ポケットのなかの空

三尾

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DAY5

13

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「セクハラはともかく、室内で一対一っていうのは無関係じゃないかもしれない。家の中みたいに閉じた場所だと、物理的にも心理的にも人間同士の距離が近くなって、感情が極端に振れやすくなるんじゃないかと思うんだ。特に、響野は今……弱ってるから」
 正面切って“寂しそう”、“弱ってる”と指摘されて感情が波立つ。口に出しては何も言わなかったものの、表情が険しくなっていたのだろう。気にするように水元が身じろぎした。
「不愉快な言い方になってたなら、あやまる。だけど、人間関係が濃くなったときに表面化するのは、ハラスメントや虐待だけじゃないと思う」
「……恋愛感情とか?」
「今までに男を好きになったことはある?」
 あらためて言葉にされると、やはり喉がつかえて言葉がうまく出てこなかった。
 まるで帳簿の記録か何かを調べるように、過去の恋愛を真剣にたぐっている自分に気が付いて響野は自嘲する。
「わからない……覚えてる限りでは……ない気がする」
 帳簿の中身を元に結論を出すと、嘘をついたわけでもないのに胸が痛んだ。
 水元がこの話題をどこへ導こうとしているかは明らかだった。だが、それが喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのかがわからない。
 それなら、と相手は言った。
「きっと一時的なものだと思うよ」
 いつもと同じあっさりした口調だった。こちらが「そうか」とうなずけば、そのまま何でもない話題のひとつとして流れていってしまいそうな。


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