ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース4 ロンダリングプリンセス誕生秘話【出題編】

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「そうじゃなきゃ――きっとこっちになんて二度と帰ってこなかっただろうよ。ずっと、心のどこかで思ってたんだわ。いつか向き合わないといけないってさ」

 こうして愛の墓参りに、特に大きな抵抗もなく訪れたことができたのは、きっと一里之の中である程度の覚悟ができたからなのであろう。

 普通に社会人となり、それなりに仕事をして、おそらくそれなりに偉くなって……けれども、地元には帰ろうともせず、そして地元を避け続けながら生きていくのだとばかり思っていた。事実、この春に異動さえなければ、その通りになっていたことだろう。

 お嬢様お世話係に着任し、コトリと出会い、そして鯖洲や冥などと出会った。しかも、仕事の内容は過去に事件の起きた事故物件を手配して、お嬢様へのお膳立てをすること。運命などというものは信じない。信じはしないが、しかし春からお嬢様お世話係なる奇異なポジションに着いたのも、まるで指し示されたかのような気がする。事実、こうして一里之は地元へと帰ってきて、過去に逃げ出してしまった事件と向き合おうとしているのだから。

「そう。だったら現時点での私の見解――聞いてもらってもいいですか?」

 両手を合わせ、墓の主へと黙祷をした千早は、一里之の隣に立ち、そして俯瞰的に墓石を見つめる。それは一里之だけではなく、今は亡き愛に向けて喋るためだったのかもしれない。一里之は小さく頷いた。

「当時、警察は愛さんを自殺であると断定しました。その決定打となったのは――遺書が残されていたからです。でも、正直なところそれだけなんです。現場の状況から察するに、やっぱり私はおかしいと思うんです」

 かつて、高校時代も、このような切り口から始まる千早の口上を聞いたことがあった。それを聞くことで、事件の解決が目前であることを察したものだ。しかしながら、今回ばかりはそうではない。解決にいたらなかったからこそ、こうして今も愛は自殺ということになっている。

「ひとつ、なぜ集落の人ですら滅多に立ち入らない氏子様の神社で自殺する必要があったのか。一里之君だって、あの日まで神社の存在さえ知らなかったでしょう? 当然、愛さんだって神社の存在を知らなかったはずです。もし、仮に愛さんが自殺を考えていたとして、そんな見ず知らずの場所で命を絶とうと考えるでしょうか?」

 感覚的には、きっと富士の樹海に近いのかもしれない。誰も知らない場所で命を絶ちたかった――と考えるには、しかし千早の住んでいる地域というのは不自然だ。
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