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第三章 惨殺による惨殺【過去 湯川智昭】
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彼女は何も考えていないからこそ、何をするか分からないところがある。ただでさえ、危険だと大人達が言っている土地だ。理屈的にも行動を共にすべきだろう。むしろ、この状況で別々に動く理由があるなら知りたいところだ。
「うん。でも、ちょっと待って。そろそろカメラのバッテリーが切れそうで、交換しておきたいんだ」
朱里は「持っていて」と、ビデオカメラを湯川のほうへと手渡してきた。とりあえずそれを受け取ると、ディスプレイを除いてみる湯川。そこには時間の表示もされている。午後8時半だ。
「えっと、バッテリーは確か――」
朱里は大きなリュックサックを地面に下ろすと、おもむろに中を漁り始める。ディスプレイが付いているビデオカメラには、辺りを照らす照明もついており、それが面白く感じた湯川は、夏帆のことを撮影する。それに気づいた夏帆はポーズをとってみせるが、残念ながら写真ではないのだから、ポーズを取っても意味がない。
「夏帆、写真じゃないんだから――」
ふと、その時湯川は気づいた。ディスプレイ越しに見える夏帆の足元で、何かが弱々しく光ったことに。
「ちょっと智昭。どうしたの?」
ディスプレイから目を離し、自分のほうに向けて目を凝らした湯川の姿に、夏帆は戸惑ったかのような反応を見せる。しかしながら、湯川が目を凝らしているのは夏帆の足元であって、彼女自身ではなかった。
ビデオカメラを手にしたまま、そしてディスプレイ越しのまま、明らかに光を感じた場所を探る湯川。しゃがみ込むと、何かしらの文明物――少なくともミノタウロスの森にあるべきではないものを見つける。
「小型のペンライト――か」
拾い上げてみると、それは明滅を繰り返すペンライトだった。電池が切れてしまいそうなのか、それとも回路がおかしくなってしまっているのか、今にも消えてしまいそうだ。
「もしかすると、先にここに来た誰かのものかもしれないね」
湯川が拾い上げたものをマジマジと観察する夏帆。確かに、ペンライトそのものはまだ新しいし、何よりも電源が入ったままで、しかも明かりが点いていた。もし、ずっと前からあるものだったとしたら、電池はすでに切れてしまっているだろうし、明かりも消えていたことだろう。
「だが、この森の中じゃ明かりはかなり貴重なものになる。落として気づかないなんてことはないだろう」
なぜ、こんなところにペンライトが落ちているのか。現時点では理由を断定することはできない。
「うん。でも、ちょっと待って。そろそろカメラのバッテリーが切れそうで、交換しておきたいんだ」
朱里は「持っていて」と、ビデオカメラを湯川のほうへと手渡してきた。とりあえずそれを受け取ると、ディスプレイを除いてみる湯川。そこには時間の表示もされている。午後8時半だ。
「えっと、バッテリーは確か――」
朱里は大きなリュックサックを地面に下ろすと、おもむろに中を漁り始める。ディスプレイが付いているビデオカメラには、辺りを照らす照明もついており、それが面白く感じた湯川は、夏帆のことを撮影する。それに気づいた夏帆はポーズをとってみせるが、残念ながら写真ではないのだから、ポーズを取っても意味がない。
「夏帆、写真じゃないんだから――」
ふと、その時湯川は気づいた。ディスプレイ越しに見える夏帆の足元で、何かが弱々しく光ったことに。
「ちょっと智昭。どうしたの?」
ディスプレイから目を離し、自分のほうに向けて目を凝らした湯川の姿に、夏帆は戸惑ったかのような反応を見せる。しかしながら、湯川が目を凝らしているのは夏帆の足元であって、彼女自身ではなかった。
ビデオカメラを手にしたまま、そしてディスプレイ越しのまま、明らかに光を感じた場所を探る湯川。しゃがみ込むと、何かしらの文明物――少なくともミノタウロスの森にあるべきではないものを見つける。
「小型のペンライト――か」
拾い上げてみると、それは明滅を繰り返すペンライトだった。電池が切れてしまいそうなのか、それとも回路がおかしくなってしまっているのか、今にも消えてしまいそうだ。
「もしかすると、先にここに来た誰かのものかもしれないね」
湯川が拾い上げたものをマジマジと観察する夏帆。確かに、ペンライトそのものはまだ新しいし、何よりも電源が入ったままで、しかも明かりが点いていた。もし、ずっと前からあるものだったとしたら、電池はすでに切れてしまっているだろうし、明かりも消えていたことだろう。
「だが、この森の中じゃ明かりはかなり貴重なものになる。落として気づかないなんてことはないだろう」
なぜ、こんなところにペンライトが落ちているのか。現時点では理由を断定することはできない。
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