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Case.04【虚ろな影】
day6.1─慧眼─
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翌週、月曜日の放課後。
窓の外に夕陽が傾き、部室の中を赤く染めていた。
机の上には、史桜が用意した資料や、ノートPC。
絢葉は史桜の正面に腰を下ろし、軽く深呼吸をした。
「……それじゃ、ここまでの整理をしようか」
史桜が静かに言った。
「まず最初に起きたのは、無人の放送室から音楽が流れた件。曲は体育祭で使用される予定のBGM。放送室に人が入ると、音は止む。次に確認されたのは、放送機器のデスク下に取り付けられた謎の装置と配線。そして──音楽と同時に出現し、やがて消える“動く人影”と“光”」
彼は手元のメモを一瞥し、視線を上げる。
「さらに先週、校庭端の倉庫に人の出入りの形跡。フェンスには外に通じる穴。これらを統合すれば──“怪異”は独立した現象ではなく、互いに関連している。そして……おそらく、人為的な仕掛けだと考えるのが妥当だね」
絢葉は無意識に息を呑んだ。
「じゃあ……誰が、何のために……?」
「そこだ」
史桜は軽く頷き、瞳が一瞬だけ夕日の光を帯びた。
「そこが、今のところまったく見えていない点だ。今週には体育祭。出来ればそれまでに、すべてを明らかにしたい」
そう言うと、史桜はノートPCの画面をこちらに向けた。
そこには二つの動画が並んでいる。
一つは、絢葉が先週撮影した校庭の映像。
もう一つは、それより前──怪異騒ぎが起き始めた頃に教員が撮ったという動画。どちらも暗がりの校庭に、例の動く“影”と“光”が映っていた。
「この二つを見比べてみてほしい」
史桜は言う。
「そして、君が“初めて”その人影を目にした時の光景を思い出して。違和感は、ないかい?」
絢葉はしばし黙り、動画を何度も再生した。
目を凝らす。
確かにどちらの映像にも、人影のそばに小さな光が見える。
だが──
「……あ」
思わず声が漏れた。
「この光、先生の撮った動画では、人影から少し離れた位置にあります。私が初めて“動く人影”を見た時も同じでした。でも、私が撮ったものは……暗くてよく見えないですけど、人影の胸元? のあたりに……」
「その通りだ」
史桜の口元が僅かに持ち上がる。
「素晴らしい。観察眼が磨かれてきたね。私はこの“光の位置の違い”こそ、今回の核心に繋がる手がかりの一つだと思っている」
彼はパソコンを閉じ、椅子の背にもたれた。
「それを踏まえて──今日は、職員室へ行ってほしい。村西教諭に話を聞いてくるんだ」
「村西先生に……ですか?」
「ああ。私の見たてでは、ここまで今回の件に関わっている人物の中で、現状彼女が最も容疑者から遠い。だからこそ、話を聞く価値がある」
史桜は書類をまとめ、穏やかな笑みを見せる。
「頼んだよ、東雲君」
絢葉は頷き、静かに立ち上がる。
部室を出ると、校内のあちこちから、部活動や体育祭の準備に励む生徒たちの声が響く。その賑やかさの中に、彼女だけがひとり、静かな目的を胸に歩き出していた。
窓の外に夕陽が傾き、部室の中を赤く染めていた。
机の上には、史桜が用意した資料や、ノートPC。
絢葉は史桜の正面に腰を下ろし、軽く深呼吸をした。
「……それじゃ、ここまでの整理をしようか」
史桜が静かに言った。
「まず最初に起きたのは、無人の放送室から音楽が流れた件。曲は体育祭で使用される予定のBGM。放送室に人が入ると、音は止む。次に確認されたのは、放送機器のデスク下に取り付けられた謎の装置と配線。そして──音楽と同時に出現し、やがて消える“動く人影”と“光”」
彼は手元のメモを一瞥し、視線を上げる。
「さらに先週、校庭端の倉庫に人の出入りの形跡。フェンスには外に通じる穴。これらを統合すれば──“怪異”は独立した現象ではなく、互いに関連している。そして……おそらく、人為的な仕掛けだと考えるのが妥当だね」
絢葉は無意識に息を呑んだ。
「じゃあ……誰が、何のために……?」
「そこだ」
史桜は軽く頷き、瞳が一瞬だけ夕日の光を帯びた。
「そこが、今のところまったく見えていない点だ。今週には体育祭。出来ればそれまでに、すべてを明らかにしたい」
そう言うと、史桜はノートPCの画面をこちらに向けた。
そこには二つの動画が並んでいる。
一つは、絢葉が先週撮影した校庭の映像。
もう一つは、それより前──怪異騒ぎが起き始めた頃に教員が撮ったという動画。どちらも暗がりの校庭に、例の動く“影”と“光”が映っていた。
「この二つを見比べてみてほしい」
史桜は言う。
「そして、君が“初めて”その人影を目にした時の光景を思い出して。違和感は、ないかい?」
絢葉はしばし黙り、動画を何度も再生した。
目を凝らす。
確かにどちらの映像にも、人影のそばに小さな光が見える。
だが──
「……あ」
思わず声が漏れた。
「この光、先生の撮った動画では、人影から少し離れた位置にあります。私が初めて“動く人影”を見た時も同じでした。でも、私が撮ったものは……暗くてよく見えないですけど、人影の胸元? のあたりに……」
「その通りだ」
史桜の口元が僅かに持ち上がる。
「素晴らしい。観察眼が磨かれてきたね。私はこの“光の位置の違い”こそ、今回の核心に繋がる手がかりの一つだと思っている」
彼はパソコンを閉じ、椅子の背にもたれた。
「それを踏まえて──今日は、職員室へ行ってほしい。村西教諭に話を聞いてくるんだ」
「村西先生に……ですか?」
「ああ。私の見たてでは、ここまで今回の件に関わっている人物の中で、現状彼女が最も容疑者から遠い。だからこそ、話を聞く価値がある」
史桜は書類をまとめ、穏やかな笑みを見せる。
「頼んだよ、東雲君」
絢葉は頷き、静かに立ち上がる。
部室を出ると、校内のあちこちから、部活動や体育祭の準備に励む生徒たちの声が響く。その賑やかさの中に、彼女だけがひとり、静かな目的を胸に歩き出していた。
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