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第100話 ウルカイザー大公国
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ウルカイザー大公国は俺達の拠点であるバルジオン王国の南に位置する国で、その東側はバルジオン同様『虚無』に接しており、魔物の侵入に苦慮している。
南は海で大陸の南端にある国の様だ。その為か肉類中心のバルジオンと比べて、海産物がよく流通しているらしい。俺も美味い魚が食えるのならば嬉しい限りだ。
西側にはクライナー王国があり、クライナーとウルカイザー両国は古くからの盟友関係にある。逆にバルジオンに対してはかなり強い嫌悪感があり、年に何度も国境線で衛兵隊同士の紛争が起きている。
それもそのはず、俺達とも縁の深いミア姫の母親である先王ガーリャ1世は、ウルカイザーから婿を取る予定で婚約が成されていたのだが、冒険者出身の現カーノ国王がガーリャ姫と恋に落ち、一方的に破談とされてしまった。
婿候補だった大公の長男坊は、女に振られた不名誉を雪ぐ為か、あるいは単なる自暴自棄かで『虚無』攻撃隊をウルカイザー単独で編成し出征、その作戦中に魔物の反撃に遭い戦死したそうだ。
この様に、面子と世継ぎを潰されたウルカイザーの国民は、もれなく揃ってバルジオンに恨みを抱いている、という訳だ。
もちろんバルジオン側にも言い分はある。バルジオンで起きた内戦の裏に、実はウルカイザーが暗躍していた事はほぼ確定しており、国を混乱させた罪をバルジオンはウルカイザーに問うている。まぁウルカイザーは知らぬ存ぜぬを繰り返しているが。
ちなみにミア姫の婚約者はクライナーの王子であり、これは2人を結婚させる事でクライナー側を懐柔し、ウルカイザーとクライナーの関係に楔を打ち込もうというバルジオン側の思惑もある。
もちろんウルカイザーとしてはそんな動きは容認出来るはずもなく、バルジオンとウルカイザーは友好の機会すら無く現在に至る、という訳だ。
☆
関所の近くに乗り合い馬車が停まっており、それを使って首都まで行けるらしい。馬はバルジオンに置いてきたから、この様なサービスがあるのは助かる。
安い料金では無かったがバルジオンには無かったよな、こういうシステム。
さて、俺がバルジオン王国からウルカイザー公国に入って、馬車に揺られながら抱いた感想は、『どっちも大して変わらないな』であった。
まぁ宗教も技術レベルも変わらないなら、文化や風俗、町並みも川ひとつ隔てたくらいでそうそう変わる物ではない。町の所々に立っている衛兵隊の装備デザインと、互いに掲げる旗の模様が違うくらいな物だ。
アニメやゲームでは、西洋ファンタジーの世界から山1つ越えたらアラビア風だったりオリエンタル風だったりする事がよくあるが、そんな極端な事は実際には起こらないもんな。
俺達を乗せた馬車は乗ってから4、5 時間だろうか? 特に問題も無く、夕方直前くらいのタイミングで目的地に到着した。
ウルカイザーの首都とされる街『イソーベ』は、バルジオにこそ及ばないものの、俺が最初に訪れたラモグの町なんかより、よほど巨大な規模を誇っていた。
バルジオ同様の堅牢そうな城壁に囲まれており、その四方にはやはりバルジオ同様にそれぞれ関所が設置されている。
いつもの様に通行税を支払い、背中の魔剣に封をする。その際「自衛用の大きさではない」と因縁を付けられて剣を没収されそうになる事件があったのだが、チャロアイトの執り成しで大事に至らずに済んだ。
俺としては魔剣を取り上げられたら諸々のチートも全て消えてしまうので、それは即人生の終わりを意味する。多分通常会話すら満足に出来なくなるはずだ。
これは「暴れるシーンか?」と魔剣の柄に手が伸びる。
「もぉダメよ。荒事は控える様に言ったでしょ?」
緊張する俺と衛兵の間に入ったのはチャロアイトだった。だってケンカ売ってきたのは衛兵だし、魔剣を手放したら俺が昼行燈なのチャロアイトも知ってるだろうにさ。
「ごめんなさい。この人は私の護衛なんです。女一人で外国に来るのも少し恐ろしくて…」
と衛兵に甘える仕草を見せ、そのドサクサに紛れて何かを衛兵に手渡した。多分賄賂だな。
「ふん、まぁ『公用』とあれば余計な騒動は起こすまい。だが万一があれば女、お前も容赦しないからな?」
てな感じの負け惜しみを吐いて衛兵は持ち場に戻って行った。俺の剣を質屋に売って手にしようとしていた酒代が別口から入ってきたので『容赦』してくれたみたいだ。全くもってありがたいねぇ……。
「2、3人なら魔術より小銭の方が手軽で確実なの。貴方の出番はずっと後。それを忘れないで…」
俺が何かを聞く前にそうボヤいたチャロアイトに手を引かれ、俺はウルカイザーの首都に足を踏み入れた。
☆
イソーベの街並みは本当にバルジオと変わり無い。パンやら野菜やらの屋台が並び、市場は活気に溢れている。
女達は夕飯の材料を買うついでに井戸端会議に興じ、時々子供たちが笑い騒ぎながら道を横切っていく様を見るに、治安は良く伝染病が流行らない程度の衛生環境にあるのが見て取れる。
もちろんこれはアッパータウンである城塞都市の中央部の話であり、外壁近くの沿革部分には難民と思しき集落や、手癖の悪そうな雰囲気の一団を結構見かけた。その辺はバルジオにももちろん居るが、バルジオより多く見えたかも知れない。
俺とチャロアイトはイソーベで最も高級らしい『竜の尻尾亭』という宿屋を拠点にする事に決め、旅路の疲れを癒すべく晩餐を摂っていた。
尤もラモグやバルジオでもそうだったが、魔剣の力で料理の原材料の名前が分かっても、俺の頭の中でそれが日本語訳されず意味が分からない。
従って料理の名前から提供される商品のイメージがまるで掴めないので、注文はチャロアイトに任せきりになる。
俺の魔剣の能力の1つである『謀略』は、こういった生活全般の知識はほとんど授けてはくれない。転生する際にインチキ女神から言われた「どんな無理難題も解決できる」は明らかに誇大表現だったよね。悪巧みとちょっとしたネット検索レベルの使い道しか無いよね。
まぁそれでも結構助かってはいたけどさ……。
「今日はまだ少し早いけど、このまま部屋に戻って休みましょう。明日からの作戦を立てる必要もあるしね」
高級宿の割には泥臭い魚料理を途中で切り上げて、俺とチャロアイトは部屋に戻る事にした。
「貴方を独り占め出来るなんて久し振りだわ。ふふ、今夜も楽しみましょうね…」
チャロアイトの目が怪しく光る。やれやれ、作戦どころか寝かせてもらえるのだろうか…?
南は海で大陸の南端にある国の様だ。その為か肉類中心のバルジオンと比べて、海産物がよく流通しているらしい。俺も美味い魚が食えるのならば嬉しい限りだ。
西側にはクライナー王国があり、クライナーとウルカイザー両国は古くからの盟友関係にある。逆にバルジオンに対してはかなり強い嫌悪感があり、年に何度も国境線で衛兵隊同士の紛争が起きている。
それもそのはず、俺達とも縁の深いミア姫の母親である先王ガーリャ1世は、ウルカイザーから婿を取る予定で婚約が成されていたのだが、冒険者出身の現カーノ国王がガーリャ姫と恋に落ち、一方的に破談とされてしまった。
婿候補だった大公の長男坊は、女に振られた不名誉を雪ぐ為か、あるいは単なる自暴自棄かで『虚無』攻撃隊をウルカイザー単独で編成し出征、その作戦中に魔物の反撃に遭い戦死したそうだ。
この様に、面子と世継ぎを潰されたウルカイザーの国民は、もれなく揃ってバルジオンに恨みを抱いている、という訳だ。
もちろんバルジオン側にも言い分はある。バルジオンで起きた内戦の裏に、実はウルカイザーが暗躍していた事はほぼ確定しており、国を混乱させた罪をバルジオンはウルカイザーに問うている。まぁウルカイザーは知らぬ存ぜぬを繰り返しているが。
ちなみにミア姫の婚約者はクライナーの王子であり、これは2人を結婚させる事でクライナー側を懐柔し、ウルカイザーとクライナーの関係に楔を打ち込もうというバルジオン側の思惑もある。
もちろんウルカイザーとしてはそんな動きは容認出来るはずもなく、バルジオンとウルカイザーは友好の機会すら無く現在に至る、という訳だ。
☆
関所の近くに乗り合い馬車が停まっており、それを使って首都まで行けるらしい。馬はバルジオンに置いてきたから、この様なサービスがあるのは助かる。
安い料金では無かったがバルジオンには無かったよな、こういうシステム。
さて、俺がバルジオン王国からウルカイザー公国に入って、馬車に揺られながら抱いた感想は、『どっちも大して変わらないな』であった。
まぁ宗教も技術レベルも変わらないなら、文化や風俗、町並みも川ひとつ隔てたくらいでそうそう変わる物ではない。町の所々に立っている衛兵隊の装備デザインと、互いに掲げる旗の模様が違うくらいな物だ。
アニメやゲームでは、西洋ファンタジーの世界から山1つ越えたらアラビア風だったりオリエンタル風だったりする事がよくあるが、そんな極端な事は実際には起こらないもんな。
俺達を乗せた馬車は乗ってから4、5 時間だろうか? 特に問題も無く、夕方直前くらいのタイミングで目的地に到着した。
ウルカイザーの首都とされる街『イソーベ』は、バルジオにこそ及ばないものの、俺が最初に訪れたラモグの町なんかより、よほど巨大な規模を誇っていた。
バルジオ同様の堅牢そうな城壁に囲まれており、その四方にはやはりバルジオ同様にそれぞれ関所が設置されている。
いつもの様に通行税を支払い、背中の魔剣に封をする。その際「自衛用の大きさではない」と因縁を付けられて剣を没収されそうになる事件があったのだが、チャロアイトの執り成しで大事に至らずに済んだ。
俺としては魔剣を取り上げられたら諸々のチートも全て消えてしまうので、それは即人生の終わりを意味する。多分通常会話すら満足に出来なくなるはずだ。
これは「暴れるシーンか?」と魔剣の柄に手が伸びる。
「もぉダメよ。荒事は控える様に言ったでしょ?」
緊張する俺と衛兵の間に入ったのはチャロアイトだった。だってケンカ売ってきたのは衛兵だし、魔剣を手放したら俺が昼行燈なのチャロアイトも知ってるだろうにさ。
「ごめんなさい。この人は私の護衛なんです。女一人で外国に来るのも少し恐ろしくて…」
と衛兵に甘える仕草を見せ、そのドサクサに紛れて何かを衛兵に手渡した。多分賄賂だな。
「ふん、まぁ『公用』とあれば余計な騒動は起こすまい。だが万一があれば女、お前も容赦しないからな?」
てな感じの負け惜しみを吐いて衛兵は持ち場に戻って行った。俺の剣を質屋に売って手にしようとしていた酒代が別口から入ってきたので『容赦』してくれたみたいだ。全くもってありがたいねぇ……。
「2、3人なら魔術より小銭の方が手軽で確実なの。貴方の出番はずっと後。それを忘れないで…」
俺が何かを聞く前にそうボヤいたチャロアイトに手を引かれ、俺はウルカイザーの首都に足を踏み入れた。
☆
イソーベの街並みは本当にバルジオと変わり無い。パンやら野菜やらの屋台が並び、市場は活気に溢れている。
女達は夕飯の材料を買うついでに井戸端会議に興じ、時々子供たちが笑い騒ぎながら道を横切っていく様を見るに、治安は良く伝染病が流行らない程度の衛生環境にあるのが見て取れる。
もちろんこれはアッパータウンである城塞都市の中央部の話であり、外壁近くの沿革部分には難民と思しき集落や、手癖の悪そうな雰囲気の一団を結構見かけた。その辺はバルジオにももちろん居るが、バルジオより多く見えたかも知れない。
俺とチャロアイトはイソーベで最も高級らしい『竜の尻尾亭』という宿屋を拠点にする事に決め、旅路の疲れを癒すべく晩餐を摂っていた。
尤もラモグやバルジオでもそうだったが、魔剣の力で料理の原材料の名前が分かっても、俺の頭の中でそれが日本語訳されず意味が分からない。
従って料理の名前から提供される商品のイメージがまるで掴めないので、注文はチャロアイトに任せきりになる。
俺の魔剣の能力の1つである『謀略』は、こういった生活全般の知識はほとんど授けてはくれない。転生する際にインチキ女神から言われた「どんな無理難題も解決できる」は明らかに誇大表現だったよね。悪巧みとちょっとしたネット検索レベルの使い道しか無いよね。
まぁそれでも結構助かってはいたけどさ……。
「今日はまだ少し早いけど、このまま部屋に戻って休みましょう。明日からの作戦を立てる必要もあるしね」
高級宿の割には泥臭い魚料理を途中で切り上げて、俺とチャロアイトは部屋に戻る事にした。
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