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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
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「自室にいると思いますわ。でも心配はご無用。あの人は逃げたり隠れたりはしません。そんなことをしてしまったら、これまでしたことが無駄になってしまうから」
そう、全てが無駄になってしまう。この辺りについては千早も気づいていたようだったが、あえて互いに触れてはいなかった部分ではある。
「それって、どういう意味なんだ? それにお嬢、あいつに向かって妙なことを言ってたよな? いい加減もったいぶらないで、俺達にも分かるように教えてくれよ」
母親が帰ってくるまで時間を持て余しているわけだし、考えを整理するという意味でもちょうどいいのかもしれない。コトリは小さく頷くと、自分の頭にある考えを口にした。
「きっかけは過去の事件になりますわね。まず、お姉様は何かしらの理由で狂言誘拐をすることを思いついた。ただ、当時まだ高校生だったお姉様ひとりでやれることには限りがありますわ。そこで、協力してくれる人物を探すことにした。そこで白羽の矢が立ったのが、おそらく――」
「寺山さんだったと」
コトリの言葉を奪うかのごとく冥が漏らす。
「えぇ、寺山は運転手という立場上、お姉様と外に出ても全く疑われることはない。狂言誘拐を実行するために、彼ほど適役はいないと思う。そして、寺山はお姉様に肩入れをして、狂言誘拐事件を作り上げることにした。ただ、そう考えるといくつかおかしな証言が出てくる。それは、わざわざホテルの人間や周囲の人達が覚えているような特徴的な格好で、現場の周囲にて目撃されていること。これがどうも引っかかるの。狂言誘拐に必要だと思う?」
鯖洲達が集めた証言の中には、いくつもの目撃情報があった。もし狂言誘拐をするのであれば、できる限り目立たず、自分達の痕跡など残さないようにするべきであるが、それどころか逆に目立つ格好をして目撃されてしまっている。まるで、誰かに覚えていて欲しいかのようなのだ。
「いや、いらねぇだろ。大体、誘拐された本人がホテル暮らしなんて贅沢はおかしな話だし、それこそ調べれば、後で狂言誘拐だったってばれるだろうに」
コトリの言いたかったことをピンポイントで突いてくれる鯖洲。もっと簡単に言ってしまうと――。
「そう、目撃されすぎなのよ。後で調べたら、狂言誘拐だったって分かるくらい目撃証言が残っているの。しかも、制服しか持っていないはずのお姉様が、なぜかドレスを着ている姿を目撃されているとなると、これはもう、あえて目撃させ、証言者を増やしたとしか考えられない」
そう、全てが無駄になってしまう。この辺りについては千早も気づいていたようだったが、あえて互いに触れてはいなかった部分ではある。
「それって、どういう意味なんだ? それにお嬢、あいつに向かって妙なことを言ってたよな? いい加減もったいぶらないで、俺達にも分かるように教えてくれよ」
母親が帰ってくるまで時間を持て余しているわけだし、考えを整理するという意味でもちょうどいいのかもしれない。コトリは小さく頷くと、自分の頭にある考えを口にした。
「きっかけは過去の事件になりますわね。まず、お姉様は何かしらの理由で狂言誘拐をすることを思いついた。ただ、当時まだ高校生だったお姉様ひとりでやれることには限りがありますわ。そこで、協力してくれる人物を探すことにした。そこで白羽の矢が立ったのが、おそらく――」
「寺山さんだったと」
コトリの言葉を奪うかのごとく冥が漏らす。
「えぇ、寺山は運転手という立場上、お姉様と外に出ても全く疑われることはない。狂言誘拐を実行するために、彼ほど適役はいないと思う。そして、寺山はお姉様に肩入れをして、狂言誘拐事件を作り上げることにした。ただ、そう考えるといくつかおかしな証言が出てくる。それは、わざわざホテルの人間や周囲の人達が覚えているような特徴的な格好で、現場の周囲にて目撃されていること。これがどうも引っかかるの。狂言誘拐に必要だと思う?」
鯖洲達が集めた証言の中には、いくつもの目撃情報があった。もし狂言誘拐をするのであれば、できる限り目立たず、自分達の痕跡など残さないようにするべきであるが、それどころか逆に目立つ格好をして目撃されてしまっている。まるで、誰かに覚えていて欲しいかのようなのだ。
「いや、いらねぇだろ。大体、誘拐された本人がホテル暮らしなんて贅沢はおかしな話だし、それこそ調べれば、後で狂言誘拐だったってばれるだろうに」
コトリの言いたかったことをピンポイントで突いてくれる鯖洲。もっと簡単に言ってしまうと――。
「そう、目撃されすぎなのよ。後で調べたら、狂言誘拐だったって分かるくらい目撃証言が残っているの。しかも、制服しか持っていないはずのお姉様が、なぜかドレスを着ている姿を目撃されているとなると、これはもう、あえて目撃させ、証言者を増やしたとしか考えられない」
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