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27話ー酷いこと *
しおりを挟む※無理矢理な表現があります。ご注意ください。
硬い床に後頭部をぶつける覚悟で雄大は瞼に力を込めた。だけど想像したようなことは実際には起こらず、床と後頭部の間には戸賀井の手があって、それがクッション代わりとなり頭もその中身も無事でいられた。
「とが、っ、ぁ」
勿論そんなことで安心してはいられない。
床に倒されたと思ったら、戸賀井は素早く雄大の股の間に体を割り入れてズボンを脱がそうとする。
「いやっ、あ、やだ、やだ、戸賀井く、っ、ぁ」
ベルトをしていないズボンはボタンを外されチャックを下ろされると簡単に引き下ろされてしまう。
「待っ、て、待って、お願いっ、戸賀井くん」
目が合わない。
雄大は必死になって声を上げ戸賀井の注意を引こうとするが、戸賀井の方は無意識なのかそれとも雄大を見る気もないのか一向に視線が交わらない。
「……俺だけが好きなわけじゃないですよね。先生も俺のこと好きだよね」
二人きりの空間で独り言のように呟く戸賀井は雄大の穿いているボクサーパンツも剥ぎ取ってしまう。
足を動かしても戸賀井の体はビクともしない。雄大が藻掻けば藻掻くほどαの威圧感が体に圧し掛かって息苦しくなる。
「とが、い、くん、っ」
大人しくしていれば呼吸もまともに出来る。
雄大は何とか戸賀井を説得しようと腕に触れるが避けられてしまう。
スッと逃げて行く彼の腕を見ながら雄大は顔を歪める。拒否をされた。こんな時にこんな小さなことで傷付いてしまう。戸賀井はもっと傷付いただろうに、手前勝手なことだと呆れる。
戸賀井は雄大が下半身に身に着けていた物全てを取り去ってしまうと自分の指を口に咥えた。くちゅくちゅと音が鳴って、すぐに彼自身の口から引き抜かれた指は唾液を纏い艶やかに光っている。
それを後ろの穴に添わされて、雄大は怖くなって腰を捩じった。
「ふっ、う」
ごろっと寝返って戸賀井に背を向ける。一旦彼の下から這い出なければ。何をどう説明すればいいのかまだ整理は付かないが、とにかく二人で話し合って冷静にならなければということだけは確かで、雄大はそれをしようと床を這う。
けれど、上から潰すように戸賀井の体が覆い被さってくる。
「逃げないでください。悲しくなる」
「逃げ、ない、逃げてないっ、話が、したい……ぁ、い、ぁ」
濡れた指が尻の穴に入って来る。発情期ではないからか、それともこの状況だからか、中からの潤いは足りず違和感を覚える。
「いやっ、ゆび、やだ」
「指、いや? 何ならいいの?」
「んう、あ、ぁ、ぁ」
中を掻かれると漸く指を滑らす程度の湿り気は帯びてくるものの、激しく出入りされると快楽よりも胸を締め付けられるような言い知れぬ不安が湧いてくる。
「話なんてまともに出来ると思う?」
「は、っ、い、あ、いやぁ、ぁ、ぁ」
中で激しく動いていた指が勢い良く抜かれて、ヌポッと大きな音が立つ。背中側の重みが消え、終わったのかと思ったがそうではなくて、後ろの方では布の擦れる音がする。
「ゔ……やだ……」
手を伸ばし、ズズと床を擦って前に進もうとするが、戸賀井に腰を持たれて引き戻される。
上半身は床にべったりと付いたまま、尻だけ高く上げられて先程まで指が入っていた場所に硬いものが当たる。上下に動いて尻の穴に付く体液をヌトヌトと馴染ませている。
「やだ、やだ、うっ、うぅ」
頭を横に振っても聞き入れては貰えず、戸賀井の指が食い込むほどしっかりと尻を持たれたら後ろから思い切り貫かれた。
「はっ……ああっ、ぁ、い、い、いた、ぁ、あっ、ぁ」
無理矢理に抉じ開けられて痛みが走る。
「先生……っ、は、はぁ、門村先生」
熱を纏った声色で呼ばれても痛みを伴う行為に虚しさが増すばかりで鼻の頭がツンと痺れる。
「ぅ、く、るし、とがいくん、いや、いやだ、やめ、っ」
絞り出した声は床に当たって落ちて戸賀井に届くことはない。体が揺さ振られると脳も一緒になって揺れる。
「門村先生っ、門村せんせっ」
泣いているような必死な声が聞こえる。
戸賀井の姿は見えないけれど、泣いているのかもしれないと想像していると再び、ズシッと背中側が重たくなる。戸賀井が体重を掛けて来て、首筋に息が掛かる。うなじを愛おしむように唇を付けて、舌で愛撫してくる。
「ふ、う、うう、っ」
「こんな……匂いまで付けられて……全部ぐちゃぐちゃに壊してやりたい」
耳元ではっきりと聞こえた。次の瞬間に、痛みが走った。尻を突かれる鈍い痛みではなく、鋭い痛み。雄大の目は見開かれたままで瞬きを忘れてしまう。
首の横、ちょうど翔が跡を付けた辺りに戸賀井の歯が食い込んでいる。
「かっ、ぅ、あぁっ、いたいっ、いたい、戸賀井くっ、ゔあぁ」
逃れようにも首を動かせば肉を引き千切られそうで、雄大はただただ声を上げて痛みを訴える。
「ふ、ゔぅ……いた、ぁ、ごめ、ごめん、ぅ、おれ、傷付けて、君の、こと」
好きなのに。
本当はこんなことする子じゃない。誰も居ない放課後にTシャツを夕陽の色に染めて泣いていた子供を思い出す。不安な顔で、体も細くて――
でも強くなった。雄大の言葉で生きて来られたと言ってくれた。その子を傷付けて、また泣かせた。
「ごめん、ごめんね……他の、匂い、ついたとこ、噛み切りたいなら、いいよ……おれは、君のものだから、いい」
堰を切ったように両方の目から涙が零れ出る。歯が食い込む首も、無理に奥を開かれた後ろも痛くない。今はもう心臓だけが握り潰されているように痛む。
ふー、ふー、と首元に掛かっていた息が段々と緩やかになっていく。戸賀井の顔がゆっくりと離れていくのを感じて振り向き確認しようとするが涙が次から次へと流れ出て、よく見えない。
噛まれて縮んでいた皮膚が元に戻ろうとしている。重たかった背中側も軽くなって、腹の中を行き来している圧迫感も無くなった。
戸賀井の存在を感じられなくなって、彼が消えてしまう気がして、雄大は体を反転させて姿を確かめようとした。
涙でもやもやと視界が曇る中、雄大が「戸賀井くん」と呼ぶと「ごめんなさい」と震える声が返って来た。
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