ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第一話 コレクター【解決編】

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「おそらく、紫衣流が眼鏡からコンタクトレンズに変えたのは、殺害される直前のことだった。だから同棲していた銀山ですら、その事実を知らなかった。もし、コンタクトレンズに変えていたことを知っていたなら、眼鏡を忘れて出かけた――なんて思わねぇだろうからな」

 坂田はそこでカウンターの上においたままだったコンタクトレンズの洗浄機を手に取った。

「紫衣流が眼鏡からコンタクトレンズに変えたという事実は、同棲をしていた銀山でさえ、新しすぎて知らない事実だった。けどよ、こいつを見つけた時、これが紫衣流の物だって一発で答えたやつがいるんだよ」

 坂田の言葉に補足するかのごとく「坂田が持ってるのがコンタクトレンズの洗浄機だ」と解説した。

「つまり、そいつは知ってたんだ。紫衣流がコンタクトレンズを使っていたことをな。じゃあ、それをそいつが知り得たのはいつだったのか――多分、目玉をくり抜いた時だ」

 楠野は煙草をくわえると火を点けた。ゆっくりと煙を吸い込むと、時間をかけて煙を吐き出した。

「いや、もしかすると目玉をくり抜いた時には気づけなかったかもしれねぇ。だが、犯人が目玉を食っていたとしたら? コンタクトレンズという異物も一緒に口に入ることになる。これなら確実にコンタクトレンズの存在を知ることができるだろうよ。一応、犯人が目玉を食っていたという話にも、多少なりとも根拠があるってことだ」

 坂田はそこで言葉を切ると、カウンターのほうへと向かい、そして紫衣流の遺体があったカウンター席の隣に着席した。

「別に銀山の女がどうなろうと知ったっちゃないが、紫衣流とは付き合いが長かったんだ。あぁ見えて、素直で純粋なところもあった女なんだぜ。銀山のことは気に入らねぇが、あいつは本気で銀山に惚れてたな――」

 カウンターの向こう側を見つめながら、坂田は誰に言うでもなく漏らした。

「なぁ、どうして殺したんだ? お前だって紫衣流のことは良く知った仲だったはずだ。なんで、よりによってあいつじゃなきゃ駄目だったんだ? 教えろよ――」

 ただでさえ静まり返った店内だったが、坂田の次の言葉を待つように、さらなる静寂に包まれた。いいや、それは楠野が勝手にそう感じただけなのかもしれない。

「コレクター……いいや、鐘」

 坂田の漏らした一言に、巌鉄、銀山、新山――その場にいた全員の視線が向けられる。そう、それぞれ2つずつある眼が。たぎりを覚えた下半身。勃起していた。あの時を思い出していたのだ。

「最高だったぜ……仁。お前なら分かってくれるだろ?」

 コレクターこと楠野鐘は、自分でも知らぬうちに笑みを浮かべていた。
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