ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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 その話に触れることは、自然とタブーとなった。一里之自身が避けていたということもあるのかもしれない。忙しさにかまけて地元に帰らないようになったのも、成人式も出席するだけしてトンボ帰りしてしまったのも、おそらくは胸の内に秘められていた、過去の事実を覗き込みたくなかったからだ。

 ――もしかして、今こそ向き合う時なのかもしれない。きっかけはコトリの過去にあるのかもしれないが、もしかすると心のどこかでずっと引っかかっていて、こうして向き合うきっかけを探していただけなのかもしれない。だからこそ、こうして愛の墓参りに来ることができたのかもしれないのだから。

「それにしても、随分と賑やかなとこだな。これだけの大所帯なら、そこまで寂しくねぇんじゃねぇか?」

 一里之はしゃがみ込むと、改めて愛の墓石に向かって手を合わせた。いずれ人間は誰しもが、同じように冷たい石の下に眠ることになる。けれども、あまりにも早すぎるのではないか。まだ、年端もいかぬ――と言われたっておかしくないくらい早かったのではないだろうか。

 あの時、愛の身に何が起きたのか。自殺ではないのならば、誰があんな目に遭わせたのか。以前は逃げることしかできなかったが、しかし今は違う。少しばかり向き合う勇気のようなものが湧いていた。

 ふと、一里之に何かを伝えたいかのごとく、一陣の風が吹き抜けた。それと同時に透き通ったか細い声がしたような気がした。

「――奇遇ですね」

 振り返ると、そこには手桶などを手にした千早の姿があった。まさか、こんなところで会うとは思わなかった。

「猫屋敷……どうしてここに?」

 立ち上がって墓石の前を譲ると、ろうそくまで持参してくれた千早が、手早くそれらを準備してくれる。

「久方ぶりに一里之君が帰ってきたから、報告しておこうと思って。でも、一里之君自身がきてくれたのであれば、余計なお世話だったのかも」

 黒のワンピースという飾り気のない格好であるが、細くて白い肌の千早には、それが随分としっくりときていた。改めて自分達が大人になったのだなと実感する。

「あぁ、正直なところさ、あの時のことはあんまり覚えてねぇんだ。でもさ、いつまでも見えないふりを続けるわけにもいかねぇしさ、あいつからしたら面白くねぇだろうと思ってな。ちょっと遅くなったけど詫びを入れにさ」

 以前にもここに来たことはあると思う。記憶が曖昧だが、なんとなく既視感のようなものは残っているから。ただ、自らの意思でここを訪れるのは、もしかするとこれが初めてだったのかもしれない。
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