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匠と沙耶
六
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──────
『沙耶、愛してる』
ユラユラとまるで水の中で聞いているみたいに遠い言葉。
ソッと手を伸ばせば、それは空を切り決して届くことのない距離。
『大丈夫、俺は側にいる。だから───────』
ガバッ!!!
「つっ─────」
バクバクと五月蠅い心臓。
決して目覚めの良い朝なんてものじゃない。
寧ろ不愉快だ。
言葉が耳について離れない。
気分がドンヨリするようなそんな夢。
匠の笑みが頭から離れない。
あんな─────
切なそうな笑み。
ベッドに座り込んだまま頭を抱えた。
泣きそうになるのを堪えて毛布に顔を埋めていれば、フワリと体を抱き締められた。
「どうした、怖い夢でも見たのか?」
「匠……少し嫌な夢を見ただけ。大丈夫」
頭から追い出すかのように強く振るった。
「ぶはっ、お前馬鹿になるぞ」
失礼な……。
思いながらも、笑みが浮かび上がってきて、気付けば笑っていた。
しこたま笑った後、匠は私を抱き締めたままそっと呟いた。
「電話するならしてきな、朝食はもうできてる」
「…………うん」
ベッドから出て、鞄に放りっぱなしの携帯を手に部屋を移る。
もしもの為にも数日仕事を休むと伝えて、直ぐに電話を切った。
理由は適当に……母が倒れたとか嘘をついたけど、なんだか気分が憂鬱だ。
凄く悪いことをした気分。
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無事でいて。
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