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虎族たちとの取引が完了し、一行を見送った春鈴たちは、お茶を飲みながら茶飲み話に花を咲かせていた。
「あの孫バカにも困ったもんさね」
「テヨンのおばちゃま、ジヨン君に跡を継がせる! っていつも言ってるけど……あれ本気なのかな?」
春鈴はお茶を口に運びながら首をかしげる。
虎族の者は実力主義者が多い。
いくら孫とはいえ、どう育つか分からない、あんな小さな子共を後継者として指名するのは、だいぶ無理があると感じていた。
「アレには息子も娘もいるっていうのにねぇ……」
美羽蘭はふー……と大きく息を吐きながら、首を左右に振る。
「ようやく生まれた待望の初孫ってやつだから、可愛くて仕方ないんだろうってのは分かるけど……」
「だからって仕入れにまで連れ歩くのは、ただのバカ祖母だろう?」
呆れたようにそう言った美羽蘭の言葉に、春鈴は肩をすくめて答えを濁した。
「そういえば、龍王様が病気で里帰りしてるって話聞いた?」
「ああ、テヨンのヤツにね。 ……王都は気がよどんどる。 いかに強靭な龍族といえど、長く暮らす事は難しいだろうさね」
「――……今までは普通に暮らせていなかった……?」
「定期的に帰っていたとは思うよ? 龍族が長く龍脈から離れられるとは思えん」
「そっか……――あのさ?」
春鈴はガボクと話しをしていて、思いついたことを祖母にぶつけることにした。
「なんだい?」
「龍族って飛ぶのめっちゃ早いじゃん?」
「だねぇ」
「なら毎日里から通うのとかはダメなのかな? 龍族が全力で飛んだら王都と竜の里って十分通えちゃう気がするんだけど……」
「……毎日毎日、龍王が空を飛んでいたら確実に狙われるし、国を狙ってるヤツらは龍族がいなくなった後を見計らって、攻め込んで来るんだろうね……?」
「――あー……龍王が最強の用心棒か」
「まぁ……近衛込みで、だがね? そもそも龍王に任命される者は、龍族の中でも妖力が多いと認められた者だ。 候補にあがるだけでも強者の証だろうて」
「あ、そっか。 龍王って龍族の王族とは関係ないんだっけ?」
「いくら龍族が人間を守りたいと思っていても、自分の所の王族を龍脈のない地には追いやれまい?」
「えー? じゃあ王都の人も龍族も、龍脈が通ってないって分った上で、龍王が病期になるまで、王都で生活させてたの? それ生贄じゃん……」
「龍族が何を考えているのかまではわからないが、今代の龍王は白龍で気のよどみにも強いと言われているし――……残念ながら人間で龍脈の重要性が理解できているヤツは少ないさね……」
そう言ってズズ……とお茶をすする美羽蘭。
そんな祖母の言葉に春鈴は盛大に顔をしかめる。
「そんな……――人間だって、ずっと雨ばっかりでジメジメしてたら気が滅入るし、ずっとホコリっぽい空気吸ってたら病気になるのに⁉︎」
「ははっ それとこれを結びつけられるのは、私たちがこの目を持っているからだよ」
「――……そうなの?」
祖母の言葉に少し傷ついたような表情をして、視線を揺らす春鈴。
――春鈴は人間でありたがった。
妖力が使えることは便利に感じていたし、龍脈の力を感じることは気持ちがいいと理解していたが、それでも春鈴は人間であることを強く望んでいた。
「――その目が疎ましいかい?」
「……そんなことないよ」
「ふふ、お前は昔から嘘がヘタだね?」
「嘘じゃないし……」
「――私は疎ましかったね。あの人に……じいさんに会ってなきゃ、今でも疎ましかったんだろうさ」
「じっちゃ……?」
「ああ。じいさんはそりゃあ情熱的な人でね、結婚した後も事あるごとに口説かれたもんさね……」
(――あれ? 私は今、実の祖母にのろけられているのか……?)
「数ある口説き文句の中でも一番グッときたのが『――私は君が嫌いなその瞳も、その瞳を嫌いな君も大好きだよ』って言葉さ――どうだい? いい男だろう?」
「まぁ……悪くはないよね?」
(はっはーん? これはただの自慢だな?)
「好いた男にそう言ってもらえるなら、この目も悪くない……人生で初めてそう思えた」
ジッと指にはめられた指輪を眺め、懐かしそうに……どこか寂しそうに笑う美羽蘭。
「ばっちゃ……」
「――あんたもいつかそんな男が現れる」
「……でも、あの村の連中は、私の目は化け物みたいで気持ち悪いって」
「ははっ いつの話を引きずってるんだい?」
「だって……」
「あの村が世界の全てじゃない。男なんて国の外にもわんさかいる! あんたにゃ、人よりちーとばかし時間があるからね、気長にじっくり見極めればいいのさ」
「そう……かも?」
(せめて、こんな瞳でもいいよって言ってくれる人がいいな……)
「――さて、せっかく菓子を作ったんだ、明日は市にでも出稼ぎに行こうかね?」
美羽蘭はニヤ……と何かを企んでいるような顔つきで春鈴に笑いかける。
(……明日も菫家のヤツが来るって分かってて、家を開ける。 って言ってるな……? 私だって会うのヤだけどー!)
「いいねー! 私、月饅頭食べたい、白あんでカニの焼印ついてるやつ!」
「お前は変わらないねぇ?」
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