ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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 悪い予感というものは、どうしてこうも当たってしまうのだろうか。大抵、人間が抱く良い予感というものは、単なる思い込みだったり、思い過ごしだったりすることが多いのに、なぜゆえにうっすらとしか抱かない嫌な予感というものは、当たってしまうのか。今日は何か良いことが起こりそうな気がする――という日は何も起こらないくせに、悪いことが起きそうな気がする――という日に限って、それは見事なまでに的中するものだ。この時ばかりは、外れても良かったのではないかと今でも思う。人生長いのだから、ただの一度くらい外れてくれたっていいではないか。けれども、得てして外れて欲しい時ほど、悪い予感というのは当たる。残念なことに。

 神社の境内にあった大きな木。まだ葉もついていなかったから何の木なのかは分からなかったが、その立派な木が伸ばした枝の先に愛はぶら下がっていた。

 ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら。風もないのに、揺れていた。ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら。一里之の背の高さに、ほんの少しだけ足した位置で、彼女の足が揺れていた。ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら。

 腰が抜けるという言葉がある。しかしながら、どうやら本当に腰がどうこうなるわけではないらしい。それよりも先に膝から力が一気に抜け、糸が切れてしまったマリオネットのように崩れ落ちる。この感覚こそ、まるで腰が抜けてしまったように錯覚してしまうのだろう。自ら経験した一里之がそう思うのだから間違いない。

 ――そこからの記憶は曖昧で、まるで夢を見ているようだった。ただ、日が落ちてしまった神社の周囲に赤色灯が踊り、普段ならば静かなはずの集落が騒がしかったことだけは覚えている。

 気がついたら愛の葬儀は終わってしまっていた。大げさかもしれないが、しかし本当にそうなのだ。愛の遺体を発見してから葬儀が終わるまで、すっぽりと記憶が抜け落ちてしまっている。

 事件は愛の意志による自殺だと断定された。恥ずかしながら、その事実を知ったのも、葬儀が終わってからだった。斑目が実に申し訳なさそうに報告してくれたことを、うっすらとではあるが覚えている。

 千早は警察の判断に異議を申し立ててくれたらしいが、すっかりと憔悴している一里之のことを気遣って、あえて触れないようにしてくれたようだ。これは本人に聞いたわけではなく、こうして日常を取り戻した一里之が、ふと振り返って思うことだった。

 そして、一里之は逃げるようにして、親のすすめで、県外の窓辺野不動産へと就職した。

 あの事件がどうなったのかは、怖くて今でも聞けずにいる。
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