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10、複雑な気持ち*
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「はぁ、はぁ……」
(なに、今の……)
一瞬頭が白く塗り替えられたような感覚を味わった。
「気持ちよかったか?」
呆然とした様子で浅い呼吸をするマリアの顔を覗き込みながらジークハルトが尋ねてくる。
(気持ちいい……)
「よく、わかりません……」
「そうか」
少しがっかりしたように見えてマリアは自分の答えがまずかったかと慌てる。
「あの、でも、痛くはなかったです。初めてのことで驚いて、少し怖かったけれど……」
必死に説明するマリアがおかしかったのか、ジークハルトは少し笑い、それならよかったと安心するように言った。
「今のが、女性の快感なんだ。怖がる必要はない。受け入れなさい」
子どもに教える教師のように聞こえて、マリアは素直にこくりと頷いた。
「汗をかいて気持ち悪いだろう。これ、脱がせていいか?」
これ、とはドロワーズのことである。確かに先ほどの行為で気持ち悪い。
でも脱がされてしまえば、今度こそ余すところなくジークハルトに己の裸を見られてしまう。マリアはまだ羞恥心を捨て切れていなかった。
(まだ、終わりではないのよね……)
詳しいことは教えてもらえなかったとはいえ、なんとなく男女が一つになることはマリアも知っていた。
「……ジークハルト様も、一緒に脱いでもらえますか」
ジークハルトはまだ服も脱いでいないのだ。マリアはせめて彼にも同じ状態になってほしかった。
マリアがそう思って頼むと、彼はそういえば、という顔をした。
「緊張していて、服を脱ぐのを忘れていた」
(緊張していらしたの?)
マリアのことを気遣ってくれる余裕が見えたので意外だった。
「じゃあ。脱ぐか」
言うなりシャツを頭から脱ごうとする。だがお腹を見せたところで中断した。
「腹や胸……他にも傷痕があるんだが、もしかすると気持ち悪いかもしれない。大丈夫か?」
マリアが怖がると思ってジークハルトはそう言ってくれたのだろう。
怪我の具合がどれほどかはわからなかったが、それを見て気持ち悪く思ったり怖がったりすることはないだろう。彼は騎士団長であるし、辺境伯領主としてこの土地を守ってきたのだから、傷痕くらいできていてもおかしくはない。
「わたしは大丈夫ですから、気にしないでください」
ジークハルトは少し照れ臭そうに礼を述べると、シャツを脱いだ。
マリアは生まれて初めて異性の――成人した男性の身体を目にした。
彼の言う通り小さな切り傷から大きな怪我をしたと思われる傷痕が残っている。
でも痛ましいとは特に思わず、綺麗に割れた腹筋と合わせて彼がこれまで厳しい修練を重ねてきた証だと思った。むしろじっと見ていると胸がドキドキしてきて、自分はこんな人にすべてを曝け出して抱かれるのだと羞恥が増した。
このまま見続けていたら心臓がもたなくなりそうだと目を逸らしたくなるが、そうすると傷痕に嫌悪感を覚えて逸らしたと思われるかもしれない。
マリアは顔を赤くして視線をきょろきょろさせた。その姿を見ていたジークハルトが笑う。
「あまり見られるとくすぐったいものだな」
「あ、ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。俺も、あなたの身体を見たからな」
マリアが何も言えないでいると、ジークハルトはマリアのドロワーズを脱がせた。膝も左右に大きく開かせる。まだ先ほどの快感の名残で濡れているのがわかるだろう。閉じたかったけれど、その前にジークハルトが間に入ってきた。
何をするのだろうとマリアが不安げに見つめると、彼は安心させるように笑みを浮かべて、脚衣のポケットから小瓶を取り出した。何にはとろみのある透明の液体が入っている。
「一応濡らしたが、初めてだから痛いだろう。だからこの液体……潤滑油を塗る。滑りがよくなって、痛みが多少軽減されるはずだ。身体に害はないから、安心してくれ」
「はい……」
ジークハルトは掌に液体をたっぷりと垂らし、マリアの秘部に優しく塗ってくる。まるで薬を塗るような感じで、医者に治療されているみたいだ。
塗り終わると、彼は脚衣の前を寛げた。脱ぐのだろうかと視線を向けると、下穿きからぶるんと大きな塊が出てきたのでぎょっとする。
混乱するマリアに、ジークハルトは少し気恥ずかしそうに教えてくれた。
「これは俺の男性器だ。女性のあなたとは違うから、驚くよな」
そう言って彼が瓶の残りを垂らして手で扱くと、硬さが増したように見えて、上を向き始めた。まるで生き物のようで、マリアは目が離せない。
しかしこれを自分の中に挿れようとしていることに気づくと、とたんに怖くなって目を逸らした。
(こんな大きなもの、本当に入るの?)
「やっぱり怖いか? 今日はやめておくか?」
ジークハルトは怯えるマリアに気遣いそう提案してくれる。彼女はその優しさで勇気を出すことができた。
「いいえ。大丈夫です。でも、ゆっくりしていただけるとありがたいです」
「本当に大丈夫か? 初夜だからといって、別に無理しなくてもいいんだぞ」
「大丈夫です。ジークハルト様と、本当の夫婦になりたいのです。だから……きてください」
「マリア……」
懇願するような彼女の言葉にジークハルトはもう躊躇わなかった。
蜜口に自身の分身をあてがい、グッと中へ押し込んできた。ぐちゅりと潤滑油と濡れていたマリアの愛液が音を立てる。
「はぁ、ぁ……」
その大きさにマリアは全身に力を入れて喉元を晒していた。
(いた、い……)
というより、圧迫感が凄まじい。
「はぁ、きつい、な……」
ジークハルトも苦しそうだ。彼にそんな顔をさせて申し訳ないと思うが、マリアは自分のことで精いっぱいだった。
「マリア、呼吸を止めるな」
彼に言われて、マリアは自分が息をしていなかったことに気づく。苦痛に喘ぎながら息を吐き、何とか痛みを和らげようと別のことを考えようとするが、ジークハルトのものがさらに中に捩じ込まれてきたのでどうしても無理だった。
「ん……ふ、く……はぁ……」
「マリア……」
眉根を寄せていたジークハルトは身を屈めると、マリアに口づけした。苦しそうに息をしていたからか、酸素を送り込もうとでも思ったのだろうか。よくわからなかったが、今まで何度もした口づけをされると、自然と舌を絡ませて、痛みに向いていた意識が分散された。
動きを止めていた彼のものがまたゆっくりと奥へ入ってくる。痛みを和らげるように蜜が溢れ出し、控えめな水音が口づけの音と混ざり合う。そうしてどれくらい時間をかけただろうか。
「……ぜんぶ、入った」
「ほんとう、ですか?」
「ああ」
マリアは身体を浮かせているジークハルトの下半身に恐る恐る目をやる。彼の肉棒は確かに自分の中に収められており、根元からその先の姿は見えなかった。お腹にそっと手を当てると、あの大きな熱の塊を中に感じる。
(わたしの中に、ジークハルト様のものが……)
恥ずかしい気持ちもあったが、嬉しい気もした。痛いのを我慢しながら一つに繋がったからだろうか。
「ジークハルト様」
「うん?」
「優しくしてくれて……ありがとう、ございます」
一般的なやり方を知っているわけではないが、彼が気遣いながら自分に触れてくれたのは何となくわかった。快感でマリアが戸惑っていると言葉で説明してくれて、変ではないと教えてくれた。お陰でマリアはそこまで取り乱すことなく受け入れることができた。
(今もまだ痛くて、苦しい、けど……)
何とか耐えられる痛みだ。
ジークハルトのお陰だと思う。
浅い呼吸をしながらマリアがそうお礼を述べれば、ジークハルトは目を丸くして、どくんと中のものを大きくさせた。
(んっ、どうして……?)
「ジークハルト様、いま……」
「す、すまない。俺よりも苦しくて痛いはずのあなたがあまりにも健気なことを言うから」
「わたし、何か気分を害してしまうようなことを?」
「いや、そうじゃない! こう、胸にグッときて……つまり、なんだ、興奮したということだ」
今度はマリアが目を丸くして、顔を赤くする番だった。そしてジークハルトのものをますます強く締め付けてしまう。
「っ……」
「ご、ごめんなさい!」
息を吐き、彼が大丈夫だと少し笑うように言った。うっすらと汗をかいたその表情は色っぽくて、マリアは胸がドキドキしてさらに身体が反応してしまう。
「っ……マリア……悪いが少し、動いても、いいか」
そういえば彼はずっと動いていないままだ。
もしかして馴染むまであえてじっとしておいてくれたのだろうか。
「動く必要が、あるのですね」
「ああ……そう、だな。動いて、俺のものを射精に導く」
「射精……?」
「その、子種を出すということだ」
少し言いにくそうにジークハルトは告げた。
マリアは恥ずかしいことを聞いてしまったと申し訳なく思ったが、一方でなるほどと納得した。彼の子種が自分の中に出されることで妊娠に繋がるのだなと……。
「はい。どうぞ、ジークハルト様のお好きなように動いてください」
「……あなたの純粋な善意を、変な意味に受け取ってしまいそうな自分がいる」
「え?」
「いや、ありがとう。痛かったら、腕や背中に爪を立てて教えてくれ」
そんなことできるはずがない。
しかし思わずそうしてしまうほど痛いのだろうか。
マリアが思わず弱気になりかけると、ジークハルトはゆっくりと腰を動かし始めた。
「っ……はぁ、あっ……んっ、ふ、……あぁっ」
内臓を押し上げられるような苦しさに襲われるが、呼吸を速めて必死に耐える。
やめてほしいと言えばジークハルトはもちろんそうしてくれるだろうが、迷惑になるだろうと言えなかった。それに何か言える状態ではないほど律動が速くなってくる。
「はぁっ……マリア……っ」
獣のような荒々しい呼吸が耳元で聞こえて、身体が激しく揺さぶられる。また達する時のような感じがして、ジークハルトにしがみついていた。
「あっ……ん……っ、あ、ぁっ――……」
「くっ――……」
ジークハルトは呻き声と共にグッと腰を押し付けてきた。圧し掛かられているのでマリアは逃げることもできず、びくびくと身体を震わせながらどくどくと中に注がれる子種を受け止める。
「ん、んっ……」
(いっぱい、出てる……)
射精が終わっても、ジークハルトはマリアを抱きしめたまま動かない。マリアがそうであるように疲労で動けないのかもしれない。
彼の身体は燃えるように熱くて、マリアもびっしょりと汗をかいていた。どちらも口を利けず、乱れた呼吸を整えることに専念する。
やがて体力のあるジークハルトの方が身を起こし、ゆっくりとマリアの中から分身を抜いた。
「んぅっ……」
つい変な声が出てしまったが、ジークハルトには聞こえていなかったようで、安堵する。彼の視線はマリアの下半身に縫い付けられたままで、彼女は隠すようにして起き上がった。
「大丈夫か? 出血している。痛かっただろう」
血が出ていたのを確かめて、心配したようだ。
マリアは俯いて、緩く首を振った。
「大丈夫、です……ジークハルト様が、すごく気遣ってくれたので……」
我慢できる痛みだった、と言えばいいのだろうか。今もお腹や股の間に違和感を覚えているが、無事に済んだことの安心の方が大きい。
(ジークハルト様の、妻になれた)
よかった、と思ってマリアは顔を上げた。自分を見ていたジークハルトにおずおずと微笑むと、彼は目を瞠って、汗ばんだ肌のまま抱きしめてきた。
「ジークハルト様?」
「マリア」
名前を呼ばれて、マリアは上手く言葉にできない感情に包まれる。
ヒルデの代わりとして嫁いできたこと。それなのに優しく接してもらって申し訳ない気持ち。彼に抱かれて恥ずかしい思いもたくさんしたが、すごく嬉しい気もして……。
「マリア」
もう一度名前を呼ばれて、気づけば口づけされていた。
(ジークハルト様……)
彼の妻になれた。
でも、本当に自分でいいのかという不安もあって、マリアは抱きしめ返していいかわからなかった。
(なに、今の……)
一瞬頭が白く塗り替えられたような感覚を味わった。
「気持ちよかったか?」
呆然とした様子で浅い呼吸をするマリアの顔を覗き込みながらジークハルトが尋ねてくる。
(気持ちいい……)
「よく、わかりません……」
「そうか」
少しがっかりしたように見えてマリアは自分の答えがまずかったかと慌てる。
「あの、でも、痛くはなかったです。初めてのことで驚いて、少し怖かったけれど……」
必死に説明するマリアがおかしかったのか、ジークハルトは少し笑い、それならよかったと安心するように言った。
「今のが、女性の快感なんだ。怖がる必要はない。受け入れなさい」
子どもに教える教師のように聞こえて、マリアは素直にこくりと頷いた。
「汗をかいて気持ち悪いだろう。これ、脱がせていいか?」
これ、とはドロワーズのことである。確かに先ほどの行為で気持ち悪い。
でも脱がされてしまえば、今度こそ余すところなくジークハルトに己の裸を見られてしまう。マリアはまだ羞恥心を捨て切れていなかった。
(まだ、終わりではないのよね……)
詳しいことは教えてもらえなかったとはいえ、なんとなく男女が一つになることはマリアも知っていた。
「……ジークハルト様も、一緒に脱いでもらえますか」
ジークハルトはまだ服も脱いでいないのだ。マリアはせめて彼にも同じ状態になってほしかった。
マリアがそう思って頼むと、彼はそういえば、という顔をした。
「緊張していて、服を脱ぐのを忘れていた」
(緊張していらしたの?)
マリアのことを気遣ってくれる余裕が見えたので意外だった。
「じゃあ。脱ぐか」
言うなりシャツを頭から脱ごうとする。だがお腹を見せたところで中断した。
「腹や胸……他にも傷痕があるんだが、もしかすると気持ち悪いかもしれない。大丈夫か?」
マリアが怖がると思ってジークハルトはそう言ってくれたのだろう。
怪我の具合がどれほどかはわからなかったが、それを見て気持ち悪く思ったり怖がったりすることはないだろう。彼は騎士団長であるし、辺境伯領主としてこの土地を守ってきたのだから、傷痕くらいできていてもおかしくはない。
「わたしは大丈夫ですから、気にしないでください」
ジークハルトは少し照れ臭そうに礼を述べると、シャツを脱いだ。
マリアは生まれて初めて異性の――成人した男性の身体を目にした。
彼の言う通り小さな切り傷から大きな怪我をしたと思われる傷痕が残っている。
でも痛ましいとは特に思わず、綺麗に割れた腹筋と合わせて彼がこれまで厳しい修練を重ねてきた証だと思った。むしろじっと見ていると胸がドキドキしてきて、自分はこんな人にすべてを曝け出して抱かれるのだと羞恥が増した。
このまま見続けていたら心臓がもたなくなりそうだと目を逸らしたくなるが、そうすると傷痕に嫌悪感を覚えて逸らしたと思われるかもしれない。
マリアは顔を赤くして視線をきょろきょろさせた。その姿を見ていたジークハルトが笑う。
「あまり見られるとくすぐったいものだな」
「あ、ごめんなさい!」
「いや、いいんだ。俺も、あなたの身体を見たからな」
マリアが何も言えないでいると、ジークハルトはマリアのドロワーズを脱がせた。膝も左右に大きく開かせる。まだ先ほどの快感の名残で濡れているのがわかるだろう。閉じたかったけれど、その前にジークハルトが間に入ってきた。
何をするのだろうとマリアが不安げに見つめると、彼は安心させるように笑みを浮かべて、脚衣のポケットから小瓶を取り出した。何にはとろみのある透明の液体が入っている。
「一応濡らしたが、初めてだから痛いだろう。だからこの液体……潤滑油を塗る。滑りがよくなって、痛みが多少軽減されるはずだ。身体に害はないから、安心してくれ」
「はい……」
ジークハルトは掌に液体をたっぷりと垂らし、マリアの秘部に優しく塗ってくる。まるで薬を塗るような感じで、医者に治療されているみたいだ。
塗り終わると、彼は脚衣の前を寛げた。脱ぐのだろうかと視線を向けると、下穿きからぶるんと大きな塊が出てきたのでぎょっとする。
混乱するマリアに、ジークハルトは少し気恥ずかしそうに教えてくれた。
「これは俺の男性器だ。女性のあなたとは違うから、驚くよな」
そう言って彼が瓶の残りを垂らして手で扱くと、硬さが増したように見えて、上を向き始めた。まるで生き物のようで、マリアは目が離せない。
しかしこれを自分の中に挿れようとしていることに気づくと、とたんに怖くなって目を逸らした。
(こんな大きなもの、本当に入るの?)
「やっぱり怖いか? 今日はやめておくか?」
ジークハルトは怯えるマリアに気遣いそう提案してくれる。彼女はその優しさで勇気を出すことができた。
「いいえ。大丈夫です。でも、ゆっくりしていただけるとありがたいです」
「本当に大丈夫か? 初夜だからといって、別に無理しなくてもいいんだぞ」
「大丈夫です。ジークハルト様と、本当の夫婦になりたいのです。だから……きてください」
「マリア……」
懇願するような彼女の言葉にジークハルトはもう躊躇わなかった。
蜜口に自身の分身をあてがい、グッと中へ押し込んできた。ぐちゅりと潤滑油と濡れていたマリアの愛液が音を立てる。
「はぁ、ぁ……」
その大きさにマリアは全身に力を入れて喉元を晒していた。
(いた、い……)
というより、圧迫感が凄まじい。
「はぁ、きつい、な……」
ジークハルトも苦しそうだ。彼にそんな顔をさせて申し訳ないと思うが、マリアは自分のことで精いっぱいだった。
「マリア、呼吸を止めるな」
彼に言われて、マリアは自分が息をしていなかったことに気づく。苦痛に喘ぎながら息を吐き、何とか痛みを和らげようと別のことを考えようとするが、ジークハルトのものがさらに中に捩じ込まれてきたのでどうしても無理だった。
「ん……ふ、く……はぁ……」
「マリア……」
眉根を寄せていたジークハルトは身を屈めると、マリアに口づけした。苦しそうに息をしていたからか、酸素を送り込もうとでも思ったのだろうか。よくわからなかったが、今まで何度もした口づけをされると、自然と舌を絡ませて、痛みに向いていた意識が分散された。
動きを止めていた彼のものがまたゆっくりと奥へ入ってくる。痛みを和らげるように蜜が溢れ出し、控えめな水音が口づけの音と混ざり合う。そうしてどれくらい時間をかけただろうか。
「……ぜんぶ、入った」
「ほんとう、ですか?」
「ああ」
マリアは身体を浮かせているジークハルトの下半身に恐る恐る目をやる。彼の肉棒は確かに自分の中に収められており、根元からその先の姿は見えなかった。お腹にそっと手を当てると、あの大きな熱の塊を中に感じる。
(わたしの中に、ジークハルト様のものが……)
恥ずかしい気持ちもあったが、嬉しい気もした。痛いのを我慢しながら一つに繋がったからだろうか。
「ジークハルト様」
「うん?」
「優しくしてくれて……ありがとう、ございます」
一般的なやり方を知っているわけではないが、彼が気遣いながら自分に触れてくれたのは何となくわかった。快感でマリアが戸惑っていると言葉で説明してくれて、変ではないと教えてくれた。お陰でマリアはそこまで取り乱すことなく受け入れることができた。
(今もまだ痛くて、苦しい、けど……)
何とか耐えられる痛みだ。
ジークハルトのお陰だと思う。
浅い呼吸をしながらマリアがそうお礼を述べれば、ジークハルトは目を丸くして、どくんと中のものを大きくさせた。
(んっ、どうして……?)
「ジークハルト様、いま……」
「す、すまない。俺よりも苦しくて痛いはずのあなたがあまりにも健気なことを言うから」
「わたし、何か気分を害してしまうようなことを?」
「いや、そうじゃない! こう、胸にグッときて……つまり、なんだ、興奮したということだ」
今度はマリアが目を丸くして、顔を赤くする番だった。そしてジークハルトのものをますます強く締め付けてしまう。
「っ……」
「ご、ごめんなさい!」
息を吐き、彼が大丈夫だと少し笑うように言った。うっすらと汗をかいたその表情は色っぽくて、マリアは胸がドキドキしてさらに身体が反応してしまう。
「っ……マリア……悪いが少し、動いても、いいか」
そういえば彼はずっと動いていないままだ。
もしかして馴染むまであえてじっとしておいてくれたのだろうか。
「動く必要が、あるのですね」
「ああ……そう、だな。動いて、俺のものを射精に導く」
「射精……?」
「その、子種を出すということだ」
少し言いにくそうにジークハルトは告げた。
マリアは恥ずかしいことを聞いてしまったと申し訳なく思ったが、一方でなるほどと納得した。彼の子種が自分の中に出されることで妊娠に繋がるのだなと……。
「はい。どうぞ、ジークハルト様のお好きなように動いてください」
「……あなたの純粋な善意を、変な意味に受け取ってしまいそうな自分がいる」
「え?」
「いや、ありがとう。痛かったら、腕や背中に爪を立てて教えてくれ」
そんなことできるはずがない。
しかし思わずそうしてしまうほど痛いのだろうか。
マリアが思わず弱気になりかけると、ジークハルトはゆっくりと腰を動かし始めた。
「っ……はぁ、あっ……んっ、ふ、……あぁっ」
内臓を押し上げられるような苦しさに襲われるが、呼吸を速めて必死に耐える。
やめてほしいと言えばジークハルトはもちろんそうしてくれるだろうが、迷惑になるだろうと言えなかった。それに何か言える状態ではないほど律動が速くなってくる。
「はぁっ……マリア……っ」
獣のような荒々しい呼吸が耳元で聞こえて、身体が激しく揺さぶられる。また達する時のような感じがして、ジークハルトにしがみついていた。
「あっ……ん……っ、あ、ぁっ――……」
「くっ――……」
ジークハルトは呻き声と共にグッと腰を押し付けてきた。圧し掛かられているのでマリアは逃げることもできず、びくびくと身体を震わせながらどくどくと中に注がれる子種を受け止める。
「ん、んっ……」
(いっぱい、出てる……)
射精が終わっても、ジークハルトはマリアを抱きしめたまま動かない。マリアがそうであるように疲労で動けないのかもしれない。
彼の身体は燃えるように熱くて、マリアもびっしょりと汗をかいていた。どちらも口を利けず、乱れた呼吸を整えることに専念する。
やがて体力のあるジークハルトの方が身を起こし、ゆっくりとマリアの中から分身を抜いた。
「んぅっ……」
つい変な声が出てしまったが、ジークハルトには聞こえていなかったようで、安堵する。彼の視線はマリアの下半身に縫い付けられたままで、彼女は隠すようにして起き上がった。
「大丈夫か? 出血している。痛かっただろう」
血が出ていたのを確かめて、心配したようだ。
マリアは俯いて、緩く首を振った。
「大丈夫、です……ジークハルト様が、すごく気遣ってくれたので……」
我慢できる痛みだった、と言えばいいのだろうか。今もお腹や股の間に違和感を覚えているが、無事に済んだことの安心の方が大きい。
(ジークハルト様の、妻になれた)
よかった、と思ってマリアは顔を上げた。自分を見ていたジークハルトにおずおずと微笑むと、彼は目を瞠って、汗ばんだ肌のまま抱きしめてきた。
「ジークハルト様?」
「マリア」
名前を呼ばれて、マリアは上手く言葉にできない感情に包まれる。
ヒルデの代わりとして嫁いできたこと。それなのに優しく接してもらって申し訳ない気持ち。彼に抱かれて恥ずかしい思いもたくさんしたが、すごく嬉しい気もして……。
「マリア」
もう一度名前を呼ばれて、気づけば口づけされていた。
(ジークハルト様……)
彼の妻になれた。
でも、本当に自分でいいのかという不安もあって、マリアは抱きしめ返していいかわからなかった。
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