ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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「ここはもう窓辺野不動産のもんだ。それを管理するのは――会社の人間だろうが」

 真っ当なことを言っているように思えるが、しかし鯖洲の言い分は、ある意味で押し付けがましい。自分がやりたくないから、もっともらしい理由をつけているだけではないか。

「お願いします。本来ならば、こちらの仕事ではありませんから」

 もはや、黙って冥から草刈機を受け取るしかなかった。もちろん、これから草刈りをやる体力は残っていない。とりあえず引き受けたふりだけして、うやむやにしてしまおう。

「分かりました。少し休んでから――」

「お嬢様が、ここに適した格好で来られるとは到底考えられません。ここまで背の高い草があると転んで怪我をなされるかもしれませんから、早急にお願いします」

 まるで一里之の思考を先回りして読んだかのごとく呟く冥。一里之は仕方がなく草刈機のエンジンをかけるしかなかった。田舎育ちで多少は触ったことがあったからか、あっさりとエンジンがかかってしまったことが悔しい。

「じゃあ、後はよろしくなぁ」

 うまい具合に一里之へと全てを押しつけてくれた鯖洲。草をかき分けて、自分だけさっさとバルコニーへと上がった。

「中は思ったよりも綺麗ですが、しかし廃山荘に違いはありませんので、掃除を手伝ってもらいます」

 鯖洲と同じように草根をかき分けてバルコニーへと向かう冥。何度か目をこすって確認したが、やはり彼女の格好はメイド姿である。誰かに従事するための格好とはいえ、冥の場合はメイド服を扱う幅が大きいのではないだろうか。

「おー、掃除くらいならやってやらんでもない。まぁ、草刈りに比べたら遥かにマシだわ。中、電気とか通ってんだろうな?」

 電気が通っていれば、きっとエアコンのひとつやふたつあるはずだ。登山を終えてほてってしまった体を冷やすには絶好であろう。しかしながら、そんな鯖洲の思惑は冥によって阻止された。

「こんなところに電気が通っていると思いますか? 自家発電機を動かさないと、多分電気は供給されないかと」

 これだけの山奥であるし、電気は通っていなくて当たり前。電波を飛ばしてやろうと考える人間はいても、わざわざ電線を引っ張ってまで、こんな山奥に電気を提供しようと考える人はいなかったらしい。

「はぁ? 自家発電機の燃料は?」

 鯖洲を尻目に山荘の中に入ろうとする冥。ぽつりと「下から調達すればあるかと」などという恐ろしいことを言う。すなわち、燃料はないということか。
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