ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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「私、色々と考えたんです。あの一件に疑問を抱きながら、私はどうするべきなのか――。一里之君は塞ぎ込んでしまったし、斑目さんも警察の決定に対して詫びるばかり。どう考えたってあれは……いえ、やめておきましょうか」

 きっと、一里之だけだったら、まともな墓参りにならなかったのであろう。そう思えてしまうほどに、千早は手際良く墓参りの準備をする。手桶に水をくんで、柄杓で墓石に水をかけてやる。盆の墓参りにそんな動作を見たことがあったような気がするのだが、実際に手桶と柄杓を準備する段階で省いてしまった。きっと、この墓の下に眠る本人も呆れているはずであろう。

「いや、続けてくれ。俺が知ってることは、警察が自殺だと断定したことくらいだ。それに対して、お前は異論を唱えてくれたんだろ? 結局、そのあと俺は逃げるようにして地元を離れたから、その先のことは分からないんだ。なんていうか情けない話だよな」

 コトリの事件について知るため、こうして地元に帰ってきた。少なくとも一里之本人はそのつもりだった。だから、墓参りは帰ってきたついでであって、その件に触れるのだって、ついでのはずだった。でも、今は少しばかり捉え方が異なっている。あの時、何があったのか。どうしてあのような結果になってしまったのか。知りたかった。

「一里之君。数年前のことなんだけど、私のおばあちゃんが亡くなったんです。もう高齢だったから覚悟していたつもりだし、看取るのも唯一の肉親である私の役目だと思っていた。そして、見送った後は日常へと少しずつ戻っていくものだと思っていたの。だって、誰もがそうだもの。こうしている今だって、大切な人を失った人がいる。その喪失感から立ち直ろうとしている人がいるはずだから」

 ふと、手際良く動いていた千早の手が止まった。あえて振り返らないようにしていたのは、もしかすると一里之に顔を見られたくなかったのかもしれない。

「でもね、駄目だった。いつかは必ず訪れる別れなんだけど、大切な人を失った時の喪失感は大きかったよ。愛さんが亡くなった時、私はそれなりの喪失感を抱いたつもりになっていただけ。一里之君はもっと大きな喪失感を抱いたんだよね? 多分、今でも拭いきれないほどの喪失感を」

 ふと微かな風が吹き、それが合図だったかのように千早は再び動き出した。ふっと、線香の香りが辺りに漂う。まるで一里之と千早のことを包むかのごとく。
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