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ケース3 山奥の事故物件【出題編】
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山荘は思ったよりも小ぢんまりとした建物だった。当然のように木造であり、玄関の前には簡易的なバルコニーがある。階段を数段登ってバルコニーを経由した先に玄関があるような造りだ。すでに持ち主を失ってしまい、管理をする人間がいないからであろう。辺りは草木が鬱蒼と生い茂っていた。バルコニーに階段へと続く道ができているのは、先行隊がいるからなのであろう。
まるで一里之達の到着を待っていたかのごとく、山荘の裏手からエンジン音のようなものが響いた。何事かと思ったが、しかしようやく目的地に到着したという安堵感にくわえ、蓄積された疲労のせいで、その場から動こうという気にはなれなかった。鯖洲も同様らしく、珍しく両膝に手をついて、呼吸を整えているようだ。
こんな山奥の廃山荘に来る物好きはいない。ゆえに、エンジン音の正体も関係者が何かしらの機械を動かしていることになるだろう。そんなことを考えながら、音のする方向を追っていると、ふいにメイド姿が見えた気がした。足のたかい草木に遮られてしまっているが、改めて間違いないと確信した。冥だ。
「あいつのポテンシャルはメイドのそれ以上だろうが、どう考えても」
愚痴じみた感じで鯖洲が言う。確かに、この山を登るだけでも、彼女はかなりの体力を持ち合わせているといえよう。鯖洲にペースを乱されてはしまったが、一里之だってこの有様だ。少なくとも草刈機を肩からかけて、周辺の草刈りをする余力はない。
うなるエンジン音。それに呼吸を合わせるようにして、草刈機のヘッドを動かして草を刈るメイド。誰得なのだろうか。彼女のポテンシャルの高さには驚かされるばかりだが、その――誰得なのか。
彼女の姿を目で追うと、その先に掘建小屋のような簡易的な建物があることに気づいた。もしかすると、そこが事件現場となった薪割り小屋なのかもしれない。いや、そう考えて間違いはないだろう。
冥はこちらの姿に気づいたのか、草刈機のエンジンを止める。そして、腕時計に視線を移して一言。
「思ったよりも時間がかかりましたね。おかげさまで、草刈りなどという余計な仕事まですることになってしまいました」
こちらのほうに近づいてくると、肩からストラップを外し、鯖洲のほうに草刈機を差し出す冥。
「残り、お願いしますね」
「――パス!」
冥が言い終わるかどうかの絶妙なタイミングで声を張り上げる鯖洲。その視線は一里之のほうへと向けられる。嫌な予感がした。
まるで一里之達の到着を待っていたかのごとく、山荘の裏手からエンジン音のようなものが響いた。何事かと思ったが、しかしようやく目的地に到着したという安堵感にくわえ、蓄積された疲労のせいで、その場から動こうという気にはなれなかった。鯖洲も同様らしく、珍しく両膝に手をついて、呼吸を整えているようだ。
こんな山奥の廃山荘に来る物好きはいない。ゆえに、エンジン音の正体も関係者が何かしらの機械を動かしていることになるだろう。そんなことを考えながら、音のする方向を追っていると、ふいにメイド姿が見えた気がした。足のたかい草木に遮られてしまっているが、改めて間違いないと確信した。冥だ。
「あいつのポテンシャルはメイドのそれ以上だろうが、どう考えても」
愚痴じみた感じで鯖洲が言う。確かに、この山を登るだけでも、彼女はかなりの体力を持ち合わせているといえよう。鯖洲にペースを乱されてはしまったが、一里之だってこの有様だ。少なくとも草刈機を肩からかけて、周辺の草刈りをする余力はない。
うなるエンジン音。それに呼吸を合わせるようにして、草刈機のヘッドを動かして草を刈るメイド。誰得なのだろうか。彼女のポテンシャルの高さには驚かされるばかりだが、その――誰得なのか。
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