「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう

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いっすん坊の仕事

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 確かにあの時のまんまだ。
 まるでじいちゃんが主演のテレビドラマを見ているようだった。
「二年前をそのまんま思い出したよ。なかなかいいドラマになってるよ」
「そうだろ、二年前をそのまま再現したのだからな。だが、ただの再現ドラマじゃないぞ。そのときおまえが感じたまま、その時の気持ちのまんまを、ちゃんと再現していたはずだ」
「確かに二年前のあのときにもどったみたいな気持ちだったよ。記憶の通りだった」
「自分だけじゃないぞ。昔の人だって、再現すればその人の心がちゃんと伝わるようになっておる」
「いや、自分のファイルだけだろ!他人のファイルを再現したって、その人の気持ちなんか伝わるわけがない」
「でも、さっきおじいちゃんの気持ちも伝わったんだろ?」
「そうなんだ。少し分かったような気がした。あのとき、初めてじいちゃんの涙を見たんだ。二年前には気付かなかったけど、悲しい気持ちがオレにも伝わってきた。あのじいちゃんの涙はびっくりしたよ。ドラマの主役レベルの涙だった。あのときも見たはずなんだよな。それなのに、なぜ二年前は気付かなかったんだろう。見てなかったんだな。見てたのに見てなかったんだよ」
「そう、そこなんだ、気持ちが伝わるって。そこが歴史辞典なんかとちがうところなのだ。再現されたおじいちゃんの姿から、その時のおじいちゃんの心の中までちゃんと伝わってくるんだ。ファイルで再現された光景から、人の気持ちまでちゃんと心に伝わってくるようになっているんだ」
「じいちゃんの涙にびっくりしてそう感じただけじゃないのか。じいちゃんの本当の気持ちがどうだったかは分からないよ。人の気持ちなんていい加減なんだぞ。景色を見ながら楽しそうな顔をしてたって、口先でどんな楽しいことを言ってたって、でも心の中はとてもさびしいんだ、なんてさ。人って、言ったことと思ったことが全然ちがったりするもんな。笑ってたってさびしいときはさびしいんだ。笑ってるけどさびしいんだ。この人はあの事件のときこんなことを言ってたけど、本当はこう言いたかったんですよって、親切な解説つきの歴史辞典の方がよっぽど役立つよ」
「うたぐり深いやつだな。私の再現する映像には、映し出された人たちの本当の心の中がちゃんと残され、見た者に伝わるようになっておるんだ。笑顔の裏の心の悲鳴だってちゃんと記録に残っておる」
いっすん坊は急に口調を強くした。
「私が残してきたのは、この島で生きてきた人たちの心の思いだ。真実の心だよ。誰にだって、死んだ後も残しておきたい真実の心がある。人に知られないようにずっと隠してきた本当の心だってあるんだ。本当は伝えたかったんだ。でも、言えなかった。私はそんな人の心を大切に保存するんだ。見てみろ。カベから天井まで、今生きている人たちの映像がたくさん流れているだろう。今何をしているか、何を考えているかが、こうやって映像で送られてくる。その一人ひとりの気持ちを感じとりながら大切に保存してきたんだ。亡くなったら、その人の全てを一冊のファイルにして保存する。この穴はずい分向こうまで続いているだろ。一番奥の古い時代から次の時代の人たちにつながって、やがて未来に続いていく。昔の人の心の思いが、次の時代の人につながっていくように古いファイルから順番に整理してあるんだ。人が伝えたい心の思いって、次の人に伝わって、それがまた次に伝わって、あとの時代までつながっていくものなんだ。ヨシキだって今は言えないけど、でもいつか人に伝えたい気持ちってあるはずだ。その気持ちを受け止めて、ちゃんと保存しておくのが私の務めだ」 
「伝えたい気持ちかァ・・・。オレは思い出したくないことならいっぱいあるんだよな。でも、待てよ。考えてみりゃ、記録されちゃまずいことはいっぱいあるぞ。いや、伝えてほしくないよ。逆にまずいよな。いっすん坊ってオレがどんな経験をして、その時何を考えたかって、全部知ってるんだろ?オレがボケーっと考えていたことなんかも全部知られてしまってるんだ。ちょっと変なことを思いついたってことなんかいっぱいあるぞ。なんかいやだなあ、秘密をのぞき込まれてるみたいで。そんな恥ずかしいところは記録に残さなくていいよ。恥ずかしいところがずっと残るって迷惑な話だぞ。うわっ!まずいことをいっぱい思い出しちゃった。ちょっと貸せよ、オレのファイル。消そうよ、消そう。残しちゃまずいことなんかいっぱいあるんだから」
「あっ、こら。さわるんじゃない!さっきは見られて恥ずかしいようなことはないと言っていたじゃないか。とんでもないことを考えるやつだな。いいか、触ったらおまえの歴史がなくなってしまう。歴史がなくなるってことは、おまえが存在しなかったということになるんだぞ」
「そうなのか?でも、こんな記録、人にのぞかれたりしたら恥ずかしよ。過去の失敗じゃないか。過去の恥ずかしいことなんてみんな忘れちまって、残さなくていいんだよ。いちいち過去なんて残さなくていいんだ」
「安心しろ。絶対ここの記録は人にのぞかれたりはせん。ヨシキのプライバシーはちゃんと守ってやる。人に見せるのが目的じゃないんだ。おまえが伝えたいと思うこと以外は人に伝えない」
「その、伝えたいと思うこと以外って、いっすん坊が勝手に判断するんだろ。安心しろと言ったってさ、信用できるもんか!いっすん坊はみんなの恥ずかしいことを全部知ってるんだ。ボケーっと変なことを考えてたのだって勝手に覗き込んでさ。全ての人の弱みを独り占めって、脅迫のし放題じゃないか。まるで完全無敵の支配者だよ。オレ、『このちびすけ』なんてさっき言ったぞ。あとでどんな仕返しをされるか分かったもんじゃない。そんなのずるいよ」
「ずるい?支配者だと?おかしなことを言うが、記録に残すのは私の務めだ。務めだから、いつだってヨシキの心の中を覗くのだ。こんなこと残してほしくないだろうなってことだって残さなくちゃならないからな。でも、私は人の秘密など絶対もらしたりしない。人の秘密を悪用しようなんて思ったことはない。ヨシキにちびすけと言われたくらいで仕返しなどするものか」
「信用できるもんか!オレだったら言うよ。ここを出たらすぐに言う。いっすん坊に会ったってこともさ。こんなちっぽけな体をしてるじいさんのくせに、えらくいばり散らした、いやなやつだったってこともね」
「いちいち感にさわることを言う。私を自分と一緒にするな。何でそういう風に、わざと怒らせるように挑発してくるんだ。由紀子、どう思う?本当に憎たらしい、生意気なことをいう子に育ったなあ。中学生になって生意気さが倍になったぞ。いや、いかんいかん。ヨシキとしゃべったら、憎たらしいなどと、ついこちらの品性まで落ちてしまったわい」
「憎たらしいだってよ!ははーん。やっぱりオレの本当の心なんて読み取れてないんだ。オレの心の中って意外とデリケートなんだぞ」
「ヨシキごとき単純なやつの心なんて簡単に分かるぞ。おまえはただ私を困らせてやろうと思って言いがかりをつけてるんだ」
「そうだよ。だって言いたくなるじゃないか。こんなへんてこな発見をしたんだ。正直者のヨシキだぞ。正直者のオレが秘密になんてしておれるもんか。いっすん坊のことなんかすぐに世界中に言い広げてやるさ」
「やれやれ困ったやつだ。これ以上ヨシキのペースにのって話をしたら、頭がおかしくなる。いいか、この穴から出た途端、私と出会ったことなど全て忘れてしまうようになっておる。おまえのようなやつのためにな」
「えっ、ひきょうだぞ。そんな手を使うなんて、ひきょう者!オレは言いたいぞ。言いたい、言いたい!勝手に人の記憶を消すんじゃないよ。たった今、人の気持ちは大切に保管するって言ったじゃないか。オレはこのことをみんなに知らせる責任があるんだ」
「本当に困った反抗期の中学生だ。聞き分けのない。だれのおかげで今のおまえがあると思うておるのか。よーし、今すぐおまえのこの島での記録を全て消してしまおう。そうしたら、おまえなんか最初から存在しなかったことになるんだからな」
「ほらほら、やっぱり消しちまうことが出来るんじゃないか!なら、その前にオレが自分の記録を作り替えてやる。こんなちびすけなんかオレの親指だけで押さえつけてやるぞ。自分が望んだとおりにオレの歴史を変えてやるんだ。できるんだろ。ユキちゃんだってこの穴のことを覚えていたんだ。前にここへ入ったことを忘れないでいたんだろ」
「そう、由紀子にはそれができたんだ。何でだか分からんができてしまったんだ。由紀子は大変なことをやってしまった。そんな大それたことをやっちゃあいかんのだ。でもそれをやってしまった。だから由紀子はバチがあたったんだ」
「そうなのよ。わたしにも作り替えたい過去があったの。どうしても変えたいと思ったの。絶対に変えたかったのよ。でもね、いっすん坊様に見つかって、すごくすごく叱られて、今はそのやり直しのバツを受けてるところなのよ」
「ほら、やっぱりやり直しができるんじゃないか」
「やり直しのバツって大変なのよ。毎日毎日脱皮を繰り返して、いつも心と体の汚れを清めて、新しい自分に生まれ変わり続けなきゃならないんだから」
「えっ!毎日新しい人間になるのか?毎日脱皮するのか?」
「そうなんよ。夜遅く地面からはい出してきて、木の枝に止まって朝早く脱皮するの」
「そんなバカな。またユキちゃんの妄想が始まったぞ。脱皮するなんて、そりゃあセミじゃないか」
「その通りよ、そんなものよ。そしたらね、この間穴からはい上がってきたら、セミと間違えられて、タカちゃんに捕まってしまったのよ」
「それがケンカの原因か?」
「捕まってタカちゃんちの網戸に引っかけられて、アイツいつかは眠るじゃろうから、寝静まったら変身してこっそり帰ろうと思ったんよ。ところがねえ、あいつ全然眠らんの。じーっとうちのこと見て、ご飯も食べに行かん。風呂も入らん。ずーっとくっついて目を離さんのよ。それで、もうがまんできんようになって、タカちゃんの目の前で羽化しちゃった。そうしたら、あいつがわたしのまん前にいるんじゃもの」
「そうだった。そのこともまだ解決していなかったな。そこまでばれてしもうたのだから、もうタカシには消えてもらうしかないぞ」
「えっ、いけんいけん。いっすん坊様、タカちゃんを消すなんて、絶対にいけんよ!そりゃあ絶対にいけん!そんなことになったらタカちゃんが可哀想じゃない。タカちゃんを消すなんて絶対いけん。タカちゃんは一つも悪いことないんだもの。バカなことをしたのはわたしなの。わたしだけがバツを受ければいいことよ。お願い、どうかタカちゃんは助けてあげてください」
「だから、ここに連れてこいと言うたのだ。私がタカシのその記憶だけを消してやるから」
「タカちゃんには一緒に時穴に入ってと頼んだのよ。すべて説明するからって。でもね、だめだった。だから今日はヨッちゃんに一緒に来てもらったのよ」
「なんか、またわけの分からない話になったぞ。結局オレはタカちゃんの代理なのか。オレ、元々ここに来る必要はなかったんじゃないのか?」
「ちがう、ちがうの。一番連れてきたかったのはヨッちゃん。ヨッちゃんには知っておいてもらいたいことがたくさんあったの。だから、これで良かったのよ」
「いっすん坊さん、オレからも頼むよ。タカちゃんは人の秘密をべらべらしゃべる子じゃないんだ、オレとはちがってさ。ユキちゃんからわけを説明して、『秘密にしてね』と頼まれたら絶対しゃべらないよ。真面目ないい子なんだ。だからタカちゃんはそのままにしておいてまったく平気だよ」
「ふん、人間の言うことなんか、当てになるものか。タカシが信用出来るかどうかより前に、人間なんてものを私は全く信用していない」
「そう、いっすん坊さん、その通りだよ。人間が言うことなんて、どうせ信用できないウソっぱちな話ばかりさ。それはオレもそう思う。テレビドラマと一緒で全部作り話だ。タカちゃんが、『セミがユキちゃんになった』なんてことを言ったとするだろう。でも、誰も信用したりしないよ。ウソの話に慣れっこなんだ。だれがユキちゃんが羽化したなんて信じるもんか。ついでに、オレがいっすん坊に会ったって話をしたら、余計にみんなとんでもないホラ話だと思ってしまうだろ。だから、オレの記憶も残していたって全く平気だよ。オレの話なんて誰からも信用されてないしさ」
「そりゃあ、お前みたいなおしゃべりのほら吹きが話したことなら、誰も信用せんだろう。でもな、タカシは違う。タカシはこの辺りじゃ真面目な性格で有名だからな。タカシの言うことなら、みんななんでも信用する」
「そういう言い方をするとオレが傷つくじゃないか。まあでもさ、人の評判なんてあてにならないんものなんだ。歴史だってそうなんだよ。編集したやつが都合いいように作り変えてるんだ。担任の広川が言ってたぞ。歴史の教科書だって昔とずいぶん変わってきたって。だれかがいいように作り変えてるんだよ。通知表だってそうだぞ。本当に公平に生徒を見てるんだかなんだか。別に何を書かれたからって気にしちゃいないけどさ。映像だって、どうせ都合よく切ったり貼ったりしているんだ。テレビでだれかが言ってたよ。情報番組をうのみにしちゃいけないんだ。信じていいことと、信じちゃいけないことの判断をちゃんと自分でつけなくちゃ。いっすん坊の記録だってほとんどが出まかせで、本当のことなんてほとんどない。でも、それでいいんだよ。歴史って、どうせ過去のことなんだ。真実はどうだ、なんて知る必要はないよ」
「本当にひねくれた考え方をするやつだ。学校でも、いつもそうなのか?いいか、お前たちが学校で習う歴史がウソかどうかは知らない。だが、私の記録に絶対ウソはない。私の記録にウソがあっちゃいけないのだ。必ず真実を残しておく。人の本当の心を残しておく。それは大切なことだ。私はすべて真実のままを保管してきた。繰り返して言うが、それが私の務めだ。自分の感情をはさんでなんかいない。私を動かすのは真実だ。見たままの真実を記録して残す。絶対ウソなどは記録に残さぬ」
「絶対が好きなんだなあ。オレが少し突っ込んだだけですぐ怒ってるじゃないか。そんなに怒りっぽくて何が感情なんてはさまないだ。まるでオレをからかうじいちゃんと一緒だよ」
「おいおい、じいちゃんのことまでそんな風に言うのか?」
「オレ、じいちゃんは大好きなんだぜ。怒りっぽくて、孫にすぐウソをつくし、理屈っぽいけど、でもそんなじいちゃんが大好きだ。ウソつきだって好きは好きだ。ウソつきでもいいものはいいんだよ。オレが言いたいのは、歴史なんて都合良く作り替えることができるってことだ。映像にだまされちゃいけないってことだよ。オレの見たままの世界が、オレの歴史として保存されてるんだろ。オレの見たままって、結局オレは映っちゃいないんじゃないか。オレが見た世界だって誰が証明するんだよ。第一、その時のオレの気持ちなんていっすん坊からインタビューを受けた覚えはないぞ。オレなんかに誰が興味を持つんだ。コイツはああ言ってたけど心の中はどうだったとかなんて、いちいち気にしていたらきりがないぜ。ぼーっと生きてんだよ、みんな。人の印象なんて見方しだいで全然ちがう。良いとか悪いとか、ホントかウソかなんて、結局見ているやつの気分次第でちがってくるんだ。ウソだっていいんだ。ウソかどうかを判断するのは自分なんだ」
「ああ言えばこう言う、反抗期のひねっくれ者め。おいおい由起子、付き合うのにもう疲れた。いくらおまえの頼みでも、もう知らん。なんでこんなおしゃべりを連れてきたんだ。いいか、私はいっすん坊だ。繰り返して言うぞ。私はこれまでいっすん坊としての務めを果たしてきたんだ。真実を見抜いてここに記録を残すのが私の使命だ。記録を残す目的からしておまえとはまったく関係のないことなのだ」
「目的って、過去の記録を残して未来の人に伝えるってことだろ。だから、その程度のことならいっすん坊がやらなくたってもうテレビ局がやってるし、学校の授業だって教えてるよ」
「またおかしな事を言う。私の務めは歴史を記録すること。生きてきた人たちの思いを大切に保管すること。歴史の中に一人ひとりの心をしっかり残しておくことだ。神様仏様から命じられた通り、正確な歴史を記録して保管する。そして、この島で生きてきた人たちの真実の心を残していく。それが私の務め!未来に伝えることじゃない。先のことは知らぬ。未来の人たちに伝わりやすいよう、じゅう分気を付けてはいるが、それがどういう風に伝わっていこうが、私には関係ない。」
「でも仕事ってさ、だれかの役に立つからあるんじゃないのか。みんな役に立ってるから、仕事をした分だけお金が貰えるんだ。進路の授業で担任がそんなことを言ってたぞ。真実をただ保管したままなんて、いっすん坊ってなんの役にも立っていないだろ。神や仏なんかより、人の役にたてたほうがいいんじゃないかな」
「私がどれだけ尊い仕事をしてきたかは、神様仏様がよく分かっておいでだ。人の役に立つかどうかは、未来の人がこの記録をどういう風に感じるかだ」
 いっすん坊はあぐらをかいてそこに座り、腕組みをして考え込んだ。
「よし、決めた。どんな風に感じるか分からぬが、一つだけおまえに見せてやろう。おじいちゃんが孫のおまえに伝えたい心の思いだ。若いころのおじいちゃんがどんな心の願いを持っていたか、それを再現して見せてやる。戦争が終わってすぐ後の、貧しいころの高州島だ。その頃の景色を再現するぞ。その中にじいちゃんの心がどんなふうに残されているか、自分で感じてみるといい」
 じいちゃんのファイルを開いて錫杖を振った。
 でも、これってじいちゃんのプライバシーだろ。勝手にじいちゃんの秘密を見せるのか? 

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