の助けになる魔術装置が増えた家。母が戻った後のことを考えられているような気がするのは、果たして気のせいなんだろうか。
僕に関係して仕事も増えている筈なのに、リカルドは元々の仕事にも精力的に飛び回っている。ただ、綺麗な石を見つけた時には、時おり手元に残すようになった。いずれ、展示する場所を持ちたいのだそうだ。
『宝石の展示なんて、儲からないんじゃないの?』
そう言うと、リカルドは僕の頭をくしゃくしゃにする。
『俺がやりたいことだから、いいんだよ』
リカルドの番でありながらジール家に仕える魔術師、という微妙な立場になった僕だが、旦那様やオースティン様から頼まれる仕事が増えたものの、概ね変わりなく仕事を続けている。
その日も結界の補修に敷地内を回り、改修した術式を埋め込んだ。玄関先での作業を終えたあたりで、見慣れた姿が駆け寄ってくる。
以前と違って、よく皆から声を掛けられるようになった気がする。
「ロシュ」
「オースティン様、おかえりなさい。リカルドも一緒でしたよね」
「うん。リカルドもすぐ来るよ。…………まだ敬語なんだね」
オースティン様からは弟の番なのだから、と敬語を外すよう言われるのだが、雇用主であることには変わりなく、慣れないことを理由に延期させてもらっている。
「でも、あの。リカルドと番じゃなかった時の感覚が強くて……」
僕が少し引いた態度を取ると、このひとは決まってこう言う。
「じゃあ、もっと仲良くなろうね。ロシュも弟なんだから」
ふふ、と笑う姿は心の底から楽しそうで、兄弟仲が良くなり、会う度に戯れている様が微笑ましい。彼も番が欲しい、とは思っているようだが、今は弟と弟の番を構うので精一杯なのだそうだ。
背後から、兄を追うように番が駆け込んでくる。
「なーにやってんだよ兄貴。ロシュにばっか嬉々として絡みにいって……」
「…………? 私はリカルドにも嬉々として絡みにいっているよ?」
「それは知ってるから!」
やいやい言い合っている姿も、子どもの頃を取り戻しているみたいだ。以前よりもお互いに対話を臆さなくなった。
二人の会話が仕事の話に移行してしまい、僕は置いてけぼりになる。何だか寂しくて、リカルドの隣に寄った。こっそり手を伸ばし、腕を絡める。
びく、と腕を跳ねさせたリカルドは、僕を見下ろして眉を下げる。
「悪い。つい仕事の話まで……」
「ふぅん。そんなにオースティン様の方がいいんだ……?」
僕のゆるゆるになった口元を見て何かを察したらしいオースティン様は、僕と反対側の腕を抱き込んだ。
ふふ、と艶やかな笑みをわざとらしく浮かべてみせる。
「リカルドはお兄ちゃんだって大事だもんね……?」
「えー! どっちを選ぶの? リカルド」
明らかに態とらしさ全開なのだが、挟まれた本人は二人をうろうろと見る。恐らく、僕とオースティン様の双方を傷つけない言葉を必死で考えているらしい。
こういうとこ真面目なんだよなあ、とこっそり腕に顔を押し付けながら笑う。目の前の兄もまた、肩を震わせている。
二人の笑い方があまりにも分かりやす過ぎたのか、はっ、とリカルドが眉を跳ね上げた。
「…………俺、からかわれてるんだな?」
呆然とした言葉に、二人して堰を切ったように笑い出した。リカルドはオースティン様に文句を言うと、僕の肩を抱く。
頭をくしゃくしゃに撫でながら、お前なあ、と文句を言われた。
「番が一番大事! ……けど、兄貴だって大事に思ってるよ!」
くく、と口元を隠して笑い続けているオースティン様は、リカルドに引っぱたかれている。手を振って仕事に戻っていく兄は、最後までご機嫌だった。
リカルドは僕の手を引いたまま、別棟へと向かう。
僕の趣味で物が揃えられ始めた家は、リカルドの趣味ともまた違う色味を持ち始めている。彼は二人の家、だと言う。僕の家でもあるその場所を見回す度に、眩しくて思えて仕方がない。
玄関先で埃を落としていると、その最中にぎゅっと抱き込まれた。埋まった胸元から、番の匂いがする。いつも近くにある、安堵する匂いだ。
「ほんとに、ロシュが一番大事だから」
「うん。……ちゃんと、分かってるよ」
腕を伸ばして、首筋へとしがみつく。口づけをねだったのが分かったのだろう、傾いだ顔が近づいてくる。
以前よりも身体に馴染むようになった魔力を受け入れるべく、光に向かってつま先を伸ばした。
125
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
事故つがいΩとうなじを噛み続けるαの話。
叶崎みお
BL
噛んでも意味がないのに──。
雪弥はΩだが、ヒート事故によってフェロモンが上手く機能しておらず、発情期もなければ大好きな恋人のαとつがいにもなれない。欠陥品の自分では恋人にふさわしくないのでは、と思い悩むが恋人と別れることもできなくて──
Ωを長年一途に想い続けている年下α × ヒート事故によりフェロモンが上手く機能していないΩの話です。
受けにはヒート事故で一度だけ攻め以外と関係を持った過去があります。(その時の記憶は曖昧で、詳しい描写はありませんが念のため)
じれじれのち、いつもの通りハピエンです。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
こちらの作品は他サイト様にも投稿しております。
断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。
叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。
オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる