【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ

文字の大きさ
28 / 35

27話ー酷いこと *

しおりを挟む

 ※無理矢理な表現があります。ご注意ください。




 硬い床に後頭部をぶつける覚悟で雄大は瞼に力を込めた。だけど想像したようなことは実際には起こらず、床と後頭部の間には戸賀井の手があって、それがクッション代わりとなり頭もその中身も無事でいられた。
「とが、っ、ぁ」
 勿論そんなことで安心してはいられない。
 床に倒されたと思ったら、戸賀井は素早く雄大の股の間に体を割り入れてズボンを脱がそうとする。
「いやっ、あ、やだ、やだ、戸賀井く、っ、ぁ」
 ベルトをしていないズボンはボタンを外されチャックを下ろされると簡単に引き下ろされてしまう。
「待っ、て、待って、お願いっ、戸賀井くん」
 目が合わない。
 雄大は必死になって声を上げ戸賀井の注意を引こうとするが、戸賀井の方は無意識なのかそれとも雄大を見る気もないのか一向に視線が交わらない。
「……俺だけが好きなわけじゃないですよね。先生も俺のこと好きだよね」
 二人きりの空間で独り言のように呟く戸賀井は雄大の穿いているボクサーパンツも剥ぎ取ってしまう。
 足を動かしても戸賀井の体はビクともしない。雄大が藻掻けば藻掻くほどαの威圧感が体に圧し掛かって息苦しくなる。
「とが、い、くん、っ」
 大人しくしていれば呼吸もまともに出来る。
 雄大は何とか戸賀井を説得しようと腕に触れるが避けられてしまう。
 スッと逃げて行く彼の腕を見ながら雄大は顔を歪める。拒否をされた。こんな時にこんな小さなことで傷付いてしまう。戸賀井はもっと傷付いただろうに、手前勝手なことだと呆れる。
 戸賀井は雄大が下半身に身に着けていた物全てを取り去ってしまうと自分の指を口に咥えた。くちゅくちゅと音が鳴って、すぐに彼自身の口から引き抜かれた指は唾液を纏い艶やかに光っている。
 それを後ろの穴に添わされて、雄大は怖くなって腰を捩じった。
「ふっ、う」
 ごろっと寝返って戸賀井に背を向ける。一旦彼の下から這い出なければ。何をどう説明すればいいのかまだ整理は付かないが、とにかく二人で話し合って冷静にならなければということだけは確かで、雄大はそれをしようと床を這う。
 けれど、上から潰すように戸賀井の体が覆い被さってくる。
「逃げないでください。悲しくなる」
「逃げ、ない、逃げてないっ、話が、したい……ぁ、い、ぁ」
 濡れた指が尻の穴に入って来る。発情期ではないからか、それともこの状況だからか、中からの潤いは足りず違和感を覚える。
「いやっ、ゆび、やだ」
「指、いや? 何ならいいの?」
「んう、あ、ぁ、ぁ」
 中を掻かれると漸く指を滑らす程度の湿り気は帯びてくるものの、激しく出入りされると快楽よりも胸を締め付けられるような言い知れぬ不安が湧いてくる。
「話なんてまともに出来ると思う?」
「は、っ、い、あ、いやぁ、ぁ、ぁ」
 中で激しく動いていた指が勢い良く抜かれて、ヌポッと大きな音が立つ。背中側の重みが消え、終わったのかと思ったがそうではなくて、後ろの方では布の擦れる音がする。
「ゔ……やだ……」
 手を伸ばし、ズズと床を擦って前に進もうとするが、戸賀井に腰を持たれて引き戻される。
 上半身は床にべったりと付いたまま、尻だけ高く上げられて先程まで指が入っていた場所に硬いものが当たる。上下に動いて尻の穴に付く体液をヌトヌトと馴染ませている。
「やだ、やだ、うっ、うぅ」
 頭を横に振っても聞き入れては貰えず、戸賀井の指が食い込むほどしっかりと尻を持たれたら後ろから思い切り貫かれた。
「はっ……ああっ、ぁ、い、い、いた、ぁ、あっ、ぁ」
 無理矢理に抉じ開けられて痛みが走る。
「先生……っ、は、はぁ、門村先生」
 熱を纏った声色で呼ばれても痛みを伴う行為に虚しさが増すばかりで鼻の頭がツンと痺れる。
「ぅ、く、るし、とがいくん、いや、いやだ、やめ、っ」
 絞り出した声は床に当たって落ちて戸賀井に届くことはない。体が揺さ振られると脳も一緒になって揺れる。
「門村先生っ、門村せんせっ」
 泣いているような必死な声が聞こえる。
 戸賀井の姿は見えないけれど、泣いているのかもしれないと想像していると再び、ズシッと背中側が重たくなる。戸賀井が体重を掛けて来て、首筋に息が掛かる。うなじを愛おしむように唇を付けて、舌で愛撫してくる。
「ふ、う、うう、っ」
「こんな……匂いまで付けられて……全部ぐちゃぐちゃに壊してやりたい」
 耳元ではっきりと聞こえた。次の瞬間に、痛みが走った。尻を突かれる鈍い痛みではなく、鋭い痛み。雄大の目は見開かれたままで瞬きを忘れてしまう。
 首の横、ちょうど翔が跡を付けた辺りに戸賀井の歯が食い込んでいる。
「かっ、ぅ、あぁっ、いたいっ、いたい、戸賀井くっ、ゔあぁ」
 逃れようにも首を動かせば肉を引き千切られそうで、雄大はただただ声を上げて痛みを訴える。
「ふ、ゔぅ……いた、ぁ、ごめ、ごめん、ぅ、おれ、傷付けて、君の、こと」
 好きなのに。
 本当はこんなことする子じゃない。誰も居ない放課後にTシャツを夕陽の色に染めて泣いていた子供を思い出す。不安な顔で、体も細くて――
 でも強くなった。雄大の言葉で生きて来られたと言ってくれた。その子を傷付けて、また泣かせた。
「ごめん、ごめんね……他の、匂い、ついたとこ、噛み切りたいなら、いいよ……おれは、君のものだから、いい」
 堰を切ったように両方の目から涙が零れ出る。歯が食い込む首も、無理に奥を開かれた後ろも痛くない。今はもう心臓だけが握り潰されているように痛む。
 ふー、ふー、と首元に掛かっていた息が段々と緩やかになっていく。戸賀井の顔がゆっくりと離れていくのを感じて振り向き確認しようとするが涙が次から次へと流れ出て、よく見えない。
 噛まれて縮んでいた皮膚が元に戻ろうとしている。重たかった背中側も軽くなって、腹の中を行き来している圧迫感も無くなった。
 戸賀井の存在を感じられなくなって、彼が消えてしまう気がして、雄大は体を反転させて姿を確かめようとした。

 涙でもやもやと視界が曇る中、雄大が「戸賀井くん」と呼ぶと「ごめんなさい」と震える声が返って来た。

 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢
BL
この世界では、生まれつき【α】【β】【Ω】という性の区分が存在する。 俺――緋月 透真(ひづき とうま)は、どれにも属さない“未分化体(ノンラベル)”。存在すら認められていないイレギュラーだった。 ひっそりと生きていたはずのある日、学園一のαで次期統領候補・天瀬 陽翔(あませ はると)に突然「俺の番になれ」と迫られ、なぜか正式なΩ候補に指名されてしまう。 「俺にだけ、お前の匂いがする」──それは、αにとって最大の禁忌だった。

処理中です...