192 / 391
ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】
12
しおりを挟む
その話に触れることは、自然とタブーとなった。一里之自身が避けていたということもあるのかもしれない。忙しさにかまけて地元に帰らないようになったのも、成人式も出席するだけしてトンボ帰りしてしまったのも、おそらくは胸の内に秘められていた、過去の事実を覗き込みたくなかったからだ。
――もしかして、今こそ向き合う時なのかもしれない。きっかけはコトリの過去にあるのかもしれないが、もしかすると心のどこかでずっと引っかかっていて、こうして向き合うきっかけを探していただけなのかもしれない。だからこそ、こうして愛の墓参りに来ることができたのかもしれないのだから。
「それにしても、随分と賑やかなとこだな。これだけの大所帯なら、そこまで寂しくねぇんじゃねぇか?」
一里之はしゃがみ込むと、改めて愛の墓石に向かって手を合わせた。いずれ人間は誰しもが、同じように冷たい石の下に眠ることになる。けれども、あまりにも早すぎるのではないか。まだ、年端もいかぬ――と言われたっておかしくないくらい早かったのではないだろうか。
あの時、愛の身に何が起きたのか。自殺ではないのならば、誰があんな目に遭わせたのか。以前は逃げることしかできなかったが、しかし今は違う。少しばかり向き合う勇気のようなものが湧いていた。
ふと、一里之に何かを伝えたいかのごとく、一陣の風が吹き抜けた。それと同時に透き通ったか細い声がしたような気がした。
「――奇遇ですね」
振り返ると、そこには手桶などを手にした千早の姿があった。まさか、こんなところで会うとは思わなかった。
「猫屋敷……どうしてここに?」
立ち上がって墓石の前を譲ると、ろうそくまで持参してくれた千早が、手早くそれらを準備してくれる。
「久方ぶりに一里之君が帰ってきたから、報告しておこうと思って。でも、一里之君自身がきてくれたのであれば、余計なお世話だったのかも」
黒のワンピースという飾り気のない格好であるが、細くて白い肌の千早には、それが随分としっくりときていた。改めて自分達が大人になったのだなと実感する。
「あぁ、正直なところさ、あの時のことはあんまり覚えてねぇんだ。でもさ、いつまでも見えないふりを続けるわけにもいかねぇしさ、あいつからしたら面白くねぇだろうと思ってな。ちょっと遅くなったけど詫びを入れにさ」
以前にもここに来たことはあると思う。記憶が曖昧だが、なんとなく既視感のようなものは残っているから。ただ、自らの意思でここを訪れるのは、もしかするとこれが初めてだったのかもしれない。
――もしかして、今こそ向き合う時なのかもしれない。きっかけはコトリの過去にあるのかもしれないが、もしかすると心のどこかでずっと引っかかっていて、こうして向き合うきっかけを探していただけなのかもしれない。だからこそ、こうして愛の墓参りに来ることができたのかもしれないのだから。
「それにしても、随分と賑やかなとこだな。これだけの大所帯なら、そこまで寂しくねぇんじゃねぇか?」
一里之はしゃがみ込むと、改めて愛の墓石に向かって手を合わせた。いずれ人間は誰しもが、同じように冷たい石の下に眠ることになる。けれども、あまりにも早すぎるのではないか。まだ、年端もいかぬ――と言われたっておかしくないくらい早かったのではないだろうか。
あの時、愛の身に何が起きたのか。自殺ではないのならば、誰があんな目に遭わせたのか。以前は逃げることしかできなかったが、しかし今は違う。少しばかり向き合う勇気のようなものが湧いていた。
ふと、一里之に何かを伝えたいかのごとく、一陣の風が吹き抜けた。それと同時に透き通ったか細い声がしたような気がした。
「――奇遇ですね」
振り返ると、そこには手桶などを手にした千早の姿があった。まさか、こんなところで会うとは思わなかった。
「猫屋敷……どうしてここに?」
立ち上がって墓石の前を譲ると、ろうそくまで持参してくれた千早が、手早くそれらを準備してくれる。
「久方ぶりに一里之君が帰ってきたから、報告しておこうと思って。でも、一里之君自身がきてくれたのであれば、余計なお世話だったのかも」
黒のワンピースという飾り気のない格好であるが、細くて白い肌の千早には、それが随分としっくりときていた。改めて自分達が大人になったのだなと実感する。
「あぁ、正直なところさ、あの時のことはあんまり覚えてねぇんだ。でもさ、いつまでも見えないふりを続けるわけにもいかねぇしさ、あいつからしたら面白くねぇだろうと思ってな。ちょっと遅くなったけど詫びを入れにさ」
以前にもここに来たことはあると思う。記憶が曖昧だが、なんとなく既視感のようなものは残っているから。ただ、自らの意思でここを訪れるのは、もしかするとこれが初めてだったのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
【完結】真実の愛はおいしいですか?
ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。
稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。
王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。
お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。
でも、今は大きくなったので見えません。
―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語
※童話として書いています。
※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる