【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「えっ……夏休暇、遊べないのー……?」

 春の暖かな日差しが、夏のジリジリとした日差しに変わり始めた頃、リアーヌとビアンカは、あいも変わらずいつものベンチで昼食をとっていたのだがーー
 その会話の中で、間も無くやってくる夏休暇のほとんどの期間、ビアンカが王都を離れる予定だと聞かされたリアーヌは残念そうに肩を落としながら唇を尖らせた。

「そうなるわね。 こちらでのご挨拶まわりもあるからすぐには戻らないけれど、それが終わり次第領地に戻ることになっているから……」

 困ったように微笑みながら肩をすくめるビアンカ。

 リアーヌは夏休暇中一度も会えないのが、残念だと気持ちも、ちょっとくらい……とゴネてしまいそうになる気持ちが湧き上がってくるのを感じた。
 しかしそれを口にすることがなかったのは、肩をすくめるビアンカが、どこか寂しそうに視線を伏せたからだった。
 そのを姿を見て、リアーヌは自分の中にあった言葉をグッと飲み込み、堪えた。
 そして「そっか……」と短く答え、ビアンカとそっくりの仕草で肩をすくめて見せた。

「ーーむしろ貴女がそこまで悠長にしていられるほうが信じられませんわ? 挨拶回りの予定はありませんの⁇」

 ビアンカのスケジュールがここまでタイトになってしまっているのは、ひとえに婚約が決まったからだった。
 両親と共に挨拶する家に、パトリックと共に訪れる予定の家々も沢山あった。
 婚約したのが少し早いとはいえ、ほぼ同時期と言っていいリアーヌが、こんなにものほほんと夏休暇を満喫しようとしていることのほうが、ビアンカには信じられなかった。

「挨拶回り……? そんな予定ないよ⁇ 私まだ社交界デビューしてないもん」

 あっけらかんと伝えられた言葉にビアンカは自分の失言を反省すると同時に、大きく納得もしていた。

 通常であれば、高校に入学する年までに社交界デビューをはたしておくのが普通だ。
 そうでなくては『あの家は子供の教育もまともに終えられなかったーー』などと侮られる原因になるからだ。

 ーーしかしリアーヌには社交界デビューに割くような時間は残されていなかった。
 ボスハウト家の令嬢となってからすぐに始まった受験勉強ーーボスハウト家はリアーヌの社交界デビューを一年二年遅らせても、リアーヌを教養学科に入れることを優先したのだ。

 そして社交界デビューしていないのであれば挨拶回りの予定が無くてもなんの不思議も無かった。
 社交界は子供の遊び場では無い。
 デビューもしていないがいたずらに顔を出すべきでは無いのだ。
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