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第61話 求婚
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部屋の椅子に1人座らされて居住まいを正している俺と向かい合って、ティリティア、チャロアイト、クロニア、そしてモンモンが寝台や他の椅子に腰掛けている。
合計8つの瞳に凝視され、まるで吊るし上げられているみたいで、何とも息が詰まる思いだ。
「とりあえず『この男』の責任の取り方はともかく、ティリティア様はどの様にお考えなのですか? 仮にも侯爵令嬢ともあろうお方が結婚相手とするにはいささか相応しくないと思いますが…?」
まぁ恐らくクロニアの言葉は、庶民生まれの俺と貴族であるティリティアとの家柄や価値観の差を考慮しての物だろう。その懸念は尤もだと思う。
ただティリティアは父親のガルソム侯爵から勘当されたって話だから、身分的にはどうなんだろう…?
「あらクロニア、もう忘れたの? 私は実家から勘当された身で、もう貴族では無くただの尼ですよ?」
「いえ、申し上げにくいのですが、侯爵閣下は『その件』を広く公布しておりません。従って『勘当』というのもその場の勢いでのお話では無いでしょうか? 現に王城でも貴族としての扱いを受けていたのでは…?」
あ、そうなの? 確かに王城でのティリティアの扱いは、かなり丁重なものだったと考えられる。王様に面と向かって口答えしても許されるのは、街の一般市民じゃ無理だよな。
「う~ん、そうなのかしら…? でもまぁ私には『夢』がありますもの。以前ラモグの町で2人きりになった時に話した事を覚えていますか?」
うん? えっと、モンモンを迎えに町に行った時に、お尋ね者になっていた俺を除いて女2人で行ってきた時かな? あの時は終始モンモンに振り回されて、ティリティア達がどんな会話をしていたかなんて気を回す余裕は無かったな。
「あ! あれは本気で仰っていたのですか? てっきり冗談だとばかり…」
クロニアのリアクションはずいぶん意味深だ。何やらティリティアの夢ってのは冗談みたいに壮大な物らしい。でもそれと俺と何の関係があるんだ?
「もちろん本気ですわ! そして今の事態も想定内です… 勇者様!!」
「は、はい。何でしょうか…?」
良く分からないがクロニアとの話をブチ切って、いきなりティリティアがこちらに話を振ってきた。反射的に丁寧語で答えてしまう。
「今じゃなくても構いません。第一夫人でなくても構いません。でもいつか… いつか私を娶って『この子』と共に人生を歩ませて頂けませんか…?」
まだ全然スリムなお腹を押さえたティリティアの逆プロポーズは、その場にいる俺達全員の動きを凍りつかせた……。
☆
「な、なぁチャロアイト…」
「何かしら?」
ティリティアからのプロポーズに対して、当然次は俺の答えの番なのだが、ここでいくつか確認しなければならない事がある。そしてこの事を相談できる相手は、この場においてはチャロアイトしか居なかった。
「ちょ、ちょっと2人で話せないか…? お前らちとスマン…」
俺はクロニア達に背を向けてチャロアイトと共に部屋の隅に移動、密談の陣形をとる。後ろに3人の不満げな雰囲気は感じるが、今は後回しだ。
「何で私? いま声を掛けるならティリティア嬢でしょ?」
「俺の素性に一番詳しいのがお前だから、お前の意見を聞かせて欲しいんだよ…!」
まず『戸籍の無い俺はこの地で結婚なんて出来るのか?』だ。チャロアイトは以前、国の戸籍を調べたと言っていた。根無しの風来坊たる俺の存在を、法的にどう現実化するのか?
次に貴族の娘であるティリティアと、どう頑張ってもただの平民である俺との身分差婚は可能なのか? 仮にティリティアが貴族で無くなっていたとしても、社会的地位のある神官と俺みたいな根無(以下略)。
「あ~、『別の世界から来た』っていう設定はまだ生きてるのね… う~ん、生まれに関してはもう『母親が暴漢に犯されて妊娠、出産したけど捨てられちゃった孤児』って事にしちゃえば良いんじゃないかしら…? 結構多いのよ、そういう子…」
なるほどね、身寄りが無いのは確かだから『孤児』出身てのは悪くない。だけど『設定』って何だよ『設定』って。こちとら真面目に異世界転生してるんだよ。
「次の問題も冒険者としてのランクが、この国ではそれなりに社会的信用度を兼ねているから、高い身分との婚姻も、ランクが高ければ嫉妬はされても妨害まではされないと思うわ」
こちらもなるほど。今のランクが『3』だから、貴族と結ばれるならやはり4や5にはなっておきたい所だな。
「そういう訳でお貴族様と結婚したいなら、もっとお仕事頑張りましょうという話ね。なんなら今から仕事依頼の話をしても良いわよ?」
チャロアイトの目が楽しそうに細くなる。奴の好ましい方向に話が進みつつあるからだろう。
とりあえずチャロアイトの言葉を信用するなら、俺がこの世界で誰かと結婚するのは『可能』らしい。
「あの… お話しは終わりまして?」
俺達2人の会話のタイミングと空気を読んだのか、ティリティアが声をかけてきた。うん、まぁ当面の疑問は晴れたかな?
ティリティア達に向き直ると、今度はクロニアが何かを言いたそうにモジモジしている。何だろうか?
「あ、あの… 私もお前に操を捧げて今日まで一緒に頑張ってきたつもりだ… お前がティリティア様と結婚するというのなら、そ、その… 私はどうなるのだろうか…? 捨てられてしまうのか…?」
えーっ?! クロニアまで『捨てられた仔犬の目』でそんな事を言い出すのか? とりあえずティリティアは『ランク5になるまで待ってくれ』と言っておけば当座の問題の先延ばしが出来るのだが、クロニアはちょっと面倒くさいぞ……。
答えに窮する俺を見て、ティリティアが楽しそうにクロニアに抱きつく。
「じゃぁーあ、私達2人まとめて貰って頂きましょう!」
え? いきなり重婚? そんなん可能なの…?
「あー、ズルい! それじゃあ私も仲間に入れて!」
おいチャロアイト、なぜそこでお前もクロニアに抱きついて乱入してくる?
「あーあ、ベルモ姐さんがこの騒ぎを知ったらどう思うかなー?」
おいやめろモンモン、これ以上事態をややこしくしないでくれ。
「あ、ちなみに貴族として男爵以上の身分になれば配偶者を複数持てるようになるわよ?」
チャロアイトのありがたい解説が来た。武功を上げて貴族になれってか。この俺に…?
合計8つの瞳に凝視され、まるで吊るし上げられているみたいで、何とも息が詰まる思いだ。
「とりあえず『この男』の責任の取り方はともかく、ティリティア様はどの様にお考えなのですか? 仮にも侯爵令嬢ともあろうお方が結婚相手とするにはいささか相応しくないと思いますが…?」
まぁ恐らくクロニアの言葉は、庶民生まれの俺と貴族であるティリティアとの家柄や価値観の差を考慮しての物だろう。その懸念は尤もだと思う。
ただティリティアは父親のガルソム侯爵から勘当されたって話だから、身分的にはどうなんだろう…?
「あらクロニア、もう忘れたの? 私は実家から勘当された身で、もう貴族では無くただの尼ですよ?」
「いえ、申し上げにくいのですが、侯爵閣下は『その件』を広く公布しておりません。従って『勘当』というのもその場の勢いでのお話では無いでしょうか? 現に王城でも貴族としての扱いを受けていたのでは…?」
あ、そうなの? 確かに王城でのティリティアの扱いは、かなり丁重なものだったと考えられる。王様に面と向かって口答えしても許されるのは、街の一般市民じゃ無理だよな。
「う~ん、そうなのかしら…? でもまぁ私には『夢』がありますもの。以前ラモグの町で2人きりになった時に話した事を覚えていますか?」
うん? えっと、モンモンを迎えに町に行った時に、お尋ね者になっていた俺を除いて女2人で行ってきた時かな? あの時は終始モンモンに振り回されて、ティリティア達がどんな会話をしていたかなんて気を回す余裕は無かったな。
「あ! あれは本気で仰っていたのですか? てっきり冗談だとばかり…」
クロニアのリアクションはずいぶん意味深だ。何やらティリティアの夢ってのは冗談みたいに壮大な物らしい。でもそれと俺と何の関係があるんだ?
「もちろん本気ですわ! そして今の事態も想定内です… 勇者様!!」
「は、はい。何でしょうか…?」
良く分からないがクロニアとの話をブチ切って、いきなりティリティアがこちらに話を振ってきた。反射的に丁寧語で答えてしまう。
「今じゃなくても構いません。第一夫人でなくても構いません。でもいつか… いつか私を娶って『この子』と共に人生を歩ませて頂けませんか…?」
まだ全然スリムなお腹を押さえたティリティアの逆プロポーズは、その場にいる俺達全員の動きを凍りつかせた……。
☆
「な、なぁチャロアイト…」
「何かしら?」
ティリティアからのプロポーズに対して、当然次は俺の答えの番なのだが、ここでいくつか確認しなければならない事がある。そしてこの事を相談できる相手は、この場においてはチャロアイトしか居なかった。
「ちょ、ちょっと2人で話せないか…? お前らちとスマン…」
俺はクロニア達に背を向けてチャロアイトと共に部屋の隅に移動、密談の陣形をとる。後ろに3人の不満げな雰囲気は感じるが、今は後回しだ。
「何で私? いま声を掛けるならティリティア嬢でしょ?」
「俺の素性に一番詳しいのがお前だから、お前の意見を聞かせて欲しいんだよ…!」
まず『戸籍の無い俺はこの地で結婚なんて出来るのか?』だ。チャロアイトは以前、国の戸籍を調べたと言っていた。根無しの風来坊たる俺の存在を、法的にどう現実化するのか?
次に貴族の娘であるティリティアと、どう頑張ってもただの平民である俺との身分差婚は可能なのか? 仮にティリティアが貴族で無くなっていたとしても、社会的地位のある神官と俺みたいな根無(以下略)。
「あ~、『別の世界から来た』っていう設定はまだ生きてるのね… う~ん、生まれに関してはもう『母親が暴漢に犯されて妊娠、出産したけど捨てられちゃった孤児』って事にしちゃえば良いんじゃないかしら…? 結構多いのよ、そういう子…」
なるほどね、身寄りが無いのは確かだから『孤児』出身てのは悪くない。だけど『設定』って何だよ『設定』って。こちとら真面目に異世界転生してるんだよ。
「次の問題も冒険者としてのランクが、この国ではそれなりに社会的信用度を兼ねているから、高い身分との婚姻も、ランクが高ければ嫉妬はされても妨害まではされないと思うわ」
こちらもなるほど。今のランクが『3』だから、貴族と結ばれるならやはり4や5にはなっておきたい所だな。
「そういう訳でお貴族様と結婚したいなら、もっとお仕事頑張りましょうという話ね。なんなら今から仕事依頼の話をしても良いわよ?」
チャロアイトの目が楽しそうに細くなる。奴の好ましい方向に話が進みつつあるからだろう。
とりあえずチャロアイトの言葉を信用するなら、俺がこの世界で誰かと結婚するのは『可能』らしい。
「あの… お話しは終わりまして?」
俺達2人の会話のタイミングと空気を読んだのか、ティリティアが声をかけてきた。うん、まぁ当面の疑問は晴れたかな?
ティリティア達に向き直ると、今度はクロニアが何かを言いたそうにモジモジしている。何だろうか?
「あ、あの… 私もお前に操を捧げて今日まで一緒に頑張ってきたつもりだ… お前がティリティア様と結婚するというのなら、そ、その… 私はどうなるのだろうか…? 捨てられてしまうのか…?」
えーっ?! クロニアまで『捨てられた仔犬の目』でそんな事を言い出すのか? とりあえずティリティアは『ランク5になるまで待ってくれ』と言っておけば当座の問題の先延ばしが出来るのだが、クロニアはちょっと面倒くさいぞ……。
答えに窮する俺を見て、ティリティアが楽しそうにクロニアに抱きつく。
「じゃぁーあ、私達2人まとめて貰って頂きましょう!」
え? いきなり重婚? そんなん可能なの…?
「あー、ズルい! それじゃあ私も仲間に入れて!」
おいチャロアイト、なぜそこでお前もクロニアに抱きついて乱入してくる?
「あーあ、ベルモ姐さんがこの騒ぎを知ったらどう思うかなー?」
おいやめろモンモン、これ以上事態をややこしくしないでくれ。
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