ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース2 干しかんぴょう殺人事件【出題編】

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 この時点で大東が何かをした――という可能性はゼロに等しくなった。もし、袴田の奥さんに何かをしたのであれば、2人目の美奈子が異変に気づいたはずだ。少なくとも、玄関先まで出迎えてやり取りすることはできなかったであろう。

「2人目の訪問者が訪れた時点で、袴田様の奥様には異変がなかった。しかしながら、3人目が訪問した時点では家から出て来ず、まるで反応がなかったと――。もし、これが殺人ならば、2人目、もしくは3人目が嘘をついている可能性がありますね」

 冥がぽつりと呟いたのを見て、一里之はふと自社のシステムを思い出した。基本的に営業は、1日の終わりに簡単な日報を提出しなければならない。何時にどこの誰のところに伺ったのか、何時から何時の間に休憩をとったのか――など、外回りがほとんどであるがゆえに、日報が義務付けられているわけだ。

「いや……そもそも、大東が最初にここを訪問したという事実自体、やろうと思えば偽装することができます。多分、この資料も本人の証言と会社に提出された日報を元に作成されているんでしょうけど、口では何とでも言えるし、日報の内容に虚偽があったとしても、その裏付けを取ることは難しいです。お客さんに確認すれば裏付けできるかもしれませんが、生憎なことに袴田さんの奥さんは亡くなっていますから――いくらでも大東には偽装が可能だったことになります」

 前から大東が気に入らなかった……という理由だけではないが、会社のシステムの観点から見ても、大東の証言には穴がある。本人がどうこうというわけではなく、いくらでも偽装できる環境にあることに気づいてしまったのだ。入社したばかりの頃、悪い先輩辺りが、日中パチンコで時間を潰し、お客のところに訪問したことにして日報を出していたのを何度も見た。それが簡単にまかり通ってしまっていたのだ。

「そもそも、1人目の訪問者が本当に1人目に訪れたのかは――分からないということですわね」

 なんだか頭がこんがらがりそうな言い方ではあるが、コトリの言う通りだ。実は大東が2人目の訪問者だった可能性だってある。一概に間違いなく1人目だったと証明することができないのだ。

「訪問した順番は、当時の証言を元に特定されただけで、必ずしも証言通りの順番というわけじゃねぇ。もし、これが殺しなら、誰にでも犯行は可能だったわけだ」

 煙草の残り香をまといながら鯖洲が戻ってくる。一里之は喫煙者だから分からないが、非喫煙者からすると、残り香だけでもかなりの臭いらしい。
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