まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや

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第三章

第37話 けっちゃく

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「なるほど、部員争奪戦ねぇ… 状況は大体わかりました。とりあえず『智子うちのこがバカでゴメンナサイね』と言っておきます。後でちゃんとお仕置きしておきますので」

 暴走する智子を止めた謎の美女、彼女は女子レスリング同好会の最後の一人、みぎわ 奈津美なつみだった。

 現在はマジボラ、女子レスリング同好会、そして不二子がリングの上で車座に座って話をしていた。
 そこで色々と互いの事情を話し合って理解を深めている最中なのだ。

 ここで今更マジボラ側の事情を書く事はしないが、女子レスリング同好会の方は説明しない訳にはいかないだろう。

 綿子を除く彼女らは、土水火風の自然の力をその身に宿し、古来から互いに覇権をかけて戦う『能力者』と呼ばれる人種らしい。

 そしてその能力は裸に近い程に強く発現し、自制力の低い未熟な能力者が高い露出を晒すと、揺り返した力が暴走し自らの体を害する事も少なくないそうだ。

 そういった危険を回避、あるいは予防する為に作られたのが『聖服』と呼ばれる特殊な服である。聖服を着る事で能力の発現が抑制されて、一般の日常生活を送る事が可能となる。
能力者は恒常的に『聖服』を着て生活している訳だ。

 智子が試合中にレオタードを引きちぎったのは、聖服であるレオタードの拘束から逃れ、『本気で』久子に向き合う為であり、決して智子が露出趣味の痴女だった訳ではない。

『古来から』と前述したが、彼女らの力の源は血縁である事が多く、その能力も名字の中に『土水火風』の文字がそのまま使われていたり、漢字の部首に使われていたりする事から凡《おおよ》そ推し量られた。

土岐とき』いのり
『炉』縁智子
『汀』奈津美
 と名前から各々の『能力』が容易に推測出来るであろう。

 中でもいのりの様に部首では無く土水火風の文字が直接名字に使われている者は『名家』である事が多く、智子は久子の『土方』を土属性の名家と勘違いして執拗に勧誘していた、という訳である。

「まったく、一方的に試合を組んで格闘技素人の1年生を怪我させるなんてどういうつもり?」

 奈津美が智子に詰め寄る。一応部長は智子で奈津美は副部長、しかも普段練習に顔を出さない幽霊部員なのだが、立場は奈津美の方が強いらしい。

 それと言うのも能力者には土水火風の属性による4すくみの相性があり、火属性の智子は水属性の奈津美にはどう逆立ちしても勝てない関係にあった。

「だってしょうがないじゃん! いきなり大事な新入部員を…」

 智子の弁解は奈津美の微笑み、更に人差し指を口元に立てる仕草に中断される。

「智子… メッ」

 動きは優しいがそこから醸される『圧』は途轍もない物があった。顔を青くして口をつぐむ智子、それ程までに奈津美は智子にとって恐ろしい相手なのだ。

「いのりちゃんが居たから事無きを得たけど、救急車呼ぶ案件になったら同好会は無くなっちゃうのよ?」

「ハイ、ゴメンナサイ…」

 小さくなる智子、この場は完全に奈津美の独壇場となっている。本来なら睦美がもっとクレーマー体質を表面に出すのだが、奈津美がマジボラ側で智子を説教している為に敢えて沈黙を守っていた。

「レスリング同好会としては新見さんの移籍は承服できかねます。しかし、新見さんが望むのであれば有事の際の助っ人としてなら貸し出すにやぶさかではありません」

「ちょっと奈津美、部長のあたしを差し置いてなに勝手に…」

「…メッ」

「…ハイ」

 どうやら女子レスリング同好会側では意見統一できたようである。そして…

「あたしには先輩達みたいな変な・・『能力』は無いから、もしつばめっちの言う様に魔法が使えるって言うなら使える様になってみたいです。あたしだけ何も無いのは寂しいので…」

 と綿子も言ってくれた。正式メンバーでは無く助っ人扱いだが、綿子の加入が決定した。

「まぁ何はともあれ死人が出なくて良かったわ。アンタみぎわとか言ったっけ? 話の通じる人で良かったよ」

「いえいえ、これを機会に純粋に土方さんをスパーリングパートナーとしてこちらの助っ人としてお誘いしたいわ」

 睦美と奈津美の会話は聞く限りはとても穏便なのだが、何故かその場の雰囲気は何やら高圧電流が走っている様なキナ臭さがあった。

 ☆

 さて、部室に戻ってきたマジボラ一同&レンタルされてきた綿子&しれっとソファーに座って居る不二子。

「んで、なんで不二子アンタまでついてきてんのよ?」

「わ、私だって新しい子の魔法は興味あるのよ、良いでしょ別に。ここまで来て仲間外れにしないでよ」

 と言う訳で不二子も同席する事になった。

 睦美から例の変態バンドを渡されて、躊躇いもなく右の手首に巻く綿子。通常であれば今頃綿子の頭の中には、綿子専用の魔法の呪文が響いているはずである。

 バンドを巻いて難しい顔をしていた綿子が、顔を上げてつばめに告げる。

「なんか『キャリーパミュパミュ』を3回唱えろって聞こえた…」
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