ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第二章 動き出す狂気【現在 七色七奈】

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 神社の様子は昔と変わっていないと思う。急に拓けたと思ったら、木々に囲まれた広めの空間が出てくる。文字通り木々に囲まれており、空は木々に覆われ、ちょっとしたドームのようになっていた。確か、雨が降っていても、そこまで気にならずに遊べた気がする。もっとも、この場所自体が不気味で仕方のなかった私は、とにかくここで楽しく遊べた試しがなかった。そこまで仲が良いわけでもない、赤松朱里に誘われ、嫌々ながらも付き合った記憶しかない。

「氏神様を他に移す前は、まだ地元の有志が掃除なんかをこまめにしてくれてたんだけど、今じゃ荒れ放題だな」

 神社自体は、きっと老朽化などの原因があったのだろう。一部は腐り始めているようだし、なんとなくだが傾いているように見えなくもない。地面には雑草がびっしりと生えていた。しばらく、人の手が入っていない証拠だ。

「取り壊したりはしないんですか?」

 子供達が遊び半分で入ってしまうだろうし、下手をすれば、建物が急に崩れて大変なことになってしまうかもしれない。だったら、さっさと取り壊してしまえばいいのに。

「実際、取り壊すって話があったはずだし、俺はてっきり取り壊されたものだとばかり思ってたんだけどな。もしかすると、誰かが反対したのかもしれねぇ。この辺り、変なしがらみばっかりだから」

 田舎というものは、基本的に人と人の距離が近い。良い言い方をすれば、暖かいのかもしれない。でも、私の目からは監視社会に思えてならない。やれ、どこそこの息子が結婚する。やれ、どこそこさんが新しく家を建てるとか、どこそこの娘さんは仕事していない――とか、どうでもいいことさえ共有されていたりする。これならば、いっそのこと都会のほうがドライで潔い。近所関係が希薄になったと嘆くのは、大抵が上の世代であり、今の時代の人の多くは、他人の過干渉など望んでいない。

「神社ひとつ壊すのでも、周囲の顔色を伺わなきゃいけないってわけね――」

 別に田舎のことを悪く言うつもりはなかったのだが、ふと口をついて言葉が出てしまった。

「まぁ、ここはそういうところだから。もちろん、若い人達の中には、それを嫌がる人も多い。そういう人が増えれば、ちょっとは変わるのかもしれないけど、ほとんどの人がここを出て行ってしまうからなぁ。俺が言えたものじゃないけど、この辺りが限界集落になるのも時間の問題だと思う」

 大和田は少し寂しそうな笑み浮かべると、賽銭箱のほうを指さした。

「それよりもビデオテープ。本当にあるか調べてみよう」
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