ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

文字の大きさ
122 / 178
第二話 Q&A【事件編】

67

しおりを挟む
「まぁいい。行くぞ」

 銀山の相手をすること自体が面倒になった坂田は、思い切りVIPルームの扉を蹴飛ばした。重低音のウーファーが響く店内では、うまい具合に扉を蹴破る音はかき消された。

 思ったよりもVIPルームは広かったが、想像していた光景とはいささか違った。こういう部屋は、大抵が高級ソファーやらガラステーブルなどが置かれ、開けられたシャンパンの瓶が放置されている――なんてイメージがあったせいか、そのキャップに坂田は気後れさえしてしまった。

 なにも置かれていない殺風景な部屋は、それでもカラーギャングとの繋がりを示唆したいのか、ブルーライトだけは入っていた。坂田が入るなり、部屋の中央にたむろしていた男達が、ゆっくりと立ち上がる。部屋の中にいるのは、ざっと5人程度。銀山と手分けしても厳しいかもしれない。

「――なに、客?」

 部屋の中でも明らかに異なるオーラを纏った男が口を開く。金髪に青いバーカを羽織った男は、その風格だけで直感的にここの親玉だと分かった。

「客だったら、これを蹴破ったりはしないわなぁ」

 坂田が言うと、金髪の男は笑みを浮かべる。

「そのスカジャン。へぇ、お前が坂田か?」

 金髪の男はなぜか坂田のことを知っているらしい。いいや、誰の差金かは知らないが、さっき襲撃されたことを考えると、相手が坂田のことを知っていても不思議ではない。

「そっちの野郎は――誰だ、お前」

 悲しき雨立街の王。相手に認識されていない。

「お前、俺のことを知らないの? 田舎のクソガキの集まりなら仕方がねぇか」

 銀山はそう言いながらも、いつでもやり合う準備はできているようだ。

「なんだと? おらぁ!」

 その言葉に激昂したのは、取り巻きの連中だけ。金髪の男は動じていないようだ。まだ話が通じるらしい。

「お前、なんの目的で俺を狙った? 少なくともお前らの島を荒らしたつもりはねぇし、恨みを買うような真似もしてないんだが」

 金髪の男の狙いは坂田に絞られたらしい。相手との距離を保ちながら、坂田は相手の出方を伺う。

「理由は言えねぇなぁ。ただ、お前みたいなやつに周囲を嗅ぎ回られると、色々と商売がやりにくいんだよ。俺達はそこらのイキってるだけのガキじゃねぇんだ。まず第一に商売を優先する」

「それにしちゃあ、お前のお仲間は――待て、ができないみたいだが」

 坂田が金髪の男に言い返す前に、取り巻きの男達と銀山の乱闘が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。  新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。  現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。  過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。  ――アリアドネは嘘をつく。 (過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

不思議なショートストーリーたち

フジーニー
ミステリー
さくっと読める短編集 電車内の暇つぶしに、寝る前のお供に、毎日の楽しみに。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...