223 / 1,038
223
しおりを挟む
「ーーそう言われたら、用意するのも悪くない気もするけど……でも葬儀の予定もないのに買うのはなぁ……ーー誰かの不幸を願ってるみたいじゃないか」
リアーヌのうまい言い回しに大いに納得していたゼクスだったが、さらにリアーヌから言葉を引き出そうと、考えつく限りの否定の言葉を重ねた。
(ーー実際、なにを言っても頭の硬い客ってのはいるしーー……これを店内で言われて、うまく返せなければ多くの客を逃すことになりかねない……)
「……確かにそう思われても仕方がない部分もありますがーー別れの時というものは誰にでも等しく、そして多くの場合突然にやってくるものです。 いざという時に備え、事前に納得のいくものを用意しておくーーそんな心配りを“縁起の悪いもの”だなんて……私はそうは思いません」
「ーーうん。 こりゃ買うなぁ……」
ゼクスは呆然と、しかし顔を緩めながら嬉しそうに呟く。
「ーー心配りを縁起が悪いだなんて言えねぇよなぁ……? 嬢、口うまいなぁ⁇」
向かいの席ではテオが、大きな息を吐き出しながら感心したように言った。
そんなふうに褒められたリアーヌは、嬉しそうに、しかしどこか気恥ずかしそうにハニカミながら前髪をいじる。
しかしその手を一瞬で下ろすと、どこか芝居がかった口調でテオに向かって話しかける。
「ーーでもきっとお貴族様なら誰だってこのくらい出来ちゃいますよ?」
(皆ありえないくらい言葉遊びが上手だし、屁理屈捏ね出したら止まらないからね……)
この夏、初めて社交界の末端に身を置いたリアーヌは、貴族の舌戦を間近で見る機会が多かった。
口先だけで戦うことに慣れ切った貴族たちは、それはそれは口がうまくーー数々の商人を相手に値切りスキルを鍛えていた母リエンヌを持ってしても「……無理よ。 だってあの人たちどこまでいってもこっちの話聞かないんだもの……」と言わしめるものだったのだ……
(ーーまぁ、すぐに父さんのスキルで母さんのターンが回ってきて、ちゃんと交渉できたらしいけど……母さんが無理なら私に出来るわけがねぇんだよなぁ……)
そんなことを思い出し、遠い目をしているリアーヌの耳に、ケラケラと楽しそうに笑うテオの笑い声が聞こえてきた。
「マジかよ。 貴族ってすげえんだな?」
そう笑いながら上機嫌でゼクスに話しかけている。
「出来ーーる人もいそうだけど……ーー真珠のセールスなんて普通の貴族はやらないかなー……?」
「ーーえっ」
困ったように笑いながら言ったゼクスの言葉に、リアーヌは驚いて小さな声を上げた。
(……ーーこれでも普通の貴族の括りにかろうじて入っているような気がしていたのですがそれは……?)
リアーヌのうまい言い回しに大いに納得していたゼクスだったが、さらにリアーヌから言葉を引き出そうと、考えつく限りの否定の言葉を重ねた。
(ーー実際、なにを言っても頭の硬い客ってのはいるしーー……これを店内で言われて、うまく返せなければ多くの客を逃すことになりかねない……)
「……確かにそう思われても仕方がない部分もありますがーー別れの時というものは誰にでも等しく、そして多くの場合突然にやってくるものです。 いざという時に備え、事前に納得のいくものを用意しておくーーそんな心配りを“縁起の悪いもの”だなんて……私はそうは思いません」
「ーーうん。 こりゃ買うなぁ……」
ゼクスは呆然と、しかし顔を緩めながら嬉しそうに呟く。
「ーー心配りを縁起が悪いだなんて言えねぇよなぁ……? 嬢、口うまいなぁ⁇」
向かいの席ではテオが、大きな息を吐き出しながら感心したように言った。
そんなふうに褒められたリアーヌは、嬉しそうに、しかしどこか気恥ずかしそうにハニカミながら前髪をいじる。
しかしその手を一瞬で下ろすと、どこか芝居がかった口調でテオに向かって話しかける。
「ーーでもきっとお貴族様なら誰だってこのくらい出来ちゃいますよ?」
(皆ありえないくらい言葉遊びが上手だし、屁理屈捏ね出したら止まらないからね……)
この夏、初めて社交界の末端に身を置いたリアーヌは、貴族の舌戦を間近で見る機会が多かった。
口先だけで戦うことに慣れ切った貴族たちは、それはそれは口がうまくーー数々の商人を相手に値切りスキルを鍛えていた母リエンヌを持ってしても「……無理よ。 だってあの人たちどこまでいってもこっちの話聞かないんだもの……」と言わしめるものだったのだ……
(ーーまぁ、すぐに父さんのスキルで母さんのターンが回ってきて、ちゃんと交渉できたらしいけど……母さんが無理なら私に出来るわけがねぇんだよなぁ……)
そんなことを思い出し、遠い目をしているリアーヌの耳に、ケラケラと楽しそうに笑うテオの笑い声が聞こえてきた。
「マジかよ。 貴族ってすげえんだな?」
そう笑いながら上機嫌でゼクスに話しかけている。
「出来ーーる人もいそうだけど……ーー真珠のセールスなんて普通の貴族はやらないかなー……?」
「ーーえっ」
困ったように笑いながら言ったゼクスの言葉に、リアーヌは驚いて小さな声を上げた。
(……ーーこれでも普通の貴族の括りにかろうじて入っているような気がしていたのですがそれは……?)
40
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
モブ令嬢は脳筋が嫌い
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
恋愛
イーディスは海のように真っ青な瞳を持つ少年、リガロに一瞬で心を奪われた。彼の婚約者になれるのが嬉しくて「祖父のようになりたい」と夢を語る彼を支えたいと思った。リガロと婚約者になってからの日々は夢のようだった。けれど彼はいつからか全く笑わなくなった。剣を振るい続ける彼を見守ることこそが自分の役目だと思っていたイーディスだったが、彼女の考えは前世の記憶を取り戻したことで一変する。※執筆中のため感想返信までお時間を頂くことがあります。また今後の展開に関わる感想や攻撃的な感想に関しましては返信や掲載を控えさせていただくことがあります。あらかじめご了承ください。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。
さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています?
※更新について
不定期となります。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
完結しました。
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜
森 湖春
恋愛
島国ヴィヴァルディには存在しないはずのサクラを見た瞬間、ペリーウィンクルは気付いてしまった。
この世界は、前世の自分がどハマりしていた箱庭系乙女ゲームで、自分がただのモブ子だということに。
しかし、前世は社畜、今世は望み通りのまったりライフをエンジョイしていた彼女は、ただ神に感謝しただけだった。
ところが、ひょんなことから同じく前世社畜の転生者である悪役令嬢と知り合ってしまう。
転生して尚、まったりできないでいる彼女がかわいそうで、つい手を貸すことにしたけれど──。
保護者みたいな妖精に甘やかされつつ、庭師モブ子はハーブを駆使してお嬢様の婚約破棄を目指します!
※感想を頂けるとすごく喜びます。執筆の励みになりますので、気楽にどうぞ。
※『小説家になろう』様にて先行して公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる