ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作

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第四章 ミノタウロスはいる【現在 七色七奈】

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「ほぅ、こっちの新聞社の方ではないのですね」

 私の働く新聞社はローカルであり、こちらにくると知名度もへったくれもないだろう。決して小さい新聞社ではないのだが、大手に比べると、そこまで力は強くない。

「はい。私自身がこっちのほう出身で、地元のことを取り上げようと思いまして」

 だからといって、大和田に密着取材する意味が分からない。自分でも設定が曖昧だと思いつつも、大和田に合わせるしかない私は、必死になって取り繕う。

「ほー、そうなんですかぁ。いやぁ、こっちのほうは少子高齢化の波が来ていましてね。若い者は外に出て行ってしまうし、取り残されるのは高齢者だけ。残った若い者に負担が集中するから、なおさらに若い人達は外に出たがる。悪循環というやつですよ」

 例え本当に記事として取り上げても、決してこの辺りの少子高齢化は解決しないことだろう。むしろ、全国規模での問題なのだから、私だけの力ではどうにもできない。乃木岳はきっと、この辺りが新聞社に相手されるほどの土地ではないと言いたかっただけなのだろうが。

「それで乃木岳先生。ちょっとお聞きしたいんですが、この教員室の中に――ビデオテープなんてあったりします?」

 いきなり大和田が核心に切り込んだ。もう少し会話の流れから本題に入るようにしたほうがいいのであるが、そもそもビデオテープの流れになるようなことはない。どう切り出そうか迷っていたが、いっそのこと大和田くらい潔くやったほうがいいのかもしれない。

「ビデオテープですか? あの、一昔前の」

 ビデオテープ自体は世代なのであろうが、時代の移り変わりによってビデオテープ自体は過去のものとなった。今の世の中、ビデオテープを今でも使っているという人は稀だろう。

「はい、そうです。しかも、ハンディビデオカムに入る大きさのやつです」

 乃木岳の言葉に大和田が答えると、やはり世代ということもあり、すぐにピンときたらしい。

「あぁ! あの小さいビデオテープですか。あー、懐かしいなぁ。家にもありましたよ」

 話は間違いなく本題に入っているはずなのに、どうにも核心から話がずれ始める。大和田との会話に割り込むのはどうかと思ったが、いい顔ばかりはしていられない。

「あの、それで――ビデオテープのほうはあります?」

 乃木岳はやや驚いたような表情を見せたが、自身の話が脱線を始めていたことに気づいたのだろう。気を取り直すと改めて口を開いた。
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