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第1話 しがみつ鬼
(14)川べりの花
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長屋に子どもたちの声が響く。
バタバタと走り回る足音が、騒がしい。
子らを追いかけ回すおかみ連中は、口では文句を言いながらも。
元気に育つ我が子を見守る眼差しは、温かい。
「久助、おまんまを食べてからにしな。
兄ちゃんたちは、おまえを置いてったりしないよ」
聞き覚えのあるおなごの声が、巳之吉と桔梗の耳に届く。
直後、飯で頬を一杯にしたままの子どもが長屋から飛び出してくる。
もぐもぐと口を動かしながら、巳之吉のほうを不思議そうに見やる。
「おじちゃん、どこの人? おっかさんに、ご用事?」
「い~や、おじちゃんは、散歩してただけさね。
おまえさんは、久助っていうのかい?」
「そうだよ。五つ。どじょう獲りに行くんだよ」
「そうか。そいつは、すげぇや。たくさん獲ってくるんだぜ?」
「うんっ! おとっつぁんに食べさせてやるんだ」
「そうか、そうか。久助は、孝行もんだなぁ」
「へへっ。あれ? でもさ、おじちゃん。おいら、前にも会ったかな?」
「いや? どうしてだい?」
「ん~とね。おじちゃんと前にもあったって思うんだよ。どっかで」
「そうかい? なんでだろうなぁ?」
「分かんない。おいら、もう行かなくちゃ」
小さな久助が走り出した先には、近所の子らしき者たちが待っている。
久助が飛び出してきた長屋から、盥を抱えたひとりのおなごが出てくる。
「久助っ! ちゃぁんと兄ちゃんたちに連れてってもらうんだよ!」
久助の背中に、大きな声を投げかける。
その眼差しは、やっぱり愛しげで優しく、温かい。
長屋の前にいる巳之吉に気づくと、ペコリと頭を下げた。
そのおなごは、確かに、件のおつやであった。
あの月夜の長屋で、初めに見た妖艶さとは、ほど遠い。
整った造作は今でも見て取れるものの、相応に年を重ねている。
巳之吉は、目頭が熱くなるのを堪えて、おつやに話しかける。
「かわいい子だねぇ。おまえさんとこの子かい?」
「ええ。久助っていうんですよ」
「久助か。いい名だ。親を助けてくれるいい子に育つだろうねぇ」
「ふふ。あの子は、アタシらの一粒種でねぇ。
四十の恥かきっ子なもんだから、かわいくてねぇ」
「だんなは、病持ちかい? さっき、あの子が、どじょうをってね」
「あぁ。うちの栄さんは、蒲柳の質ってやつでね。
寝たり起きたりなんですよぅ。そのせいで、ずっとひとり身でね。
だけど、そのおかげで、行かず後家だったアタシと出会ってくれて」
「おまえさんみたいな綺麗なおなごが、どうしてまた行かず後家に?」
「あら、いやだ。そんなこと、しばらくぶりに言われたねぇ。
ふふふ。今、考えりゃあ、おかしなことなんですけどね。
若い頃は、飼ってる猫に夢中で。その子以外は、目に入らなくって」
「それでも、猫と人じゃあ違ぇだろうに」
「ええ。そうなんですけどね。どんないい男に出会ってもね。
なんだか違うって気がしちゃいましてね。
栄さん、あ、うちのだんなァ、栄次郎って言うんですけどね。
栄さんに会うまでは、一生、ひとり身なんだって思ってたんですよぅ」
「へぇ! それじゃあ、だんなってのは、よほどの二枚目なんだろう?」
「まぁ、それもありますけどね。何て言うのかなァ?
初めて会った時から、『このお人だ』って分かったんですよぅ」
「そりゃあ、あれだ。定めってやつだろうさ。
お隣りの国の言い伝えじゃあ、定めの赤い糸ってのがあるらしいぜ?」
「なんです? 糸?」
「おうよ。出会う定めのふたりにはさ。
互いの足首に、目には見えねぇ赤い糸が、結んであるんだってさ。
その糸があるから、ほかのやつとは結ばれねぇって寸法さ」
「あら、やだ。そうだったのかねぇ。
でもさ、それなら、もうちょいと早く出会わせてくれてもねぇ!」
「ははは。違ぇねぇ!」
(ふたりが早く会っちまうと、大変なことになっちまうんだぜ……)
巳之吉は、口には出せない言葉を隠して、おつやと共に笑う。
朗らかに笑っていたおつやが、ふいに、巳之吉の足元を見つめる。
「ところで、兄さん。綺麗な猫を連れてるじゃあないかい」
「あ? あぁ、こいつは桔梗ってんだ」
「桔梗ちゃんかい? また綺麗な名をもらったもんだ。
あぁ、確かに、紫みたいに見える綺麗な黒い毛だもんねぇ」
「おまえさんとこにも、猫がいんのかい?」
「今は、いないんですよぅ。アタシの猫は、死んだチビだけさね。
猫は好きだけど、ほかの子は飼う気には、なれなくてねぇ」
「そうかい。その猫も、そんなに大事に思われちゃぁ、本望だろうさ」
「そうかねぇ。そうだといいんだけどねぇ」
おつやと別れた巳之吉は、フラリと歩き出す。
手に持っていた扇子をパラリと開く。
ふわりふわりと扇子をあおぐと、扇子に描かれた龍が現れる。
扇子をさらにあおぐと、灰色の玉のようなものが浮かぶ。
玉の中には、小鬼のようなものが閉じ込められている。
黒雲と共に現れた龍は、扇子の前に浮かぶ灰色の玉を丸呑みにした。
玉を呑み込んでしまうと、龍は扇子の中にスゥッと戻る。
戻ってしまえば、それはただの絵にしか見えない。
その様子は、ほかの人には見えない。
ほかから見れば、ひとりの男が扇子を広げて、あおいだだけである。
長屋に戻ったおつやに声がかけられる。
「おつや? 誰かと話していたのかい? 声がしたようだけど」
「栄さん。今日は、顔色がいいねぇ。さっきね、猫を連れた人と話してさ。
久方ぶりに、チビを思い出しちまったよ」
「チビって、あのチビかい? 二十まで生きたっていう……」
「そうそう。チビと死に別れてなきゃ、栄さんと一緒になったかどうか」
「おいおい。アタシは、チビの後釜かい?」
「ふふふ。そんなこたァ、ないよ。だってね、栄さんとアタシはさ。
定めの赤い糸ってので結ばれてるんだってさ」
「なんだい、そりゃあ?」
「お隣りの国の言い伝えらしいよ」
「へぇ。誰に聞いたんだい?」
「誰に……? あれ? 誰だったかねぇ? ついさっき……」
「ははは。おかしな、おつやだねぇ」
「そうだねぇ。あったかくて、頭が煮えちゃったかねぇ」
ひとりの男が、フラリと歩いている。
その肩には、一匹の妖かしが乗っている。
その妖かしは、見る人によって、その姿を変える。
人に見える時もあれば、猫に見える時もある。
それ以外のものにも。
男は、妖かしに話しかける。
帯に挟んでいた扇子を抜くと、肩をポンポンと叩きながら。
「桔梗よぅ。猫に取り憑いてた物の怪はよ?
最後ァ、小鬼になっちまったあいつはよ? 結局、なんだったんでぃ?」
猫の姿のままの妖かしが、答える。
「あれは、『しがみつ鬼』と言いまして、煩悩が形を取ったものです。
人やものに執着する心は、放っておくと、どんどん大きくなって」
「最後には、あんな化け物になっちまったってことかい?」
「ええ、おそらく。
猫と人が互いに寄りかかって生きていたのでしょう」
「猫が死んだのを認められねぇ人の気持ちと離れたくねぇ猫の気持ち。
それが、互いを縛り合って……。そこに、だんなまで絡んできた日にゃ」
「はい。まぁ、染みを見る限りでは、ですが……。
猫は、おつやさんの願いを叶えてやりたかったのでしょう」
「哀れ、だな。
けどよ、欲が無くちゃ、人は生きていけねぇのも本当だぜ?」
「ええ。すなわち、過ぎたるは、ということです。
しかし、どうやら糸を断ち切ったことで変わったようですから」
「あぁ! そうだった、そうだった!
今度は、かなりの数の魂を救えたんじゃあ無ぇか?」
「ええっと。……どうやら、三つのようです」
「はぁっ? たった三つ? あんなに幼な子が転がってたってのに?」
「はい。久助さん、おつやさん、チビの三つ。
糸を切ったことで、あの子どもたちは生まれなかったことに」
「いや、だから、兄に殺されずに済んでよ?」
「ええ。ですが、生まれなかったものの魂は、救えませんので」
「なんだよ、そうなのかよぅ? あ~ぁ、百八つには、ほど遠いぜ」
「そんなに容易いならば、罰にはならないかと」
「わ~かってらい! まぁ、でも、あれだな。
あの子たちの魂は、別んとこで幸せになってるかも知んねぇしな!」
ひとりの男が、堀川沿いを歩いていく。
いつの間にか、その男のそばに、もうひとりの男が現れる。
ふたりは、暖かい日差しの中を歩いていく。
時折り、ひとりの男が肩を叩くポンポンという音が聞こえる。
もうひとりの男の足音は、不思議なことに聞こえない。
川べりには、小さな紫色の花が咲いている。
川風に吹かれた花が、小さく揺れている。
バタバタと走り回る足音が、騒がしい。
子らを追いかけ回すおかみ連中は、口では文句を言いながらも。
元気に育つ我が子を見守る眼差しは、温かい。
「久助、おまんまを食べてからにしな。
兄ちゃんたちは、おまえを置いてったりしないよ」
聞き覚えのあるおなごの声が、巳之吉と桔梗の耳に届く。
直後、飯で頬を一杯にしたままの子どもが長屋から飛び出してくる。
もぐもぐと口を動かしながら、巳之吉のほうを不思議そうに見やる。
「おじちゃん、どこの人? おっかさんに、ご用事?」
「い~や、おじちゃんは、散歩してただけさね。
おまえさんは、久助っていうのかい?」
「そうだよ。五つ。どじょう獲りに行くんだよ」
「そうか。そいつは、すげぇや。たくさん獲ってくるんだぜ?」
「うんっ! おとっつぁんに食べさせてやるんだ」
「そうか、そうか。久助は、孝行もんだなぁ」
「へへっ。あれ? でもさ、おじちゃん。おいら、前にも会ったかな?」
「いや? どうしてだい?」
「ん~とね。おじちゃんと前にもあったって思うんだよ。どっかで」
「そうかい? なんでだろうなぁ?」
「分かんない。おいら、もう行かなくちゃ」
小さな久助が走り出した先には、近所の子らしき者たちが待っている。
久助が飛び出してきた長屋から、盥を抱えたひとりのおなごが出てくる。
「久助っ! ちゃぁんと兄ちゃんたちに連れてってもらうんだよ!」
久助の背中に、大きな声を投げかける。
その眼差しは、やっぱり愛しげで優しく、温かい。
長屋の前にいる巳之吉に気づくと、ペコリと頭を下げた。
そのおなごは、確かに、件のおつやであった。
あの月夜の長屋で、初めに見た妖艶さとは、ほど遠い。
整った造作は今でも見て取れるものの、相応に年を重ねている。
巳之吉は、目頭が熱くなるのを堪えて、おつやに話しかける。
「かわいい子だねぇ。おまえさんとこの子かい?」
「ええ。久助っていうんですよ」
「久助か。いい名だ。親を助けてくれるいい子に育つだろうねぇ」
「ふふ。あの子は、アタシらの一粒種でねぇ。
四十の恥かきっ子なもんだから、かわいくてねぇ」
「だんなは、病持ちかい? さっき、あの子が、どじょうをってね」
「あぁ。うちの栄さんは、蒲柳の質ってやつでね。
寝たり起きたりなんですよぅ。そのせいで、ずっとひとり身でね。
だけど、そのおかげで、行かず後家だったアタシと出会ってくれて」
「おまえさんみたいな綺麗なおなごが、どうしてまた行かず後家に?」
「あら、いやだ。そんなこと、しばらくぶりに言われたねぇ。
ふふふ。今、考えりゃあ、おかしなことなんですけどね。
若い頃は、飼ってる猫に夢中で。その子以外は、目に入らなくって」
「それでも、猫と人じゃあ違ぇだろうに」
「ええ。そうなんですけどね。どんないい男に出会ってもね。
なんだか違うって気がしちゃいましてね。
栄さん、あ、うちのだんなァ、栄次郎って言うんですけどね。
栄さんに会うまでは、一生、ひとり身なんだって思ってたんですよぅ」
「へぇ! それじゃあ、だんなってのは、よほどの二枚目なんだろう?」
「まぁ、それもありますけどね。何て言うのかなァ?
初めて会った時から、『このお人だ』って分かったんですよぅ」
「そりゃあ、あれだ。定めってやつだろうさ。
お隣りの国の言い伝えじゃあ、定めの赤い糸ってのがあるらしいぜ?」
「なんです? 糸?」
「おうよ。出会う定めのふたりにはさ。
互いの足首に、目には見えねぇ赤い糸が、結んであるんだってさ。
その糸があるから、ほかのやつとは結ばれねぇって寸法さ」
「あら、やだ。そうだったのかねぇ。
でもさ、それなら、もうちょいと早く出会わせてくれてもねぇ!」
「ははは。違ぇねぇ!」
(ふたりが早く会っちまうと、大変なことになっちまうんだぜ……)
巳之吉は、口には出せない言葉を隠して、おつやと共に笑う。
朗らかに笑っていたおつやが、ふいに、巳之吉の足元を見つめる。
「ところで、兄さん。綺麗な猫を連れてるじゃあないかい」
「あ? あぁ、こいつは桔梗ってんだ」
「桔梗ちゃんかい? また綺麗な名をもらったもんだ。
あぁ、確かに、紫みたいに見える綺麗な黒い毛だもんねぇ」
「おまえさんとこにも、猫がいんのかい?」
「今は、いないんですよぅ。アタシの猫は、死んだチビだけさね。
猫は好きだけど、ほかの子は飼う気には、なれなくてねぇ」
「そうかい。その猫も、そんなに大事に思われちゃぁ、本望だろうさ」
「そうかねぇ。そうだといいんだけどねぇ」
おつやと別れた巳之吉は、フラリと歩き出す。
手に持っていた扇子をパラリと開く。
ふわりふわりと扇子をあおぐと、扇子に描かれた龍が現れる。
扇子をさらにあおぐと、灰色の玉のようなものが浮かぶ。
玉の中には、小鬼のようなものが閉じ込められている。
黒雲と共に現れた龍は、扇子の前に浮かぶ灰色の玉を丸呑みにした。
玉を呑み込んでしまうと、龍は扇子の中にスゥッと戻る。
戻ってしまえば、それはただの絵にしか見えない。
その様子は、ほかの人には見えない。
ほかから見れば、ひとりの男が扇子を広げて、あおいだだけである。
長屋に戻ったおつやに声がかけられる。
「おつや? 誰かと話していたのかい? 声がしたようだけど」
「栄さん。今日は、顔色がいいねぇ。さっきね、猫を連れた人と話してさ。
久方ぶりに、チビを思い出しちまったよ」
「チビって、あのチビかい? 二十まで生きたっていう……」
「そうそう。チビと死に別れてなきゃ、栄さんと一緒になったかどうか」
「おいおい。アタシは、チビの後釜かい?」
「ふふふ。そんなこたァ、ないよ。だってね、栄さんとアタシはさ。
定めの赤い糸ってので結ばれてるんだってさ」
「なんだい、そりゃあ?」
「お隣りの国の言い伝えらしいよ」
「へぇ。誰に聞いたんだい?」
「誰に……? あれ? 誰だったかねぇ? ついさっき……」
「ははは。おかしな、おつやだねぇ」
「そうだねぇ。あったかくて、頭が煮えちゃったかねぇ」
ひとりの男が、フラリと歩いている。
その肩には、一匹の妖かしが乗っている。
その妖かしは、見る人によって、その姿を変える。
人に見える時もあれば、猫に見える時もある。
それ以外のものにも。
男は、妖かしに話しかける。
帯に挟んでいた扇子を抜くと、肩をポンポンと叩きながら。
「桔梗よぅ。猫に取り憑いてた物の怪はよ?
最後ァ、小鬼になっちまったあいつはよ? 結局、なんだったんでぃ?」
猫の姿のままの妖かしが、答える。
「あれは、『しがみつ鬼』と言いまして、煩悩が形を取ったものです。
人やものに執着する心は、放っておくと、どんどん大きくなって」
「最後には、あんな化け物になっちまったってことかい?」
「ええ、おそらく。
猫と人が互いに寄りかかって生きていたのでしょう」
「猫が死んだのを認められねぇ人の気持ちと離れたくねぇ猫の気持ち。
それが、互いを縛り合って……。そこに、だんなまで絡んできた日にゃ」
「はい。まぁ、染みを見る限りでは、ですが……。
猫は、おつやさんの願いを叶えてやりたかったのでしょう」
「哀れ、だな。
けどよ、欲が無くちゃ、人は生きていけねぇのも本当だぜ?」
「ええ。すなわち、過ぎたるは、ということです。
しかし、どうやら糸を断ち切ったことで変わったようですから」
「あぁ! そうだった、そうだった!
今度は、かなりの数の魂を救えたんじゃあ無ぇか?」
「ええっと。……どうやら、三つのようです」
「はぁっ? たった三つ? あんなに幼な子が転がってたってのに?」
「はい。久助さん、おつやさん、チビの三つ。
糸を切ったことで、あの子どもたちは生まれなかったことに」
「いや、だから、兄に殺されずに済んでよ?」
「ええ。ですが、生まれなかったものの魂は、救えませんので」
「なんだよ、そうなのかよぅ? あ~ぁ、百八つには、ほど遠いぜ」
「そんなに容易いならば、罰にはならないかと」
「わ~かってらい! まぁ、でも、あれだな。
あの子たちの魂は、別んとこで幸せになってるかも知んねぇしな!」
ひとりの男が、堀川沿いを歩いていく。
いつの間にか、その男のそばに、もうひとりの男が現れる。
ふたりは、暖かい日差しの中を歩いていく。
時折り、ひとりの男が肩を叩くポンポンという音が聞こえる。
もうひとりの男の足音は、不思議なことに聞こえない。
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川風に吹かれた花が、小さく揺れている。
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