257 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【出題編】
34
しおりを挟む
完全に弱ってしまっている。自分でもわかるほどに。こうして、冤罪事件というものが生まれてしまうのではないだろうか。ただ、警察側の考えも理解できなくはない。なんせ、曲がりなりにも一里之を逮捕してしまったのだ。そして、すでに数日間の拘束を強要している。この状況で、間違いでした――ではすまない。日本にある数多くの冤罪事件においても、無理矢理に有罪に持っていこうとする節があるように見えるのも、きっとこの辺りが関わってくる。
捕まった時点で、逮捕された時点で、もしかすると運命は決まってしまっているのかもしれない。だとすれば、あっさりと認めてしまったほうがいいのではないだろうか。そんなことばかりが、頭の中をぐるぐると回る。
しかしながら、そんな一里之の悪夢のようなループに、1本の楔が打ち込まれた。それは、同じことを繰り返している一里之にとって、ある意味で新鮮であり、また濁ってしまった思考を取り戻すような出来事だった。
「面会だ――」
最初は誰に向けて声をかけられているのか分からなかった。改めて自分に対して面会者がいると告げられた時、ようやく夢の中にいるような、ふわふわとした浮遊感から解放されたような気がする。
同じことの繰り返しだった一里之。まさか、面会だけで、ここまで心が躍るとは思わなかった。おそらく、会いに来てくれたのはコトリ達であろう。きっと、事件の進捗について報告に来てくれたのだ。
スキップができない呪いがかけられていなければ、きっとスキップのひとつでもしていたのであろう。この時ばかりは、呪いがもどかしかった。もっとも、そんな浮かれた姿を見せたら怒られそうであるが。
前回と同じ部屋に通され、制限時間を告げられて席へと着く。アクリル板の向こう側にいた人物の姿を見て、思わず警察官のほうへと振り返った。本当にこの人物が面会を望んだのか――そのようなニュアンスを含んでいたつもりだった。なぜなら、アクリル板向こう側にいたのは、決して一里之のことを心配して、面会に顔を出すような人物ではなかったのだから。
「大東」
もしかすると、彼のことを睨みつけてしまったのかもしれない。干しかんぴょう事件において、彼が犯罪に手を染めたかもしれないという思考が、なおさらに彼を悪者に見せているのかもしれなかった。
「やぁ、一里之。いい様だねぇ」
開口一番。一里之のことを煽るような言い草。間違いなく心配だから面会に訪れたというわけではなさそうだ。
捕まった時点で、逮捕された時点で、もしかすると運命は決まってしまっているのかもしれない。だとすれば、あっさりと認めてしまったほうがいいのではないだろうか。そんなことばかりが、頭の中をぐるぐると回る。
しかしながら、そんな一里之の悪夢のようなループに、1本の楔が打ち込まれた。それは、同じことを繰り返している一里之にとって、ある意味で新鮮であり、また濁ってしまった思考を取り戻すような出来事だった。
「面会だ――」
最初は誰に向けて声をかけられているのか分からなかった。改めて自分に対して面会者がいると告げられた時、ようやく夢の中にいるような、ふわふわとした浮遊感から解放されたような気がする。
同じことの繰り返しだった一里之。まさか、面会だけで、ここまで心が躍るとは思わなかった。おそらく、会いに来てくれたのはコトリ達であろう。きっと、事件の進捗について報告に来てくれたのだ。
スキップができない呪いがかけられていなければ、きっとスキップのひとつでもしていたのであろう。この時ばかりは、呪いがもどかしかった。もっとも、そんな浮かれた姿を見せたら怒られそうであるが。
前回と同じ部屋に通され、制限時間を告げられて席へと着く。アクリル板の向こう側にいた人物の姿を見て、思わず警察官のほうへと振り返った。本当にこの人物が面会を望んだのか――そのようなニュアンスを含んでいたつもりだった。なぜなら、アクリル板向こう側にいたのは、決して一里之のことを心配して、面会に顔を出すような人物ではなかったのだから。
「大東」
もしかすると、彼のことを睨みつけてしまったのかもしれない。干しかんぴょう事件において、彼が犯罪に手を染めたかもしれないという思考が、なおさらに彼を悪者に見せているのかもしれなかった。
「やぁ、一里之。いい様だねぇ」
開口一番。一里之のことを煽るような言い草。間違いなく心配だから面会に訪れたというわけではなさそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告
M‐赤井翼
恋愛
大阪ニコニコプロレスのエースレスラーの安稀世は、試合中の事故により気を失い、長年の彼女のファンの長井三郎に付き添われ病院搬送されます。意識を取り戻した稀世は、三朗と「両想い」であったことを知りますが、その直後、医師から出た診断は「脳腫瘍」と「すい臓がん」で「余命半年」の宣告でした。
悩み落ち込む稀世を三朗とニコニコプロレス代表のまりあ、ニコニコ商店街の菅野直たち仲間が支えます。
「余命半年を宣告された嫁が…」シリーズの第1話。
重いテーマではありますが、極力「暗く」ならないように話を展開するようにしました。一応、「コメディー作品」ですのでハッピーエンドを目指して執筆しました。
「病気」で「悩んでる方」、また「病気」で悩んでいる方の「周りの方」に少しでも笑っていただけたらと思って書いた作品です。
「人間誰も一人じゃない!」を根底にする「絆」をテーマに書きました。ゆるーく読んでいただけると幸いです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
白馬のプリンスくんには、どうやら好きな人がいるらしい
兎束作哉
BL
――これは幼馴染ニコイチが、幼馴染から一歩進んで恋人になるまでの物語。
白雪凛は188cmの高身長の高校2年生。しかし、授業の終わりには眠ってしまう生粋の居眠り魔であり、名前も相まって“白雪姫くん”や“凛ちゃん”と弄られる。
そんな凛を起こしてくれるのは、白馬燈司という155㎝の低身長の幼馴染男子。燈司は、低身長ながらも紳士的で名前を弄って”おうじくん“と呼ばれる文武両道の優等生。
いつも通りの光景、かわいい幼馴染の声によって起こされる凛は、当たり前の日常に満足していた。
二人はクラス内で、“白雪姫カップル“と呼ばれるニコイチな関係。
また、凛は、燈司を一番知っているのは自分だと自負していた。
だが、ある日、いつものように授業終わりに起こされた凛は、燈司の言葉に耳を疑うことになる。
「俺、恋人ができたんだ」
そう告白した燈司に凛は唖然。
いつもの光景、秘密もないニコイチの関係、よく知っているはずの幼馴染に恋人が!?
動揺する凛に追い打ちをかけるよう、燈司は「恋人とのデートを成功させたいから、デート練習の相手になってほしい」と頼み込んできて……?
【攻め】白雪凛×白馬燈司【受け】
鈍感高身長攻め(平凡)×王子さま系低身長受け(美形)
※毎日12:00更新です
※現代青春BLです
※視点は攻めです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる