ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

文字の大きさ
193 / 391
ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

13

しおりを挟む
「私、色々と考えたんです。あの一件に疑問を抱きながら、私はどうするべきなのか――。一里之君は塞ぎ込んでしまったし、斑目さんも警察の決定に対して詫びるばかり。どう考えたってあれは……いえ、やめておきましょうか」

 きっと、一里之だけだったら、まともな墓参りにならなかったのであろう。そう思えてしまうほどに、千早は手際良く墓参りの準備をする。手桶に水をくんで、柄杓で墓石に水をかけてやる。盆の墓参りにそんな動作を見たことがあったような気がするのだが、実際に手桶と柄杓を準備する段階で省いてしまった。きっと、この墓の下に眠る本人も呆れているはずであろう。

「いや、続けてくれ。俺が知ってることは、警察が自殺だと断定したことくらいだ。それに対して、お前は異論を唱えてくれたんだろ? 結局、そのあと俺は逃げるようにして地元を離れたから、その先のことは分からないんだ。なんていうか情けない話だよな」

 コトリの事件について知るため、こうして地元に帰ってきた。少なくとも一里之本人はそのつもりだった。だから、墓参りは帰ってきたついでであって、その件に触れるのだって、ついでのはずだった。でも、今は少しばかり捉え方が異なっている。あの時、何があったのか。どうしてあのような結果になってしまったのか。知りたかった。

「一里之君。数年前のことなんだけど、私のおばあちゃんが亡くなったんです。もう高齢だったから覚悟していたつもりだし、看取るのも唯一の肉親である私の役目だと思っていた。そして、見送った後は日常へと少しずつ戻っていくものだと思っていたの。だって、誰もがそうだもの。こうしている今だって、大切な人を失った人がいる。その喪失感から立ち直ろうとしている人がいるはずだから」

 ふと、手際良く動いていた千早の手が止まった。あえて振り返らないようにしていたのは、もしかすると一里之に顔を見られたくなかったのかもしれない。

「でもね、駄目だった。いつかは必ず訪れる別れなんだけど、大切な人を失った時の喪失感は大きかったよ。愛さんが亡くなった時、私はそれなりの喪失感を抱いたつもりになっていただけ。一里之君はもっと大きな喪失感を抱いたんだよね? 多分、今でも拭いきれないほどの喪失感を」

 ふと微かな風が吹き、それが合図だったかのように千早は再び動き出した。ふっと、線香の香りが辺りに漂う。まるで一里之と千早のことを包むかのごとく。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...