まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや

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第三章

第36話 いのうばとる

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 智子の露出が増えると同時に、智子から噴出されるオーラとでも言える『圧力』が飛躍的に増加した。

 状況が飲み込めずに眉をひそめつつ様子を窺う久子。
『あ~あ、やっちゃったよ』という体で頭を抱えるいのり。
 そして 漲みなぎる力に恍惚とした表情を見せる智子。

「あ~、久し振り… この解放感と力が体を巡る感覚、最っ高…」

 智子の元から赤い髪が更に赤みを増し、智子から沸き立つ闘気になびくように揺れる。加えて何故かは分からないが、智子の肘と踵から火が吹き出している様にも見える。

『…よく分かんないけど、これ絶対人外レベルに強い奴だ… 昨日の悪川興業とかいう連中の仲間なのかな? どうしよう? 睦美さまは居ないし、私がつばめちゃんを守らないと…」

 そう考えた久子は一つの決断をする。背に腹は替えられない。

変態メタモルフォーゼ!!」

 首のリボンが全身を覆い、そこから変態した久子が現れる。これで魔力のロスを防ぎつつ戦えるだろう。様子見として10倍の強化を自身にかける久子。

 今度は智子らが驚く番だった。

「え? 何そのフリフリの格好? それ聖服じゃないの? うちらと同じ『能力者』じゃないっぽいね…?」

 智子の問いに久子が答えたのはただ一言、「問答無用だよ」だった。

 魔法で戦う久子と、『聖服』という謎のワードが関係していると思われる智子らの第2ラウンドの開始である。

 一気に距離を詰めた智子が久子を殴ろうと拳を大きく振りかぶる。プロレスにおいてパンチは反則なのだが、お構いなしに智子は一撃を放つ。

 しかしパンチを打つ時に大きく振りかぶるのは悪手である。「これからパンチしますよ」とアピールするテレフォンパンチは容易に回避する事が出来る。

 久子もそのつもりでパンチを掻い潜り、先程と同様に組み付いて投げに移行しようと考えていた。
 しかし智子の拳は久子の予想を超えて、久子の直前で大きくスピードを増したのだ。

 智子の速く重い拳が久子の顔面を捉える。予想外の速度と痛みに一瞬気を取られる久子。

『…強化度合いを上げておいて良かった。もし5倍のままだったら一発で昇天してたかも…』

 久子は智子の攻撃の仕組みを解明するべく両腕でガード姿勢を取る。盾となる腕は注入する魔力を増量し20倍まで固める。

「そらそらどしたぁっ!」

 嬉々とした表情で久子のガードをパンチ連打で破ろうとする智子。肘に灯った炎は飾りではなく、インパクトの瞬間に火を吹きブーストの役目を果たしていた。すると踵の炎は…?

「おらぁっ!」

 踵から炎を吹き上げた智子のハイキックが遂に久子のガードを打ち破った。無防備になった久子に智子のトドメのブーストパンチが打ち込まれようとしていた……。


 一方、睦美の魔法の効果が切れ、鈍い痛みと共に意識を取り戻したつばめ。リング脇のマットに寝かされて1人放置されていた事を理解する。当然睦美が不二子を呼びに行った事など知る由もない。
 やがて記憶が徐々に鮮明になり、試合中に視界が半回転して脳天に強い衝撃を受けた所までは思い出した。

『超頭痛い… 気持ち悪い… 凄い吐きそう… 助けて…』

 ここまで思ってつばめは1つの疑問を抱く。

『わたしの魔法って自分にかけたらどうなるんだろう…?』

 期待通りの結果にはならないかも知れない。余計に悪い結果になるかも知れない。しかしつばめの口は考えるよりも先に動いていた。自らの額に右手を当て呪文を唱える。

「東京特許許可局許可局長…!」

 何よりも痛みを取りたいので、迷う事なくヴァージョンBだ。

 するとみるみる痛みが引いていき、意識が鮮明になってきた。
 自分にも回復魔法は有効な様だ。尤も頭のダメージは健在なのだから、しばらくは安静にしておく必要があるだろう。

 意識が周りを認識出来る様になった辺りでつばめに近づく人影があった。対戦相手の土岐ときいのりだ。
 智子が制御不能になったので、打つ手無しと判断し、智子を見限ってつばめの介抱にやってきたのだ。

「大丈夫? 動かないでね…」

 いのりはそう言うとつばめの額に手を当てて何かを念じ始める。すると何も無かった筈のつばめの額といのりの手の間に粘土の様な物質が突然現れた。

『え? これなに? 土? 粘土…?』

 急な事に驚いたつばめだが、その粘土の感触の意外な心地よさに心が落ち着いていくのを感じた。

「ぶつけたダメージは治したと思うけど、とりあえずは安静にしておいてね…」

『治した』、確かにそう言った。つまりこの土岐いのりという少女もつばめ同様に回復能力を持っている、という事なのであろう……。

「あの、女子レスリング同行会って一体…」

 つばめが体を起こし、いのりに問いを投げかけようとした瞬間、智子の「おらぁっ!」という声が響いて久子のガードが弾けた様に破られた。

 久子の顔に余裕の色は無い。本気のピンチだ。20倍で固めたガードを破った技をもう一度食らえば大ダメージは免れない。最悪、重傷や死亡などと言った結果もありうるだろう。

 覚悟を決めた久子の顔面に、今智子の拳が打ち込まれようとする… 直前に智子の全身はスライムを連想させる無色透明のゲル状の物体に包まれていた。

 身動きが取れないどころか呼吸すらも封じられて藻掻く智子。暫く暴れていたが、やかて力尽きた様にスライムの中でグッタリとしてしまった。

「…何だか嫌な予感がして来てみれば、何事なの?!」

 リングの傍らには長身で長髪、腕を組んで不機嫌さを顕にした上品そうな女生徒が立っていた。
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