冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
 端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
 鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
 第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
 彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。

 軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
 そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
 王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
 仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。

 仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
 瑞々しい、均整の取れた体。
 絹のような栗色の髪に、白い肌。
 美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
 第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。

 そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
 不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
 その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
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