この世で一番嫌いな自慢の彼女

僧侶A

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第12話

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「噂には聞いていたけど想像以上にでかいな⋯⋯」

 比べるのは変かもしれないが、この間行った加賀美邸よりも遥かに大きい施設だった。

「早速中に入りましょ」

 北条はそう俺たちを急かした。

 ほとんどの部分はよくある商業施設と変わりはない。

 しかし、他の商業施設では滅多に見られないカラオケやボウリングといった施設まで取り揃えている。

「ここならなんでも出来そうなのに集合場所は変わってないんだな」

 悠理が俺にも思い浮かんだ疑問を述べた。

「確かにここならなんでも揃っているしゲーセンだって当然ある。だけど俺らがいつも集まっていた場所は思い出の場所なんだから変えたくはなかったんだ」

 七森がそう答えてくれた。

「それにここはお前らが来なくなってから出来たんだ。もしお前達が突然来た時に居なかったら困るだろ」

 西野がそう付け加えた。

 有難い奴らだ。

「それじゃあ何するか?」

 七森が俺たちに聞いた。

「久々にビリヤードがやりてえな」
 悠理が爆弾をぶん投げてきた。

「それは大層面白そうだな」

 西野も続けて肯定した。

「お前ら本当にビリヤードやりたいのか?」

「「「「勿論」」」」

 神田と俺以外の全員はやりたいようだ。

「お前らビリヤードそんなに好きだったか?お前らがやってたところ見たことねえぞ」

 事情を知らない神田が疑問を投げかけた。

「見ればわかるよ」

 北条は大層悪い顔をしてそう答えた。

 これはもう諦めるしかないか……


「ぎゃははははは何だお前!!!」

 神田が大爆笑しながら煽ってくる。ついでに他の奴らも腹を抱えている。

「こいつら……」

 白状しよう。俺は昔からビリヤードだけは下手くそだったんだ。

 どうやろうにも改善する見込みがなく、こいつら曰く人間はこんなビリヤードは出来ないとのこと。

 玉に当たっているんだが、ほぼ確実に場外に飛んでいく。ひどい時だと前に打ったはずが右側にあったビリヤード台のど真ん中に着地したこともある。

 流石にキューは吹っ飛んでいくことは無かったがそれはそれは大層いじられた。

 何十回とビリヤードを訪れた結果、周りの奴らはそこそこに上手になり、悠理の場合一回狙った玉はほぼほぼ穴に落とすことが出来るほどまで成長した。

 それなのに俺は変わることは無かった。人生で唯一向いていないと確信したものだった。

 だから俺は極力ビリヤードをする方向にならないように誘導していたというのに……

 悠理は俺のことをよく分かっていたからバレてたってことか。

 早く終わらせないとな……

 と思っていると悠理以外が急に笑うのを止めた。
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